グレッチェ事件
肩に酒井さんと黒兵衛を乗せ、ブラブラと辺りを散策しつつ、エリウちゃんのいる本陣へと向かう僕ちゃん。
いやぁ~、今日も良い天気だ。
森が燃えた影響で少し焦げ臭いし、彼方此方燻っているけど……うん、良い天気だ。
「ってか魔王」
「あ?何だ黒兵衛?どうした?」
「や、どうしたもこうしたも……どないすんねん、こいつ等」
「ん~…」
後ろを振り返ると、そこには様々な種類の動物の群れ。
可愛い動物から肉食系魔獣の類までもが、列を成して俺の後ろを付いて来る。
その数、およそ一個連隊だ。
下手すりゃ魔王軍より強いかも知れん。
「まるでブレーメンの音楽隊やないけ」
「そうは言ってもなぁ……これもまた、不可抗力って奴だよぅ」
そうなのだ。
奴等、エルフや何とか評議国の兵士が素直に投降しないから、森の彼方此方に火を点けていたら、行き場を失った動物達が俺の元へと集まって来てしまったのだ。
これにはさすがの俺も少々ビックリだ。
ま、元から動物には好かれるしな。
「ともかく、戦とは言え彼らの住処を焼いちまったしなぁ。何処かに居場所を確保してやらんと……」
「せやけどなぁ…」
「文句は言わないの、黒ちゃん」
と酒井さん。
「可哀相じゃないの。動物に罪は無いわ。それに可愛いし」
ちなみに酒井さんのお気に入りは、この世界ではモゥボルと呼ばれるちょっと大きなウサギだ。
人間界で言えば、どこかアンゴラウサギに似ている。
昨日も酒井さん、そいつの背中に乗って散歩とかしてたし。
「や、分かってるで姉ちゃん?せやけど、ワテに思いっきり敵意剥き出しの大きなネズミまでおるんやで?むっちゃ喧嘩売って来てるやんけ」
「我慢しなさい」
そう言って酒井さんは俺の耳朶を軽く引っ張ると、
「それで、エリウには何て言ったの?」
「特になーんにも。好きにしなさいって感じです」
今日はこれから、本陣でエルフの国、ブリューネス王国から降伏の使者を迎えるのだ。
森を焼きつつ、逃げ惑う何とか評議国の兵士を討ってたりしたら、何時の間にやらエルフの国の首都に迫っていたのだ。
そして、『どうしようかなぁ……面倒だから滅ぼすか』何てことを適当に考えている内に、何やらウチの参謀どもが勝手に降伏勧告を行っていたのだ。
いやぁ~……まぁねぇ、確かにエリウちゃんに丸投げはしたけどさぁ……
降伏勧告をしたけどシング様どうしましょう、って言われても、そんなの事後承諾しかないじゃん。
正規の外交手順を踏んで、降伏勧告をしたんだろ?
今更、やっぱダメだとかは言えないじゃんかよぅ。
亡国の魔王とて、その辺のルールは守りますよ。
「ま、一応……降伏の使者の様子を見て決める、って事は言ってありますよ。何しろ相手は僕チンの不倶戴天の敵の一つである糞エルフですからね。どこまで本気で降伏する気があるのやら……」
「まだ自分の世界の事を引き摺ってるの?」
「引き摺りまくりです。少し思い出したら次々と嫌な記憶が蘇って来て……あの糞エルフ姫、性格が悪いからいつもボッチだったですよ?んで、可哀相と思って話し掛けたら、『おーほっほっほ、シングさん。あなた如きが私とお喋りできる事を光栄に思いなさい』って来たもんだ。あ゛ぁぁぁッ!!な、舐めてんのか糞がぁぁぁ!!」
「落ち着きなさいシング。動物達が怯えているわよ」
「ふぅふぅ……こりゃ失礼」
俺は大きく深呼吸を繰り返し、足許でビックリした顔しているモゥボルを抱き上げる。
うむ、フカフカで可愛い。
気分が癒される。
「驚かしてゴメンな、ウサ三郎」
「変な名前は付けないの。それにその子は女の子よ」
「ありゃ?そうなんで」
俺はウサ三郎改めウサ子を離してやる。
「兎にも角にも、最近は糞エルフ姫以外にも、僕ちゃんを虐げてきた他の国の女の事まで連鎖的に思い出して来ちゃって、少しストレスが溜まってるんですよぅ」
お陰で僕チン、現実の女恐怖症(二次元は別と言う奇病)が少しぶり返して来たし。
あ、もちろんエリウちゃんや摩耶さんは別だけどね。
「ま、アンタの辛い過去は散々聞いてるから知ってるけど、この世界にそれを持ち込んじゃダメよ」
「分かって満貫、積もって跳満で御座います」
「……アンタって本当に異界の魔王なの?」
「そりゃどう言う意味で?」
「まぁ良いわ。それより、私達はどうするの?また姿を見えなくする?」
「いえ、今日は普通にエリウちゃんの近くにいます。ってか、そうしてくれってエリウちゃんにお願いされまちた」
「あら、そうなの?」
「です。どうもねぇ……エリウちゃん、初めてなんですよ。他国の使者に会うのって」
今日は外交デビューなのだ。
「あぁ……それじゃ仕方ないわね」
「魔王後見人としては、やっぱ傍に付いていないとねぇ。ま、一応はエリウちゃんが仕切るんですけど……さっきも言いましたが、相手の出方次第です。エルフの王が地べたに額を擦り付けて、何でもしますから許して下ちぃ、って言ったら、降伏を認めます。そして思いっきり扱き使ってやります」
ちなみに少しでも舐めた態度を取ったら、ブリューネス王国とやらは地図から消えるけどね。
「またアンタは……でも魔王に降伏するのなら、それも仕方のない事かもね」
「そう言う事です。高慢ちきなエルフが、国を守る為にプライドを捨てるのか……ちょっと見物ですね」
★
本営として使っている巨大なテントの中、簡素な巨大椅子に腰掛けている全身鎧に兜を装備のエリウちゃん。
その直ぐ後ろに、俺は彼女の背中に隠れるように佇んでいた。
もちろん何時ものように、両の肩には酒井さんと黒兵衛だ。
部屋の脇には、四貴魔将と近衛の兵達が控えている。
さぁ~て、どんな様子で降伏するのかねぇ……
何しろ相手は森妖精族だ。
具現化した驕慢だ。
超上から目線で、降伏してやるから感謝しろ、とか言い出しかねん。
ま、本当に言ったら褒めてやる。
もちろん殺すけど。
ただ、この世界のエルフってのは、殆ど会った事がないからなぁ……
ってか、勇者パーティーにいた弓使いぐらいだ。
正直、俺の世界のエルフとどれぐらい性格的に違うのか分からん。
実は正反対って可能性もあるし。
ま、降伏するのなら、態度と行動で示してもらわんと……ってか、エリウちゃん、滅茶苦茶に緊張しているにゃあ。
いつもの鎧姿からでも、その緊張が伝わってくる。
降伏を受け入れる側なのだから、もっと大きく、偉そうに構えていれば良いのに。
どうもエリウちゃんは、尊大な態度を取ったりする事に慣れていないようだ。
会議でも、慌てたりオロオロしたりする時もあるし……実に困った魔王ちゃんだ。
ま、そこが面白いし可愛いから良いんだけど。
む?来たようだな。
近衛が何か告げると同時に、陣幕を捲って入って来たのは三人のエルフだ。
中央に、長い髪をした女エルフ。
皮の軽鎧に頭には銀の小さなティアラ。
そして腰のベルトには、何やら羽箒のような物が差し込んである。
ファッションアイテムだろうか。
その背後に、護衛の者らしき二人の男エルフ。
もちろん、武装はしていない。
お、おいおい……まさかコイツが降伏の使者じゃないだろうな?
何で王が来ない?
情報だと、ブリューネス王国の王は齢五百歳を数える威風堂々たる爺ィエルフだと聞いたぞ。
それが何で小娘を寄越す?
一応は王族のようだけど……
……
もしかして、超舐められている?
魔王軍に使者を送るのなら、この程度の身分でもまぁ良いか、みたいな?
「く、糞がぁぁぁ」
思わず呟くと、軽く耳朶を引っ張られ、
「落ち着きなさい」
酒井さんの囁き声。
「先ずは口上を聞いてからにしましょう」
わ、分かってます。
分かってますけど……うわ、物凄く不遜な態度ですよ。
小娘エルフは、一応は作法に乗っ取った礼をするが、その態度はあからさまに不承不承と言った感じだ。
顔なんか不機嫌さを隠そうともしていない。
ダイナマイトグレイトな仏頂面だ。
四貴魔将の面々ですら、余りの無礼な態度に顔を顰めている。
ちなみにエリウちゃんは、いつものフルフェイス兜などで表情は分からんけど……
うん、何も気付いてないよ。
まだ緊張しているよ。
……
本当に困った娘だね。
このままだと、今夜も酒井さんに説教されますぞ。
俺は嫌々、と言うか物凄く嫌と言う態度と雰囲気で片膝を着いている女エルフを見下ろしながら、拳をギュッと握り締める。
ストレスはいきなりマックスだ。
肩に乗っている酒井さんも
「面従腹背って知っているのかしら?せめて表面だけでも従う振りは見せないとねぇ」
そう呆れた口調で呟いていた。
ですよね。
むっちゃ不満です、って顔に出てるもん。
これだからエルフって奴は……
その女エルフは頭を下げながら、物凄く淡々とした感情の篭っていない声で、
「ブリューネス王国、第三王女、リークエラ・ネイ・ブリューネスです。我等ブリューネス王国は降伏を受け入れ、魔王軍の傘下に入り、以降、魔王エリウ様の下知に従います。但し、我等ブリューネス王国の自治は認めていただきたい。以上です」
そ、そんな口上があるかぁぁぁッ!!
そう叫びたい気持ちをグッと抑える、我慢の子の僕チン。
そもそも降伏を申し入れて来たのに、条件を付けてくるとは……な、何様のつもりじゃいッ!!
「ぐ…ぐぐ……」
怒りで頭が少しクラクラして来たよ。
も、もう我慢の限界です。
酒井さん、どうか御許可を!!
「さすがにこれは……ダメね」
おっけー、ボス……
俺は何故かコクコクと頷いているエリウちゃんの兜を軽く小突き、そのまま前へ進みながら、
「……舐めるなよ小娘」
いつものバスの効いたヴォイスで、そう一言。
そして件の女エルフを睨みつけ、
「それより、王はどうした?何故に王が自ら来ない?」
「……国王陛下は病気です」
確かリークエラとか言う名前の小生意気な女エルフは、俺を睨み返しながらぶっきらぼうに言った。
う、うぉう……
物凄く気が強そうだ。
俺の一番苦手なタイプだ。
昔を色々と思い出してしまう。
「病気か……ふ、まぁ良い。お前、ブリューネス王国の自治は認めろとかヌカしたな?ならば先ずは実績を示せ。そうだな……良し、今すぐエルフの軍をスートホムス大山脈へ向かわせろ。そしてそこに巣食う部族集団を幾つか狩って来い。取り敢えず三部族程度で良いか。そいつらの首を持って来たら、特別に自治を認めてやろう。期限は一ヶ月だ。もちろん、一日でも過ぎれば王国は解体だ。お前等の内、役に立つ者はお情けで雑兵にしてやる。それ以外は全て処分だ」
「……」
「どうした?返事をせぬか、小娘」
そう言って俺が甚振るような視線を投げ付けていると、女エルフは片膝を着いた姿勢から、いきなりロケットダッシュを敢行。
腰に差していた謎の羽箒を抜き放ち、
「魔王エリウ、覚悟ーーーッ!!」
ぬぉいッ!?
何してんのコイツ!!
咄嗟に俺は縮地スキルを使い、エリウちゃんと女エルフの間に割って入った。
刹那、エルフの持つ羽箒が振り下ろされ、俺の首元から胸元へと撫でる様に滑って行く。
「ぐ…」
羽箒が通り過ぎた箇所に、熱が走る。
そこから微かな衝撃が全身に広がって行った。
な、なにぃぃぃッ!?
ダメージ判定だと!!
防御スキルを突破されたのか!?
こ、この俺が……
「ぐ、ぐぉぉぉ」
「お、おい魔王、どないしたんや!?」
「シング!!」
酒井さんが宙に素早く印を描き、女エルフの動きを封じた。
護衛のエルフ達は、即座に近衛達に取り押さえられている。
「ぐ、ぐぅぅ……」
「ま、魔王!!」
「シング!!」
「シ、シング様!!」
「ぅぅぅ……うむ、気分スッキリだ!!」
「……は?」
「へ?」
「……シング様?」
「倦怠感も取れて気分も上々。それどころか力も漲って来る……あまつさえ、調子の悪かったお腹も治ってるぞ」
血潮も滾ってワォーンと吼えたいぐらいだ。
……
どーなってんの?
「お、おい魔王……何がどないなっとるねん?」
黒兵衛が俺の頬をペチペチと叩いて来る。
や、それは俺が聞きたい。
「それに腹具合が悪かったって……自分、まさかあのヘバの実っちゅうのを喰ったんやないやろな?えらい興味津々やったし」
「ヘ、ヘバの実ですか!!」
エリウちゃんが大きな声を上げた。
「シ、シング様。あれは猛毒だと何度も申し上げましたのに……」
うん、言ってたね。
凄く美味しいけど三粒食べたら確実に死ぬ木の実だって。
で、実を食べてその場で死んだ動物の死体から養分を得る、恐ろしい植物って話だったよね。
ちゃんと憶えていますぞ。
……
でも食べたけど。
「む……スマン。試しに一粒食べたら癖になって……ついついな。ま、我には毒物に対する耐性があるから、それほど気にする事でもないぞ」
「で、ですが、お腹の具合が悪いと……」
「大丈夫よ、エリウ」
酒井さんが俺の頬をギュッと摘みながら言った。
「毒に中ったってワケじゃないわ。単に食べ過ぎただけ。ただの消化不良よ」
「ふ、そう言うことだ」
と言うか、酒井さんも美味しい美味しいって言って、たくさん食べてたじゃないか。
ま、酒井さんは完全毒無効化体質だから別にエエけど……
「それより魔王。自分、ホンマに大丈夫なんか?一体何がどないなっとるねん?」
黒兵衛がまた俺の頬を突っ突いて来た。
「ふむ…」
俺はその場で酒井さんの術によって体の動きを封じられている女エルフを冷ややかに見つめた。
怒りと焦り、焦燥と恐怖、それに驚愕と、様々な表情が入り混じった顔で、女は俺を睨んでいる。
さてと、随分と面白い事をしてくれたのぅ……
俺は女エルフに掴み掛かろうとしているエリウちゃんを手で制しながら、その女の持っている謎の羽箒を奪った。
ふむ、何じゃろうこれは?
何かのマジックアイテムだと思うが……さて、どうしようか。
アイテム鑑定スキルは持ってないけど、鑑定系の魔法はあるので試しても良いが、レベルが低くて精度的にちょっとなぁ……
「ウォー・フォイ」
「は。何でしょうかシング様」
四貴魔将のタツノオトシゴ的魔族が俺の傍へとやって来る。
こう言う場合は、先ずは最年長者に聞いてみるのが定石だ。
「このアイテムに関する情報はあるか?」
ま、無ければ魔法を使ってみれば良いだけの話だし、この女エルフに直接聞いてみても良いか……拷問付きで。
「ふ~む……実物を見るのは初めてですが、おそらくブリューネス王家に伝わる、『審判の剣』と呼ばれる秘宝の一つではないでしょうか?」
「審判の剣か…」
俺はチラリリと女エルフを見やる。
ふん、微かに目が泳いでやがる……図星か。
ってか、剣じゃなくてただの羽根なんだけど……
「して、効果は?」
「確か……少々うろ憶えですが、何日かに一度、かなりの魔力を消費して審判を振るう事が出来ると……そう聞き及んでおります」
「審判?」
「は。この剣で切りつけた相手が悪しき者であれば大ダメージか、もしくは即死の効果を与えると。逆に善である者には回復か、はたまた蘇生魔法まで……と言う話で御座います」
「ほほぅ…」
カルマ値によるダメージ効果の変化か。
面白いし、珍しいな。
うむ、実に良いアイテムをゲットしたぜよ。
芹沢博士が見つかったら、これを基に新武器を開発してもらおう。
いやぁ~…これはちょっと得したなぁ。
「酒井さん。この女を自由に」
「……そうね」
魔人形様は指をパチンと鳴らす。
と、術で縛られていた女エルフは、自由を取り戻すと同時に、膝から崩れ落ちた。
しかし顔を上げ、その目は俺を睨み付けている。
どこまでも気丈なエルフだ。
「ふふ……不思議そうな顔をして、どうした?この審判の剣とやらで、我にダメージを与えるどころか回復までしてしまった事に驚いているのか?」
ちなみに俺は驚いてないよ。
だって俺、悪い子じゃねぇーし。
……
二十万人ぐらい纏めて殺しちゃった事もあったけど、あれは事故みたいなモンだしね。
「……」
「ふん、やはりエルフはどの世界でも同じだな。その傲慢さ……自分達の善悪の判断基準が、世界標準だとでも思っていたのか?お前等が世の理を支配しているとでも考えたか?」
「……」
女エルフは下唇を噛み締め、俺を睨み付ける。
「ふふふ……まぁ良い。我は今、実に気分が良い」
俺は笑顔のまま女エルフから視線を外すと、
「近衛兵。その者達も解放してやれ」
そしてもう一度、女エルフを見つめる。
「第三王女のリークエラ……だったな。感謝するぞ」
「か、感謝……だと」
「そうだ。お前のお陰で、下らない外交ごっこを終わらせる事が出来た上に、ブリューネス王国を攻め滅ぼす大義名分も得る事が出来た。更に言えば、お前の蛮行でエルフどもを処理するのに何の躊躇いも覚えなければ良心の呵責も無い。オマケに面白いアイテムまで手に入るとは……うむ、実に良い。本当に感謝するぞ」
「ぐ…」
「ふ……帰ってお前達の王に伝えろ。魔王エリウに対する暗殺未遂、及び真なる魔王である我に対する直接攻撃の罪により、グレッチェの大森林のエルフは皆殺しだ」
「な…」
「おぉ、そうだ。凄く良い事を思い付いた。ブリューネス王国の跡地は、自然保護区として動物達の楽園にしよう。うむ、エルフの死体は全て魔獣の餌だ。それが良いな」
肉食系魔獣の餌問題もこれで一気に解決だ。
うむ、僕チン冴えてる。
もしかしてこの羽箒の効果で、頭の回転も早くなったのかな?
「き、貴様……」
「黙れ小娘」
俺は恐怖効果のオーラを発動させた。
「我にとっては、貴様ら性根の腐ったエルフ一人より、動物一匹の方が遥かに大切だ」
だって動物達は俺を蔑んだりしないもんね。
『おーほっほっほ、シングさん。せめて服装だけでもちゃんとした方が宜しいですわよ。他が良くないのですから』
って、俺の素晴らしきコーディネートにイチャモンとか付けて来ないしね。
「近衛兵。この愚かなエルフ達を連れ出せ。あぁ、もちろん危害を加えてはならぬぞ?我等はこやつ等とは違い、未開の野蛮人ではないからな。一応は外交の席だ。最後まで礼節は守らなければな」
そう言って軽く手を振ると、近衛兵がエルフ達の両の腕を掴み、強引に本陣の外まで引き摺り出して行った。
いやはや、本当にまぁ……ビックリだよ。
ま、僕ちゃん的には結果オーライで、かなり得した感じだけどさぁ……
「外交の席で襲い掛かって来るなんて、前代未聞だよ。歴史的大事件だよ」
そう呟くと、酒井さんも頷き、黒兵衛も耳元で
「津田三蔵か、あの姉ちゃんは…」
と小さな声で言った。
や、それは誰だか知らんけど……ま、良いや。一先ずは終わった。
お腹の調子も治ったし、本当に良い事尽くめだ。
「ふむ……ウォー・フォイ」
「は、何でしょうかシング様」
「今回のエルフどもの降伏ついてだが……段取りを決めた参謀はどいつだ?後で連れて来い。我が直接、説教をしてやろう。ま、死なないとは思うが……酒井さんはどうします?」
「私は彼女に少し話があるわ」
そう言って、魔人形様はエリウちゃんを見つめた。
「後で部屋に来ること。良いわね?」
「は、はい…」
エリウちゃんは縮こまってしまった。
何だか鎧まで縮んだように見える。
ま、外交デビューとは言え、色々と仕方がないよねぇ。
エリウちゃん、今回もちょっとやらかしちゃったし……一応、フォローはするけどね。
さてと、取り敢えず問題は明日だな。
どうやってエルフどもを処理するか…
動物君の為にも、出来るだけ森を傷付けずに始末しないと……うん、これまた中々に難しいですぞ。




