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しすぷり地獄変


 「ささ、こっちへ」

芹沢博士に促され、隣室へ移動すると、そこはまた別の研究室だった。

床には太いケーブルが何本も這っており、壁一面に様々な機器が並んでいる。

俺の住んでいた世界では全く見られない、実に科学な部屋だった。

そしてその部屋の中央に置かれている銀色に鈍く光る大きな金属製の机。

そこにシーツらしき布が被せられた何かが横たわっている。

おそらく、あれが件のメイドロボと呼ばれる物なのだろう。


「ふふ……これぞ本邦初公開の我が自信作。SRMH試作二号機、コードネーム『カーネリアン』だ」

芹沢博士はシーツを剥ぎ取ると、そこに横たわっていたのは、確かレオタードと呼ばれる面積の少ない布の服を着た、見目麗しい女の子……いや、女の子と言うより女性であった。

薄赤色の長い髪に、鼻筋の通った整った顔立ち。

ボディもデンと出ている所は出ているし、腰のラインもキュッと締まっている。

淫魔族を思わせる中々に魅惑的なボディだ。


「ほぅ……これはまた……ほほぅ」

顎に手を当て、僕ちゃんはジッと観察。

これは中々に良い仕事をしておる。

男の妄想を具現化したような感じの美女だ。

さすが博士である。

「しかし博士。なんちゅうか……造詣的には凄く良いんですが、性能は?具体的に言うと、その……何て言うのか、女性としての能力と言うか……どこまでリアルなんです?」


「ふふ……シング君も年頃の男の子だねぇ。もちろん、その辺に抜かりは無いよ。何しろ私は『大人』だからねぇ。大人として、細部にまで拘っているよ。私はマネキンを作りたいのではなく、あくまでも新しき生命体を作り出したいのだからね」


「す、すげぇ……大人ってスゲェなぁ」


と、黒兵衛が情けない溜息を吐きながら、

「や、どうでもエエけど……傍から見たら、自分等ちょっとアレやで?今の会話、酒井の姉ちゃんや摩耶姉ちゃんに聞かれてみぃ。間違いなく、毛虫を見るような目で見られるで」

そう言うと、軽やかにテーブルの上に飛び乗り、ちょっと複雑そうな顔でカーネリアンを見つめた。


「芹沢のおっちゃん。ホンマにエエんか?ぶっちゃけ、魂の創造は禁忌タブーの研究やで。酒井の姉ちゃんはまだしも、聖騎士の連中とかに知られてみぃ。間違いなくこの世から消されるで?」

「ふふん、あの狂信者どもは未だに頭の中が中世で止まっているからな。科学を悪魔の業と考えている愚か者だ。そんな者達に、この魔法科学の第一人者である私が殺られる筈がない。それにいざとなったら逃げ出すからね」


「さすが博士ですね」


「あんなぁ……って、魔王もいつまでも胸ばかり見てんなや」


「や、なんちゅうか……久し振りに女性ってのを間近で見たような気がして……ほら、摩耶さんって何て言うか、慎ましいじゃないか。酒井さんに到っては論外って感じだし。だからね、僕チンもそれなりに年頃だし……興味と興奮を抑えられないんですよぅ」


「抑えろや、この馬鹿が。しかも今のはかなりの問題発言やで」

黒兵衛は困った顔で、自分の前足を軽く舐め始めた。

「で、芹沢のおっちゃんや。具体的には何をどうすればエエんや?」

「ここに…」

博士は設置してある機器の一つを弄ると、そこから30センチほどの大きさの、頑丈そうな銀色のボンベが飛び出した。

そしてそれを指差しながら、

「ほら、ここの小さな硝子窓の部分から中が見えるだろ?」


「ん~……どりどり。何やらキラキラとした物がたくさん飛び回ってますねぇ」


「これが魂の欠片だ」


「ほほぅ……」


「ま、正確には結晶化された生命エネルギー体の集まりだ。これをシング君の魔力で結合し、私の開発した特殊な術式魔法と小型核融合炉を用いた電磁圧縮技術で合成して純粋な魂として誕生させる。おおぅ……人類は今、生命創造と言う新たなフロンティアへの第一歩を踏み出したのだ」

「酔ってんなぁ……自分」

黒兵衛は嘆息すると、

「んで、ワテは何でここにおるんや?共犯にされるやないけ」

「機器の操作に色々とね。文字通り、猫の手も借りたいのさ」

「芹沢のおっちゃんは研究所の所長やろうが。助手だって何人もおるやないけ」

「表の助手はね。裏の研究に関しては、いないよ。分かるだろ?科学と魔法は相反する物だし」

「まぁ……せやな」


「んで、博士。僕チンはどうすれば……」


「そうだね。そろそろ取り掛かろうか。先ずはこの魂の欠片をセットして……シング君はそっちの機械の方へ。鉄の棒が出ているだろう?それを握って、合図したら魔力を注入してくれ」


「魔力の注入ってのが良く分からんのですが……手の平に集中すれば良いのかな?黒兵衛、どうすれば良いと思う?」


「この間練習したやろ。魔力のオーラを作り出すってヤツ。あの要領でエエんやないか?」


「なるほど。了解した」


「いきなりフルパワーじゃなく、出来れば徐々に魔力を上げてくれ給え」

芹沢博士は何やら機器を操作したり端末のコンソールを弄ったりしている。

「今の所は不具合は無し。安定しているな。黒兵衛君はそっちの機器を見ていてくれ給え」

「こっちの計器が並んでるヤツか?」

「そうだ。その計器の針……今はグリーンのラインで止まっているだろ?それがもしレッドラインの中頃まで来たら、そこの赤いボタンを押してくれ。緊急停止装置だ」

「あ~……これな。了解や」

「では、そろそろ始まるとしようか」

博士はそう言うと、端末のキーを軽やかに叩き、次いで様々な機器のスイッチを押し始める。

「うむ、順調だ。シング君、そろそろ魔力の方を頼む」


「うぃ」

俺は金属の棒を握り締め、意識を集中。

体内魔力をゆっくりと掌に集め出す。

中々に加減が難しい。

少しでも気を緩めると魔力が霧散してしまうし、集中し過ぎると暴走してこの機械を破壊してしまいそうだ。

「ど、どうですか博士?」


「うん、良いよ。順調だ。黒兵衛君、そっちは?」

「ゆっくりと針が動いているで。もうすぐ黄色のラインやけど、大丈夫なんか?」

「想定通りだ。シング君、もう少し魔力の出力を」


「うぃっす」


「良いぞ……良いぞ良いぞぅ……では、魂の欠片に魔力を注入するぞ。ポチッとなと」

瞬間、部屋全体が閃光に包まれ、地震のような軽い振動が起こった。


「は、博士……大丈夫なんスか?何か、彼方此方から放電してるんですけど……」


「大丈夫。想定通りだ」


「そ、そうですか?」

気のせいか、機械の一部がガタガタと揺れてるし、煙も少し出ているぞ。


「黒兵衛君、そっちはどうだい?」

「赤いラインまで針が動いたで」

「良し。では魔力で増幅された生命エネルギーをカーネリアンに入れ……シング君、その棒はもう握らなくて良いよ。そこの機械の数値は見てくれ。今幾つだい?」


「え、えと……これですね?え~35……36、37……って所で御座る」


「宜しい。では少し注入速度を上げて……90を超えたら教えてくれ」


「了解」

俺は機器の数値を見つめる。

液晶パネルに表示される数字が、先程より若干早く上がって行く。

恐らくこの数値は、カーネリアンに注がれている魂の素となるエネルギー体の容量を示す数値なのだろう。


「ふふふ……良いぞ……順調だ。私はかの有名なフランケンシュタイン博士を超えるのだ。フガー」


「ふにゃ?フランケンって怪物の名前じゃなかったっけ?」


「それは違うぞ、シング君。博士の名前がフランケンで、造られた怪物の名は人造人間だ。何故か怪物の名前がフランケンシュタインだと広まってしまったが……何故なんだろうねぇ?」


「へぇ……って、博士。そろそろ90です……って、超えました」


「OK。では速度を絞って……こんな所か。黒兵衛君、計器の方は?」

「黄色と赤の境界で止まってるで」

「完璧だ…」


「成功したんですか、博士?」


「いや、ここからが本番だ。カーネリアンには、シング君の魔力を帯びた魂の欠片が純粋な生命エネルギーとして入っているだけだ。これを練成し、私の術式魔法により一つの魂として誕生させるのだ」


「おおぅ…」


「では行くぞ」

博士が端末のキーを押すと、天井からゆっくりと、巨大な三叉槍のような物体が降りて来た。

刃先をカーネリアンに向けたそれは、彼女の豊かな胸元から一メートルぐらいの距離で止まった。

次にいきなり床が発光し始め、何重もの魔法陣が浮かび上がる。


「す、すげぇ。何か幻影みたいだ。……確かこの世界だと、ホログラム、とか言うんでしたっけ?」


「その通り。私が開発した生命創造の術式魔法陣を投影している」

芹沢博士は鼻息も荒く、胸を反らした。

「では、行くぞ。魂創造術式魔法展開」

ホログラム魔法陣が眩い光を放ちながらゆっくりと回転し始める。


お?おおぅ?何やら異質な魔力の流れを感知したぞ。

しかもかなり強力だ。


「電磁投射装置作動。出力50%」

天井から伸びた三叉の針から、バチバチと音を立てて小さな雷がカーネリアンのボディに幾度も落ちる。

「良いぞ……カーネリアン起動シーケンス作動。電磁投射出力最大。術式魔法、自動詠唱開始」

と天井付近のスピーカーから、芹沢博士の声色で何やら複雑な呪文が流れ始めた。

なんちゅうか、ちょっとシュールだ。

「ふふ……完璧だ。私の計算に間違いは無い!!」

刹那、機器の彼方此方から火花が散り始めた。

俺の見ている機械も、ガタガタと小刻みに揺れ始める。

かなりヤバイ感じだ。


「せ、芹沢のおっちゃん!!」

黒兵衛が叫んだ。

「針が振り切りそうやで!!非常ランプも付いとるし、と、停めるで!!」

「そのまま!!そのままだ黒兵衛君!!もう少しなのだーーーッ!!」

博士が叫ぶと同時に、様々な機器がいきなり爆発した。

「フギャン!?」


「黒兵衛!?」

爆発に巻き込まれて吹き飛ぶ黒兵衛をナイスキャッチし、床を転がる。

室内は白煙と黒煙が入り混じって充満し、警報装置がけたたましく鳴り響いた。

「だ、大丈夫か黒兵衛!?傷は浅いぞ!!……煙で見えんけど」


「大丈夫や。ちょっと衝撃で飛んだだけや。博士はどないなった?死んだか?」


「いや……」

煙の中に目を凝らすと、博士は警報装置を停め、排煙装置などを動かしている最中であった。

これは失敗かな……

そう思った矢先、動体スキルに何かが反応した。

同時に、博士の「おおぅ」と歓喜の声が響く。


「マジか……」

黒兵衛が呟いた。

見ると金属製の机の上のカーネリアンが、ゆっくりと半身を起こし始めたのだ。


「す、すげぇ……本当に成功しちったよ」


「ふ…ふは……ふははははは!!素晴らしい……素晴らしいぞ!!」

博士は喜びの余り、奇妙なダンスをしながらその辺を飛び回る。

「さぁカーネリアン。起きるのだ。私がパパであり、造物主なのだ」


「_……お、お父様」


うほ!?ホンマに喋った。

感情は薄いけど、確かに綺麗な声で喋ってる。

もちろん、機械が喋っているワケではない。

何故なら俺の生命体探知スキルがちゃんと反応しているからだ。


「か、身体は機械だけど、ちゃんとした生命体だぞ。いや、本当にすげぇ」


「いやいや、マジか。芹沢のおっちゃん、ホンマにやりおったでぇ」

「おおぅ……カーネリアン。我が夢にして我が娘よ」

芹沢博士は歓喜の声を上げ、カーネリアンに手を差し伸べる。


「_お父様……」

カーネリアンがニコッと……いや、ニヤリと笑った。

「_私を誕生させてくれてありがとう。そしてさようなら。貴方はもう用無しよ」

言うや素早く伸びた手が博士の喉首を鷲掴んだ。


「う…が……す……素晴らしい」

博士は苦しそうな声を上げる。

しかしながらその顔は超笑顔だ。

首を絞められ、急性酸素欠乏症にでも陥ったのだろうか?

「な、何と言う反応速度だ……さすが私だ」


「ふ…」

カーネリアンは無造作に、掴んでいる博士を放り投げた。


「うほ!?」

俺は素早く横へ飛び、博士を抱えるようにダイレクトキャッチ。

黒兵衛に続いてこれでツーアウトだ。


「あ、アカンでぇ。成功やけど大失敗や」

尻尾を大きく膨らませながら黒兵衛が唸り声を上げるが、俺が抱き抱えている博士は、駄々っ子のように首を振りながら、

「いやいやいや、大成功だよ黒兵衛君。機械の身体もちゃんと動かせているし、何より感情豊かではないか」

「あ、あんなぁ……いきなり殺しに掛かって来てるんやで?」

「殺意もまた強い感情の一つだよ」

「お、おいおい……」

「大丈夫。今からきちんと躾ければ……」


うぅ~ん……どうなんじゃろう?

誕生して早々に生みの親を殺そうとするなんて、生まれつきのサイコパスの証じゃないか?

ぶっちゃけ、超ヤバいですぞ。


そのカーネリアンは、

「ふ~ん……ふむ……ふん。なるほど」

何やら呟きながら、動作確認なのか、自分の腕や指などをワキワキと動かしていた。

そして不意に俺と目を合わせると、薄い笑みを湛えながら、

「これはこれは、お兄様」


「お、お兄様?」

背中に電流のような物が走った。


「そ、そうか」

博士がポンと手を叩いた。

「カーネリアンの魂にはシング君の魔力が入っている。言わば彼女と君は血を分けた兄妹……って所かな?」


「ふふ……そう言うわけですわ、お兄様」


「ぐ……お兄様……か」


「ど、どないしたんや魔王?」


「いや、なんちゅうか……兄というフレーズに心がグッと来た。僕チン、隠れ妹属性があったのかなと」

新たな発見である。

今度、妹系のゲームにも挑戦してみよう。


「……この状況で何をヌカしとんのや、お前は」

そう黒兵衛が呆れた声を上げていると、おもむろにカーネリアンはグッと拳を握り締め、

「わ……わぉーーーーーん!!」

いきなり吼えた。

畜生のような遠吠えをした。


「なな、なんだいきなり?博士、一体これは……」


「犬……いや、狼かな?」


「は?狼?」


「や、何て言うのか……人間の魂って弱いじゃないか。だからその……色々な動物の魂の欠片も、ほんの少しだけ混ぜてみたんだが……拙かったかな?」

「あ、アホか。それやと人間やなくて只の合成獣キメラやないけ」


俺も黒兵衛の意見に賛同だ。


「わわ……わ、我が名は私はカーネリアン。宇宙の帝王、カーネリアン!!」


「す、凄いワードが飛び出しましたよ博士」

しかも身体が小刻みに震えている。

ちょっと怖いです、ボク。


「ぐしゅるぐしゅる……ナォーーーン!!」


「今度は猫科動物になったよ」


「お、おいおい……ホンマにアカンで。どんどん調子がおかしくなって来てるやないか」

「く……残念だが、カーネリアンはここまでか。しかし研究は成功した。次はちゃんと人間の魂だけを集めて成功させよう」

博士は口をへの字に、白衣のポケットからおもむろにテレビのリモコンのような装置を取り出した。


「博士、それは……」


「緊急停止装置だ。ボディと魂を強制的に分離させる装置だ。私だって、危機管理の何たるかは知っているつもりだ」


「おおぅ、さすが博士」


「すまんな、カーネリアン。誕生早々で悪いが、成仏してくれ」

その刹那、カーネリアンの目から赤い閃光が放たれ、博士の手にしたリモコン装置に直撃。

小型機器はいきなり爆発四散した。

「あ、あれ?」


「うぉい!?アイツいきなり目からレーザー出しおったで!!」

「さすが私だ」

「何を言うとんのや?……ってか何で武装してんねん!!それに魔王!!逃げ出そうとすんなや!!」


「や、だって……もう手遅れだし、これ以上関わると超怒られるような気がして……」


「シ、シング君。事、ここに到っては……君の手で、アレを葬ってくれ給え」


「え?まさか……僕がこの手で妹を?そんな……」


「すまん。だが人類を救うにはこれしか方法が無いのだよ」


「い、いや……まだ何か……何か方法がある筈です」


「おいおい、三文芝居で遊どるなや。何でこの状況でそない余裕が……とっととやれや」

「黒兵衛君は意外に真面目だねぇ。ま、仕方ない。シング君、頼むよ。臨時ボーナスも出すよ」


「へーい、了解」

俺は指を鳴らしながらカーネリアンに向き直る。

さてと、博士の造った機械の身体の性能がどれぐらいかは未知だけど……ま、何とかなるでしょ。

「んじゃ、まぁ……戦闘スキル開放」


「……ふ」

カーネリアンが微笑む。

と同時に、物凄い勢いで突っ込んで来るや、いきなり俺のボディへ強パンチ。


「ふふん」

もちろん、ノーダメージだ。

打撃攻撃に対するスキルで完全防御なのだ。


「……さすがお兄様」


「あ、兄って言うな。心が揺れるぜ」


「ですが……これでは?」

と、カーネリアンは再度同じようなパンチを繰り出してきた。


「へ!?」

俺は腹を打ち抜かれ、天井まで吹っ飛んでそのまま床に落ちる。

ダメージ量はかなりの物だ。

物凄く痛い。

泣きそうだ。

いや、既に涙と洟が溢れている。

「う、うそーん。な、何で直撃を……防御スキルが反応すらしなかったぞ」


「だ、大丈夫か魔王!!」

「く、しまった。カーネリアンはシング君の魔力を帯びているんだった」

「ど、どういうこっちゃ?」

「分からんかね?カーネリアンは身体こそ機械だが、魂の質……そこに流れる魔力はシング君と全くの同一。言わば彼女はシング君の分身体だ。だからシング君がいくらスキルや魔法で防御しようとも、それはカーネリアンには意味を成さない。何故ならカーネリアンの攻撃は、自分で自分を叩くのと同じなのだからね。外部の攻撃は防げても、自分の手で自分を殴ればダメージを受ける。同一魔力による相殺と言うヤツだ」

「最初の攻撃は防御したで?」

「あれは単に拳で殴っただけなのだろう。そして次は拳に魔力を乗せて攻撃した……ふふ、素晴らしい学習能力だ。知能もかなり高いと見た」

「あ、あんなぁ……感心しとる場合やないやろが」


「く……妹だと思って、少しばかり油断したぜ」

フッと軽く息を吐き出し、呼吸を整える。

ダメージは食らったけど、後には引き摺らない。

単純な打撃ダメージを喰らっただけだ。

「さて……では、お前が兄と呼ぶこの俺様ちゃんの真の力を見せてやろう。スキル開放。魔力全開」

カッと身体が熱くなり、魔力のオーラが迸る。

……

本気を出すと、筋肉痛になるから嫌なんだよなぁ……


「ふ…ふふふ……その力、私も欲しいですわ。そうだ。兄上を殺して魔力を吸収しましょう」

カーネリアンは笑顔で殺害予告をすると、またもやいきなり突っ込んで来た。

だが、遅い。

遅い遅い遅いなり。

既に速度やパワーは学習した。

その拳を受け止め、俺様ちゃんの素晴らしき魔王パンチをボディに……いや、胸の辺りに……


「ロケットパンチ」


「は?」

鈍い発射音と共に、カーネリアンの拳が飛んで来た。

しかも二つ同時に、不規則な動きで。

「ふぎゃんッ!?」

いきなりの奇襲攻撃に、僕ちゃん滅多打ち。

魔王、いきなりピンチの巻で御座る。






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