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夏は繁忙期

いやはや、多忙につき更新が遅れて申し訳ない。

ホンマに忙しいんですよぅ……人手不足で。

 

 黄泉の八雷神の一柱と言うか一匹である黒猛雷とその取り巻き連中(洗脳された人間)を鎧袖一触で屠った僕チン一行は、道中何事もなくロードタニヤの首都であるレダルパへと帰還した。

ちなみに、あのバルジェス爺さんはもう居ない。

いや、別に死んじゃったとかそう言うことではなく……精霊教会が事実上崩壊したのを見届けた爺さんは、何か色々と思う所があったのか『巡礼の旅に出る』と何だか妙にスッキリした顔で言うやパーティーを抜けて何処かへ去って行ってしまったのだ。

その事を酒井さんに話したら

「あらそうなの?まぁ、何となく分かるわ。自分の中で一応の決着がついたんでしょうね。日本人なら出家していたかも」

とか言っていた。

うむ、僕チンにはサッパリ分からん。


さて、そんなこんなで数日間、のんびり且つまったりダラダラと過ごしつつ……何てことはなく、酒井さんに尻を叩かれ泣きながらエリウちゃんやカーチャ嬢の事務仕事等を手伝っていると、続々と各国の王族や代表者の一行がレダルパへと集まって来た。

もちろん、魔王であるエリウちゃんの呼び掛けに応じない国や都市も幾つかある。

ま、そんな国は何れ全ての件が片付き次第、問答無用で滅ぼして行く予定だ。


「さてと…」

俺は過剰装飾万歳な全身鎧に身を包み、素性がバレないように目元から下を美麗な装飾が施された半仮面で覆う。

勇者スティング様爆誕である。

そして屋敷を出て、向かう先は近郊の森。

ここで博士達と落ち合う約束なのだ。

本当は魔王シングとして出迎えても良かったのだが、オーティスがショックとストレスで精神崩壊してしまう可能性もあるので、取り敢えず今回は勇者スティングとして登場するのだ。

もちろん、近い内に正体を明かさすつもりではあるがね。

ちなみにそのオーティスだが、博士によると道中ここまで特に何もなかったようである。

一応、暇を見つけては修行をしていたと言う話だが、こんな事なら何か強敵との戦闘イベントでも仕掛けておけば良かったかなと、ちょっとだけ反省だ。


「さてさて、どうすっかねぇ」

俺はボヤきながら足早に目的地へと向かう。

オーティスは、まだ勇者への復帰を諦めてないとの話だ。

まぁ、そうだろうなとは思っていた。

虚仮の一念とか言うヤツだろう。

しかしだ、これから先の戦いで俺が求めるのは純粋な戦力だ。

強い勇者だ。

残念ながらオーティスでは……囮にも使えないだろう。

間違いなく速攻で死ぬしだろうし、俺だって復活させてる余裕が無いかもしれない。

何しろ相手はこの世界の神々や精霊を放逐し、種レベルでの大量絶滅を引き起こした悪神と言う話だ。

ぶっちゃけ、戦闘力がどのぐらいか見当もつかん。


「……まぁ、考えていてもしゃーねぇーか。全ては成り行き任せにするしかねぇーかなぁ」

そんな事を呟いていると、何時の間にか目的地へと着いていた。

森の中の少し開けた場所だ。


さ~て、博士達はまだかな?

ならば今の内にちょいと準備をと……

腰に下げた皮袋から酒井さん謹製の術札を取り出し、周囲四方にばら撒く。

これで簡易結界は準備OKだ。

効果は魔法と視界の遮断。

あまり第三者に見られたくはないからね。


俺は木陰に座り込み、城から持って来たビスケットを齧りつつヨーグルト風味の飲料で喉を潤す。

うむ、爽やかな陽気だし、何だか少し眠くなって来たよ。

博士達はまだ来ないし、少しだけ寝ようかな?


なんて事をボンヤリ考えていると、微かに聞こえて来る草木を踏みしめる音。

来たか…

ゆっくりと起き上がると同時に、此方へ全力で駆け寄って来る黒い影。

オーティスだ。

元なんちゃって勇者のオーティスは鬼気迫る表情で俺の近くまで走って来ると、

「勇者の力を返せッ!!」

大きな声で吼えた。


「……お、おぅ」

ビックリである。

思わず目が点だ。


なんちゅうか、開口一番から凄いな。

博士なんか目元を抑えて天を仰いじゃってるよ。

本当にまぁ……どんだけ自己中な幸せ回路を脳に積んでるんだ?

まるで性質タチの悪いクレーマーだよ。


俺はコホンと咳き払いを一つし、厳かな声で

「勇者の力を得たければ試練をこなせ」

そう言った。


「し、試練?」


「そうだ。お前は精霊の試練を受け、勇者になったのだろ?だがあれは裏でギルメスとか言う爺ィと精霊教会が手を結び……ま、それは良いか。ともかく、勇者の力が欲しければ私の出す試練を乗り越えろ。なに、別に難しい事ではない。内容は単純だ。私と戦い、ある程度傷を負わせるか……もしくはギャフンと言わせたらお前の勝ちだ。褒美に勇者の力を与えてやろう」


「……」


お、おやまぁ、そんな親の仇を見るような目で睨んじゃって……

「とは言え、普通に戦ってはさすがに差が有り過ぎる。そこでだ、少しハンデを付けてやろう。先ずは……精霊の試練同様、パーティの援護は有りだ。但し、神の御使いは除外だぞ。セリザーワ殿達は君のパーティーではなく協力者だからな。もちろんリッテン氏やディクリス君もだ。後は……そうだな、私は自分の持っている武器を使わない。あぁ、それと攻撃魔法も封印しよう。これぐらいでどうかな?」


「ぼ、僕を舐めるなッ!!」

オーティスがまた吼える。

と、彼の傍に居たシルクは頭を掻きながら冷静な声で、

「……少し厳しいよ」

呟くように言った。

「自分の武器を使わないって言ったけど、相手から奪えばそれを使うんだろ?それに攻撃魔法は使わないけど、それ以外は使うんだろ?」


ほほぅ、見抜きましたか。

「ははは、シルク君は中にどうして……良し、分かった。ならば私は一切の武器を使わない。それと魔法も全てだ」

つまりスキルとアビリティのみの縛りプレイだ。

難易度ミディアムって所だね。

「どうだね、この条件で?」


「それでもまだ厳しいよ」

とシルク。

「せめて両目も閉じてよ」


「ふむ、盲目状態での戦闘か」

いやぁ~……さすがにそれは、かなり高難易度なマゾプレイだなぁ。

ま、スキルの組み立て次第で勝てそうな気もするけど。

「宜しい。ではその条件で――」


「ふざけるなッ!!」


「お、おいオーティス」


「黙ってろよシルクッ!!」

叫びながらオーティスはシルクを押し退け、腰から剣を引き抜いた。

「僕はそんなハンデなんかいらないッ!!自分だけの力で勇者に戻るんだッ!!」


本当に……凄いなコイツ。

「ほぅ、その心意気や良し。……何て言うとでも思ったか?」

俺は大きく溜息を吐く。

「君は現実が理解出来ないのか?それとも、理解したくないだけか?」


「黙れッ!!」

一際大きな声で吼えると、オーティスはいきなり突撃してきた。

一体、何をしたいんだコイツは?


俺はヤレヤレとボヤきながら片手を挙げ、突っ込んで来たオーティスに向かって軽くカウンター気味の張り手を一発。

血気盛んな勇者君は、横っ飛びに地面を転がって行く。


全く、血圧が高いにも程があるだろうが。

三つ子の魂何とやらと言う奴か?

初めて会った時から何ら変わってねぇーよ。


そんな事をボヤきながら横たわるオーティスに視線を移すが、ふと視界の片隅に小さな黒い影。


「…?」

鎧の胸元に何か付いてる……え?何これ?術札?芹沢博士のお手製か?

いやいや、何で付いてるの?

風で飛んで来たとか?

……

まさか今の無謀の突撃の最中にオーティスがくっ付けた?

ってか、何時の間に……普段、鎧なんか着けてないから全く気付かなかったわい。

しかし思い付きですぐに出来る事か?

あのオーティスが?

……

まさか俺の油断を誘った?

この展開をシミュレートしていた?


俺は即座に術札を剥がそうと手を伸ばす。

「むッ!?」

指先が触れると同時に身体が痺れる……電撃?いや、麻痺か?

ふむ、無理に剥がそうとするとダメージを受けると……そう言う仕様か。

ってか、そもそもの効果はなんだ?


「今だみんなッ!!」

オーティスが叫ぶと、後方ユニットであるふわふわ髪のシルルちゃんが杖を振り翳し魔法詠唱。

何やら全員にバフを掛ける。

それと同時に巨漢のクバルトが戦鎚を振り翳しながら突っ込んで来た。


「く…」

スキル、ミランジュ発動。

クバルトの攻撃が自動的に脇に逸れる。


ったく、なんだよ……

僕チン独りで戦うモン、みたいな事を言ってやがったのにね。

いや、まぁ……こっちは最初から複数相手って想定していたから良いんだけど。

「おっと…」

クバルトが更に戦鎚で横殴り。

俺は即座にバックステップで躱すが、何時の間にかシルクが背後に回り込んでいた。


こ、こりゃヤバイ。

瞬時に防御魔法・リフレクシルトを展開。

……

え?発動しない?


俺は咄嗟に両の足を踏ん張り、そのまま今度は前方回転でシルクの攻撃を辛うじて躱す。

あ、あぶねぇあぶねぇ……ってかさすがに少しジリ貧。

一度態勢を立て直したいけど……

「うぉッ!?」

目の前の巨漢、クバルトの左右の陰からエディアちゃんとオーティスが飛び出し、俺を挟むようにして斬りかかって来た。

しかも背後からはシルク。

更にクバルトの背後でシルルちゃんが魔法攻撃の準備。

うむ、何時の間にか囲まれている。

連携良過ぎだ。


俺は軽く舌打ちし、何気に芹沢博士を見やる。

博士はニッコリ笑顔で返してくれた。


……そう言うことか。

オーティスの最初の無謀な突撃も仲間の奇襲攻撃も全て作戦通りと。

なるほどねぇ。

絵を描いたのはさしずめ博士だろう。

しかし、それに従いちゃんと行動するオーティスも中々にどうして……正直、見直した。

格上相手に無謀な攻撃を仕掛ける熱血馬鹿ではなく、ちゃんと頭を使うことも出来るじゃないか。

多分、何度も連携等について訓練をしてきたのだろう。


「成長したって事か……っと」

斬りかかって来たオーティスの剣を辛うじて躱しつつ『縮地』スキルで包囲網を突破。

だがそれを読んでいたのかはたまた偶然か、転移した先のその足元付近でシルルちゃんの攻撃魔法が炸裂し、俺はバランスを崩す。


――あ、マズイ。

そこへエディアちゃんの鋭い一撃が襲い掛かる。

その剣の軌道は俺の首。

このままだと確実に死ぬ。

僕ちゃんちょいとビックリだ。

まさかこうもアッサリ追い詰められるとは。


うぅ~ん、しかし殺す気満々の攻撃、ってワケではないか。

俺の縮地に連動して横っ飛びに剣を振ったらタイミング良く俺の首を刎ねる軌道だったって所かな。

そもそも魔法攻撃で足元を取られたってのが原因だし、エディアちゃんも途中で剣を止めることは出来ないだろう。

何しろ速度と力がかなり乗っている。

所謂、不幸な事故って言う奴だね。


そんな事を常時発動しているパッシブスキル『高速四段思考』で考えていると、彼女の剣が俺の首筋に触れた。

刹那、致死回避スキルが発動。

俺の身体は自動的に最適な回避行動を取る。


まぁ、彼女ぐらいの攻撃なら、このスキルで自動的な防御が出来るってなモンですよ。

……

酒井さんレベルの攻撃だと、発動しても確実に首チョンパされるんだけどね。


上皮を削られながらも攻撃を辛うじて回避した俺は、縮地スキルを三連で使いオーティス達の攻撃範囲から離脱。

そして『面倒臭ぇなぁ』とボヤきながら鎧の止め具を外し、胸鎧を脱ぎ捨てる。

「ふむ、これで魔法封印系の術札の効果は無くなったな」

肌に直接貼られたのならともかく、鎧の上からじゃなぁ……脱いだらそのまま無効化だよね。

ま、ACアーマークラスは下がるけども。

「もっとも、この程度の魔法ならアビリティで殆ど無効化出来るから強引に剥がしても良かったんだけどねぇ……しかし本当に用意周到なことで」

俺は軽く溜息を吐きながら、遠くに居る博士を見やる。

彼はヤレヤレと言った感じで肩を竦めてみせた。


「……こっちがヤレヤレだよ」

俺は苦笑を浮かべつつ、幾つかのスキルを展開。

さぁ、ほんの少しだけど本気を見せてやろうか。

「縮地」

一歩を踏み出すと同時に、俺はシルルちゃんの前に転移。

驚く顔の彼女の腹部に魔力を籠めた当身を喰らわす。

ま、術使いを最初に狙うのは定石だね。


そしてその場に崩れ落ちる彼女を優しく受け止めつつ、防御魔法・リフレクシルト(反射の楯)を展開。

と同時に、背後から襲って来たエディアちゃんの暫撃を軽やかに跳ね返す。

「はは、私の背後を取るには隠密系のスキルかアビリティ、もしくは魔法が必要だぞ」

等とエラソーに言いつつ睡眠魔法『眠り姫の誘い』を発動。

エディアちゃんはその場に崩れ落ちた。


さぁ~て、残りは三匹か。

次はどうすっかなぁ……


巨大な戦鎚を構えたクバルトを先頭に、次いで両手ダガーのシルク。

後方ではオーティスが剣を構えながら何やらブツブツと言っている。


……ん?魔力の高まり……ほぅ、何か魔法で攻撃してくるのかな?

けど、今のオーティスには勇者の力が無い筈だが……ふむ、元からある程度の素質はあったって事か。

「とは言え、高が知れて――ッ!?」

その瞬間、脳内に響く警報。

パッシブスキルの幾つかが反応した。


後方から攻撃ッ!?

魔法反応もッ!!


反射的に回避運動を取るも、

「――ンなッ!?」

足が思うように動かせなかった。

見ると足首辺りに薄っすらと光る半透明な鎖が何本も巻き付いている。


――縛鎖ッ!?移動阻害系の魔法かッ!!?

ってか何時の間に?


もう何が何だかワケが分からんので、魔法で先ずはこの場から一時離脱し状況の再確認だ。

「と言うわけで、遁走のウェイティング・ベル

辺り一面に重厚な鐘の音が響くと同時に、その場にいた全員の動きが僅かの間だが止まる。

「縮地。そして不可視」

短距離転移しつつ一時的に姿を消し、周りの状況を探る。


む、むぅ……

エディアちゃんとシルルちゃんが早くも復活してやがる。

え?なんでだ?

って理由は一つ。

俺の視線はオーティスの後方へ向けられる。

……摩耶さんか。

参ったね、どうも。

摩耶さんが参戦したのなら、これは僕ちゃんもちょっとばかり本気を出さないと瞬殺される恐れがある。

ってか、想定外だ。

ズルくね?

まさかこれも博士の作戦の内?

と、俺はその博士に視線を移すが……あ、ハニワ顔で頭を掻いてるよ。

どうやら博士自身もこの展開を予想していなかったようだ。

そりゃそうだろう。

博士のように事前にオーティスに策やアイテムを授けていたとかならともかく、戦闘に途中参加なんてちょいとばかりルール違反ですぞ。


……まぁ、摩耶さんの事だ。

オーティス達の苦戦を見兼ねて身体が勝手に……って所かな。

その辺は相変わらず脊髄反射で動いてしまうと言うか何と言うか、酒井さんが知ったら確実に説教案件だ。

正座プラス三時間の罵詈雑言コース。

おぉ、怖い怖い。


「ま、それはそれで良いでしょう。一応酒井さんからも摩耶さんの成長具合を見てきてねとか言われてるしね。ただ問題はだ、摩耶さんと戦うのならそれなりに力を出さなきゃならんけど、そうするとオーティス達が一瞬で死に兼ねないし……その辺のバランス調整が少し難しいかなぁ」

そんな事をボヤいていると、不意に摩耶さんが手にした杖を俺に向けて突き出しながら少し大きな声で、

「勇者スティングさん。オーティスさんに勇者の力を還して上げて下さい」

と言った。


……ふむ。まぁ、それは別に良いけど……しかしまだまだ今のオーティスではちょっとなぁ……


「もう一度言います。オーティスさんに勇者の力を」


ぬぅ。そんな真剣マジな顔でそこまで言われると……


「勇者の力を!!」


ぐ、ぐぬぅ。まぁ……ねぇ、オーティスもそれなりに修行は積んでるみたいだし……

面倒だからもう還しちゃおうか。


その時、不意に脳内に小さな警報音が鳴り響いた。

パッシブスキルの一つ、『危険察知』が微かではあるが反応している。


ふにゃ?なんだこの特殊な反応は?

良く分からん。

オーティス達は動いてないし、周囲に魔力の反応も無い。

にも拘らず、何かしらの危険にスキルは反応している。


「……分からんが取り敢えず、ブロードス(スキル/アビリティ向上)。マクロ・クロノン(魔法・スキル効果延長)。ついでにラルジュ(魔法威力強化)とエペクタ(範囲拡大)」

予防策として幾つかのバフ魔法を掛ける。

その瞬間、不意に脳内がスッキリした。


な、なんだ?

俺は今、何を考えていた?

オーティスに力を還す……いやいや、馬鹿を言っちゃあイケナイでごわすよ。

今はまだ、奴の成長具合を確かめている最中だろうに……


「……あ、なるほど。言霊とか呪言とか呼ばれる精神操作系の特殊な術か」

酒井さんに色々と教わった事柄の中に、そんなものがあったな。

魔法攻撃じゃないから魔法耐性は無効化されていたと……しかも僕ちゃんの精神耐性アビリティすら突破するとは……うむ、やはり摩耶さんは侮れん。

ってか、一体どう言う原理の術なんだろう?

魔法と魔術の違いって奴か?

良く分からん。

今度酒井さんにもっと詳しく教わろうか。


「んじゃまぁ……縮地」

バフによって移動距離が伸びたスキルで、俺は摩耶さんの前に瞬間転移。

彼女は慌てて杖を構えるが、遅いなりよ。

俺は一歩踏み出し、取り敢えず気絶させようと摩耶さんの腹部目掛けて魔力の篭った掌底を打つ。

が、俺の攻撃が当たるや否や、彼女の身体は爆散した。

いや、身体が無数の白い花弁となり、辺り一面に舞い落ちた。


お、おおぅ……凄いね。

何だかんだ言っても、さすが酒井さんの愛弟子だけの事はある。

大した術だねぇ。


俺はゆっくりと振り返る。

摩耶さんは遥か後方で、オーティス達に何やら補助魔法を掛けていた。


さて、どうすっかなぁ。

オーティスパーティーは全員が健在で元気モリモリな状態まで復活。

つまり、最初から仕切り直しと言う事だ。


ふ~む、定石から言えば、攻撃はもちろん回復も補助魔法も使える特S級魔法使いの摩耶さんを最初に狙うのが正解だと思うのだが、相手もそれも分かってるわけだし……手加減している状態だと、ちと難しいかな。


「まぁ、何とかなるか」

俺は呟きながら軽く首を回す。

微かに骨が鳴った。

「さて、バフが効いてるから色々と力加減が難しいが…」

言って俺は指パチンと鳴らした。

「幻影虚構宮。……出来れば死ぬなよ、面倒だから」






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