チーターVS残機99
俺は黒兵衛を御供に、ブラブラと鼻歌交じりに駐屯地近隣の森の中を散歩していた。
ま、ぶっちゃけて言うと只のサボりだ。
「しかし、うぅ~ん……分からんな」
「あ?何がや?」
その辺に生えている草を何故か齧っている黒兵衛が顔を上げた。
「いや、参謀部から報告があったんだけどさぁ……ほら、例の帝国からの交渉云々ってやつ」
「せやったな。一回目の外交折衝がどうとか言うてたな。で、それがどないしたんや?」
「いや、交渉自体はエリウちゃんや参謀達が良くやってるから特に問題は無いんだけどさ、そもそも今回の秘密交渉は、ダーヤ・ウシャラクを通して行われたんだろ?」
「せやで。ウシャラクの外交使節団に紛れてここまでやって来たって話や。ま、帝国としては国内の世論もあるし、大っぴらに外交使節を派遣できんからな」
「それが分からん。だって帝国とダーヤ・ウシャラクは一触即発状態なんだぜ?既に国境には軍が展開しているって話だし。なのに良く、ウシャラクの連中が帝国の使者を受け入れたなと」
「……自分、ホンマに王やったんか?いや、お飾りやったな」
黒兵衛は呆れ顔で俺を見上げた。
「お飾り言うな。……そりゃ内政や外交について、なーんも知らんけど……」
「帝国と敵対しているからっちゅうて、まだ開戦はしとらへんし、ウシャラクの中にだって親帝国派の連中も少なからず居る筈や。それらを通じて色々と根回ししたんやろ。帝国に貸しを作る事にもなるしな。それに魔王軍と交渉したいって話をウシャラクが蹴って、後からその事が魔王軍に知られたら少し拙い事になるのでは、とか考えたんやないか?ま、外交には色々な寝技とかあるさかいな」
「は~……なるほどねぇ」
って言うか、よもや猫に外交のイロハを教わるとは……
「ところで魔王。これからどないするんや?」
「ふにゃ?それは個人的なこと?それとも全体のこと?」
個人的には、これから飯食って昼寝して、それからリッカ達に剣やら魔法やらをレクチャーしてやろうと思っているんだが……
「魔王軍全般の事や」
「あぁ、そっちか」
魔王軍は現在、ほぼ全ての地域に於いて進軍を停止し、拠点造りに勤しんでいる。
歴代の魔王は、人類系国家に侵攻しては破壊と略奪に奔走しつつ満足したら引き上げると言った山賊的行為ばかりであったが、現魔王エリウは違う。
侵攻し、占領し、そして統治するのが基本スタンスだ。
故に、支配を円滑に進める為にも各地に拠点が必要なのだ。
既に支配地域も広く、本国の魔王城からはかなり離れているからね。
現在、ここマゴス駐屯地も、魔王軍東部地方の拠点として大規模な基地造りが行われている。
その他にも、西部地域の拠点として旧ブリューネス王国領に、北部地域は都市国家連合への牽制も兼ねて神聖ファイネルキア評議国の旧首都に、そして南部はバイネル火山郡の南方にと、それぞれ城塞を築いている最中だ。
「現状は、ともかく開発コマンドと内政コマンドのみだ。支配している地域が広がったからなぁ……街道も整備して、補給もスムーズに出来るようにしないとアカンし」
「その辺は自分、慎重なんやな」
「敵は劣勢だからな。巨大な敵に立ち向かう一番効率の良い手は、ゲリラ戦などによる補給線と情報網の破壊だ。だからこそ、それ等を警戒して此方も対処しないとね」
「せやな。ちゃんと考えているやないけ」
「人界でストラテジー系のゲームを愉しんだからな。結構、得意なんですぞ」
「戦略のイロハをゲームから学ぶってのも、ちょっとどうかと思うんやが……ま、それもエエか」
「もっとも、敵の反撃は殆ど無いと思うけどね」
現在敵軍に、これと言った動きは無い。
と言うか彼方此方で混乱勃発中だ。
評議国は既に東の海岸線近くまで追い詰められており、幾つかの都市を残すだけの状況。
北の都市国家連合は国境を封鎖し、防衛に徹して動こうとしない。
南部の諸侯連合は既に壊滅し、僅かに残った生き残りは帝国方面へと逃げ出している。
その帝国だが、皇帝が復活し、精力的に活動を行ってはいるが、今のところ表立って魔王軍に対してのアクションは起こしていない。
魔王軍の侵攻が停まっているので、先ずは国内の平定を最優先にしているのだろう。
そして現在、俺達が駐留しているダーヤ・タウルは、既に王都が消失し、国家としては滅亡状態。
各地に残った諸侯が反魔王を唱えているが纏め役がいなく、散発的な抵抗を繰り返すのみ。
ま、見せしめに何匹かの貴族を街ごと消し飛ばしてやったので、暫くすれば抵抗も収まるだろう。
そう言えばつい先日、元タウル王国近衛隊のアッカムと言う青年を新しく準男爵領の当主にしてやった。
例のティザーと言う男が降伏して来たので、その流れで準男爵に降伏を呼びかけたのだが、無視されたので屋敷ごと土に還し、その後釜としてアッカムを据えてやったのだ。
現在、俺の元にはまだ何十人かの旧近衛隊の面々がいるので、そいつ等にも何れ爵位を与え、魔王派の貴族として頑張ってもらうとしよう。
「しっかし、暇だよねぇ」
「呑気やな、自分。参謀の連中が忙しい忙しい言うてるのに……暇なのはオドレだけやで」
「そうだけどさぁ……内政仕事はズブの素人だし、下手に関与すると取り返しのつかない事になりそうだからさぁ」
俺が何か言うと、それが間違ってる事でもみんな従っちゃうからね。
怖くて何も言えないよ。
「訓練でもして体を鍛えたらどうや?最近、鈍ってるとちゃうか?」
「ん~……確かに。少しお腹とか出てきたな。けど、訓練って言っても、俺はいつも鍛える側だしなぁ」
「酒井の姉ちゃんと戦闘訓練でもしたらどないや?」
「酒井さんと?」
「せやで」
「ん~……そう言えば、良く考えたら酒井さんと本気で戦った事とかないよな。ってか、酒井さんって強いの?いや、強いのは知ってるよ。知識と経験も豊富だし……ただ、人界だと結構お茶目な失敗とかやらかしていたしさぁ」
正直、単純に戦闘能力だけ見れば、俺の方が強いと思うんじゃが……
「自分、まだまだやな。姉ちゃんは常に力を縛ってるんやで」
「そうなのか?」
「摩耶姉ちゃんを鍛える為に、敢えてレベルを落としてるんや。ワテの見た所……多分、お前より強いで」
「マジで?」
「マジや。ま、猫の勘ってヤツやけどな。どや?姉ちゃんに胸を貸して貰った方がエエんやないか?」
「そっかぁ……でも酒井さん、胸無いッスよ?」
「……今のは聞かんかった事にしたるわ」
★
と言うわけで、暇潰しアーンド自身を鍛える為、酒井さんに模擬戦に付き合ってくれと言ったら、「良いわよ」と二つえ返事でOKを貰った。
ただその後で、「その代わり、少し本気を出してあげるからシングも本気で来なさい。それこそ殺す気で掛って来る事。私も貴方を殺す気で行くわ」と真顔で言われた。
ちょっぴりドキドキである。
「殺す気って言われてもなぁ……ただの訓練なんだけど」
そうボヤきながら、駐屯地脇の開けた大地で準備体操。
酒井さんは手にしたいつもの戦闘用鉄扇を軽く振りながら、
「それじゃ始めるわよ。ルールとしては本気で戦う事。あとはギャラリーが大勢いるから、それを巻き込むような魔法は禁止ね」
「うぃ、了解」
確かに、何故だかギャラリーが物凄くいる。
たかだか戦闘訓練だというのに……あ、エリウちゃんも観に来てるよ。
「けど酒井さん、本気と言いましても……本当に殺す気で戦うんですか?」
それは最早練習では無いような気がする。
「そうよ。そのぐらいの気持ちで戦わないと特訓にならないでしょ?」
酒井さんは鼻息も荒くそう言う。
「そ、そうですかぁ?」
僕ちゃん的にはもっとエレガントに練習したいんだけどなぁ。
「でも本当に死んじゃったら、どうするんで?」
「アンタ、自分で復活できるって言ってたじゃない。私はそもそもが不死だし、何も遠慮はいらないわ」
「……分かりました。んじゃ、本当に殺すつもりで行きます。泣いても知らないですよぅ」
「ふふ、出来るものならやってみなさい」
「……」
参ったね、どうも。
酒井さん、むっちゃ興奮してるじゃないか。
これだから血の気の多い戦闘タイプの魔人形は……
ま、此方もそれなりに準備しないと、本当に大怪我をしそうだな。
と言うわけで、戦闘スキルを幾つか解放し、俺は腰から七星剣を引き抜く。
酒井さんも鉄扇を広げ、もう片方の手には何枚かの術札。
「さ、行くわよシング……覚悟は良い?」
「ふふん、いつでもどうぞ……って、うぇぇぇッ!!?」
「な、なによ?」
「ち、ちょいとお待ちを。すす、少し緊張しちゃって……てへへ」
俺は手を振り、深呼吸を繰り返す。
心臓が破裂しそうなほどドックンドックンと大きく脈打っている。
マ、マジか……
酒井さんに向かって剣を構えると同時に、パッシブスキルの一つである『危険察知』が大きく反応した。
しかも今まで経験した事の無い程の警告を発しながらだ。
あの、俺の世界の四大国の暴れん坊プリンセスどもを怒らせた時だって、これほどの警告は発しなかった。
本気を出さなきゃガチで死ぬってレベルの警告だよ……まさかここまでとは。
酒井さん、本当におっかねぇよ。
俺は意識を集中し、戦闘スキルを追加で解放。
更に特殊スキル『酔いどれドラゴン』に『必中の初撃』と『泣きの一手』も発動。
オマケに限定スキル『幻影の外套』と『空白の三秒』も追加する。
あと、マクロマクノン(スキル・魔法効果延長)にブロードス(スキル・アビリティ向上)、ラルジュ(魔法威力強化)等のバフも掛ける。
良し、これだけ準備すれば……多分、即死はしないだろう。
「お、お待たせしました。では早速に……」
剣を構え、酒井さんと対峙。
う、うぉう……
いつもより3倍ぐらい酒井さんがおっかなく見えるぜ。
「じゃ、行くわよシング」
言って魔人形が術札を放る。
刹那、それは巨大な二匹の四足獣となって俺に襲い掛かって来た。
式神か……反応からして炎属性と氷属性と。
フンと片手を振り、ディメルシュナイデン(次元切断)で簡単に屠るや、俺は一瞬で間合いを詰めて酒井さんに向かって七星剣を振るう。
スキルの効果によって俺の最初の一撃は確実に彼女にヒット……すると同時に、酒井さんの身体は細かな花弁となって辺りに飛び散った。
「なんとッ!?」
しかも舞い散った花弁が再び集まり酒井さんを形成するや、間髪入れずに鉄扇による鋭い斬撃。
『ミランジュ』のスキル効果によって攻撃は自動的に逸れるが、気が付くと俺の身体に何枚もの符が貼り付けられており、そしてそれが爆発。
『幻影の外套』により物理的ダメージは無いが、爆発の威力によって俺は吹き飛ばされる。
くっ、何時の間に……
すぐさま態勢を立て直すや、
「ドゥナクリス(雷槍)」
電撃系魔法を投擲。
しかし俺の魔法攻撃は、酒井さんをすり抜けた。
ボディに直撃したと思ったのだが、魔法はそのまま彼女の身体を通り抜け、後背の木々に当たって小爆発を起こす。
な、なにぃぃぃッ!?
どどど、どう言う事?
慌てて距離を取り、七星剣を構え直す。
頭の中は軽いパニック状態だ。
通常、魔法に対する抵抗手段は概ね三種類に分けられる。
一つは物理的な防御や回避。
もう一つは対抗魔法による相殺や反射。
最後はアビリティや耐久値による抵抗や無効化、及び吸収などだ。
しかし俺の魔法は、酒井さんをすり抜けた。
当たった筈なのに身体を素通りした。
サッパリ分からん。
もしかして幻影か?
しかし探知スキルは彼女の存在をちゃんと認識しているが……
「く……」
俺は腕を振り
「ルフスフェル(朱の一撃)」
火系魔法を射出。
鋭い炎の槍が酒井さんの体に突き刺さ……らない。
またもや彼女の身体をすり抜けた。
あ、当たらないって、どんな防御魔法だよ……
「今度はこっちの番よ」
酒井さんは鉄扇を軽やかに振り上げ、
「黄泉落とし、千槍花」
「ッ!?」
危険を察知し、縮地スキルで咄嗟に空中へと逃げる。
刹那、地面から鋭い槍の穂先が無数に飛び出した。
あ、あっぶねぇ……
物理攻撃系の魔法か。
そのまま俺は浮遊魔法で宙に浮かびながら、
「ならば……これはどうよ酒井さん!!」
重力系魔法『エ・ラクシャ(蒼天の重圧)』を発動。
彼女の周囲の重力値を増大させ、そのまま押し潰す。
だが酒井さんはサッと片腕を振り上げ、何かしらの防御魔法を発動させたのか、俺の重力魔法は酒井さんによって無効化された。
ズンッ!!と鈍い音を立てながら、彼女とその足元を除き、周りの大地だけが大きく凹む。
「チッ…」
「ふふ……破軍、千代菊」
「ぬっ!?」
頭上から数百にも及ぶ幻影の槍が降り注ぐ。
「フェストゥンク(城塞)」
防御魔法を瞬時に展開しつつ、縮地スキルで酒井さんの傍まで転移。
そして剣を振りながら接近戦に持ち込むが……ぐぬぬぬ、当たらねぇ。
酒井さんは小さい上にすばしっこいので、俺の剣は空を斬るばかりだ。
な、ならば……
「ディレイ・アタック」
剣を振りながら素早く後方に飛び退る。
その動きに合わせ、酒井さんが突っ込んで来るが、その体が一瞬にして切り裂かれた。
「どうよ!!」
特殊剣技ディレイ・アタックは、要は時間差ダメージを与える魔法の一種だ。
剣を振った軌道に敵が入ると同時に発動し、その剣のダメージを与える。
酒井さんは俺が振り回した剣の空間に入り、その身体を真っ二つに切り裂かれ、そのまま地面に……って、え?紙人形?
「やるじゃない」
声が響くと同時に、左の首筋を鉄扇で切り裂かれた。
頚動脈が断ち切られ、鮮血が迸る鈍い音が耳を劈く。
く、空白の三秒発動!!
致死ダメージが与えられる三秒前に時が遡る。
「ウェイティング・ベル(遁走の鐘)!!」
リ~ンゴ~ンと辺りに甲高い鐘の音が鳴り響き、俺の直ぐ脇で鋭利な鉄扇を振り上げていた酒井さんの動きが一瞬だが硬直した。
「縮地。そして完全不可視知」
即座に間合いを取り、それと同時に姿を消す。
酒井さんの弱点は、探知系能力が低い事だ。
取り敢えず気配まで消し、至近距離から物理攻撃を当てれば何とかなるかも。
「……桜花乱舞。雪月花の陣」
へ…?
酒井さんを中心に、辺り一面に薄桃色の花弁がまるで雪のようにヒラヒラと舞い落ちる。
何じゃろう……
と一歩踏み出した瞬間、地面に降り積もった花弁がフワッと上がり、そのまま俺に向かって一直線に飛んで来た。
「ぬぉッ!?」
花弁はまるで鋭利な刃物のように俺を切り裂く。
な、なんちゅう魔法だ……
防御にプラスして探知と攻撃まで兼ね備えているのか……
「フェストゥンク。リフクレシルト。そして回復」
防御魔法を張りつつ、即座に傷を治す。
そして酒井さんに向かって剣の切っ先を向け、
「ライトニング・アローフラッシュ」
中範囲雷系射撃魔法を展開。
次いで
「フランベルム(燃え盛りし永遠の木々)」
炎系攻撃魔法を放ち、彼女の足元から炎の柱が天に向かって昇り立つ。
酒井さんは魔法を躱す為に空高く飛んだ。
だがそれこそ読み通り。
「スフェラ・エルクシ(重力の崩球)」
彼女の周りの空間を圧縮。
そして空中で身動きが取れない彼女に向かって俺は宙を舞い、七星剣で渾身の薙ぎ払い。
今度こそ貰った!!
……
斬った感触が……無い。
「残念ねぇ」
自分の右側面から聞こえる酒井さんの声に、戦慄が走る。
微かに顔を動かすと、振り切った剣の上に酒井さんが立っていた。
そしてニコッと笑い、手にした鉄扇を一振り。
それは俺の首をアッサリとマイルドに刎ね飛ばした。
……マジかよ。
本気で殺す気じゃんか。
地面に向かって落ちて行く自分の胴体が見える。
ギャラリーの悲鳴も聞こえるし、おおぅ……エリウちゃんやリッカが卒倒しているよ。
トラウマにならなきゃエエけど……
それに誰かが『救急隊を早く』とか叫んでいるし。
首が断ち切られた状態なら、もう救急隊の出番は無いと思うんだけどね。
そのまま俺の首と胴体は地面に落ちた。
視線の先に、酒井さんがゆっくりと空から舞い降りて来るのが見える。
彼女は鉄扇を仰ぎながら、
「ほら、早く蘇りなさいよ。そのまま頭を踏み潰すわよ」
「……酷ぇなぁ」
苦笑を溢すと同時に首を失った胴体は消え失せ、そのまま淡い光と供に俺の首から下が再生される。
うぅ~ん、まさか本当に復活魔法まで使う事になるとは……
「シング……私は本気を出せと言った筈よ」
酒井さんはしかめっ面で俺を睨みつけた。
「アンタの魔法はもっと強い筈よ。それに反応が僅かに遅れてるわ」
「や、そうは言ってもですねぇ…」
俺はゆっくりと身体を起こしながら、周囲に目をやり苦笑を溢す。
確かに酒井さんの言う通り、俺はもっと強力な魔法を使える。
がしかし、これだけ周りにギャラリーが集まっていると、さすがに……
範囲魔法は当然だが、中位レベルの単発魔法でも、威力を考えるとおいそれとは使えないのだ。
酒井さんは俺の視線で察したのか、小さく鼻を鳴らすと
「そのぐらいの縛りがあった方が練習になるでしょ。周りの環境に注意しなければならない場合もあるし、それに戦闘はいつも一人で行うわけじゃないでしょ」
「ま、確かに」
「だったらもっと本気を出しなさい。力をセーブし過ぎよ」
「了解です。だったらもう少し本気を出しますよぅ。その代わり、酒井さんどうなっても知りませんよ?ふひひひ」
「ふふ、大丈夫よ。アンタに合わせて、私ももう一段階本気を出してあげるから」
「……へ?」
その後、僕チンは三回死んだ。
しかも酒井さんは殆ど無傷だ。
な、何故だ?
何故、勝てない?
魔法もスキルも、酒井さんより豊富だし威力も高い筈なのに……
これが経験の差なのか?
サッパリ分からん。
ともかく、本当に底が見えないよ、この魔人形様は……