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本気トーク・ウーマン


 なんだかなぁ……

と言う感じで、俺は馬……じゃなくてタコ助に跨り街道を進んでいた。

向かう先はダータ・タウルが王都、タウル・ネア・タウル。

お供は黒兵衛と、ロードタニヤ辺境領の兵士百名余り。

その中には厳つい顔をした戦士長のジルコフとカーチャ嬢も含まれていた。

あれれれ?である。

確かに俺は、ちょっと兵を貸せと言った。

それはあくまでも、荷物運びの為である。

俺的にはロードタニヤ領に対して特に何も思ってないし、またロードタニヤの政治的立場を考えれば、大っぴらに協力を要請するのもアレなので、少しばかり荷役に兵を、それも一般人に変装させて貸してくれと頼んだ筈なのだが……兵はそのまま、綺麗な甲冑を着けた者達ばかり。

しかも御丁寧に、ロードタニヤを示すであろう紋章旗まで掲げている。

数は少ないが、まんま正規軍だ。

これではまるで、魔王シングがロードタニヤ軍を率いているみたいではないか。


「うぅ~ん、俺としては気を利かして言ったつもりなんじゃが、どう言う事だろうねぇ」


「姉ちゃんには姉ちゃんなりの思惑があるんやないか?」

タコ助の鞍の前方で香箱座りしている黒兵衛が、そう呟いた。

「あの姉ちゃん、頭良さそうやからなぁ」


「……だな」

確かに、彼女は頭もキレる。

あの混乱の最中、魔王軍に逃げ込もうと言った時は心底驚いた。

最適解だ。

鋭い戦略眼と言えよう。

「いやはや……頭が良すぎる女の子ってのは、中々に苦手なタイプだよ……僕チン的には」

チラリと後ろを見やり、俺は小さな溜息を吐いた。

魔王である俺様ちゃんに付いて来た兵達は皆、蒼褪めた顔をしていた。

見た目が怖い髭面の戦士長のおっちゃんも、僅かだがその顔には恐怖の色が見える。

だが、カーチャ嬢だけは至って普通の顔をしていた。

ま、少しは緊張しているようだが、恐怖はあまり感じていないみたいだ。


「自分、苦手な女性が多いのな。せやったら、摩耶姉ちゃんはどないや?」


「摩耶さんは菩薩様やぁ」


「異界の魔王が菩薩とか言うなや。んで、摩耶姉ちゃんが菩薩なら、酒井の姉ちゃんは何や?」


「般若」

もしくは第六天魔王だ。


「即答かい。……ま、分からんでもないけど……その酒井の姉ちゃんは、何て言うとったんや?さっき連絡しとったやろ?」

黒兵衛が欠伸混じりに尋ねてきた。


「やるんなら徹底的にと言われたよ」


「そうなんか?そら少し予想外やな」


俺は軽く肩を竦め、

「酒井さん曰く、今後魔王軍の名を騙る馬鹿どもが出ないように見せしめの意味を込めてね、ってな事だ」


「ま、そらそうやな」


「しかし、ん~……どうしようか」

軽く空を見上げ、俺は口をへの字に曲げる。

既に時刻は黄昏時に近付いていた。

薄っすらとだが、西の空が茜色に染まっている。


「あ?何がや?」

黒兵衛が背伸びをし、俺を振り返って見つめた。


「いや、なんちゅうか予定とか段取りがなぁ……」

俺は懐を弄り、近隣の地図を取り出した。

そしてそれを眺めながら、

「この南の街道をもう少し行くと、小さな村があるらしい。そこまでは良い。ロードタニヤ辺境領内だ。だがそこからは先は、何とかって言う男爵領があって、更にそのまま行けば王国の直轄地だ。貴族的な習慣とか不文律は分からんけど、旗を掲げた他領の兵が、勝手に領地に入って良いものなのか?」


「あ~……せやな。旅人ならともかく、正規兵は……マズイんやないか。先触れとか出して、何か許可的なモノがいるんやないか」


「だろ?しかも王国に目を付けられているカーチャ嬢が直々に差配するロードタニヤの軍だぞ。色々となぁ……それにだ、よしんば通行出来たとしても、泊まる所は?この速度だと王都まで三日ぐらい掛る予定だぞ。普通の街や村で、百人規模の兵がアポも無しにいきなり泊まる事は出来るのか?」


「陣を張って野営やないか?」


「それこそ、まんま軍隊じゃねぇーか……ってか、荷駄隊はいないぞ?」

略奪用の空の荷馬車が着いて来ているだけだ。


「野宿にレベルダウンやな」


「え~~野宿かぁ……ま、慣れてるから良いけど。それより僕ちゃん的には、もう一つ心配があるんだよなぁ」


「何や?」


「いや、晩御飯はどうするのかなと。よもや、森で獣を狩ったりしての自給自足とかじゃあるまいな」


「あんなぁ…」

黒兵衛は少し呆れた顔で俺を見つめると、

「自分、この先に村があるとか言うてたやないか。そこで仕入れればエエやんか」


「うん、街道沿いにある小さな村だな。けどなぁ……この先にある村、無事だと思うか?」

魔王軍に扮したダーヤ・タウルの国軍は、今通っているこの街道を北進してノイエルの街を急襲した。

ならばその途中にある村は?

その村もロードタニヤ領内の村だ。


黒兵衛は難しい顔で「あ~…」と言ったっきり、黙ってしまった。


「やれやれ、嫌な予感がするのぅ」

ってか、嫌な予感しかしない。

ま、晩飯の事を考えてたら、偶々気付いただけだがね。


俺はタコ助を止め、チラリと後ろ振り返りながら軽く腕を振る。

先頭を歩いていたカーチャ嬢とヒゲもじゃの戦士長。

そして護衛役の若い兄ちゃん二人が慌てて馬を寄せて来た。

全員が緊張に顔を強張らせている。

ちなみにこの二人の兄ちゃん達は、元は辺境伯家に仕える料理人と庭師の息子だそうだ。

幼い頃よりカーチャ嬢の遊び相手を務めていたらしい。

その運動神経の良さからか、今は騎士見習いとして修行しつつ、彼女に仕えているとの事だ。


「な、何事でしょうか」

微かに上擦った声で、カーチャ嬢が尋ねる。


そんなに緊張しなくても……

ってか、敬語でなくても良いのにね。

気さくに『シンちゃん』とでも呼んでくれると嬉しいんだがなぁ。

俺は小さく微苦笑を溢し、

「なに……兵を一人、斥候に出してくれないかなと。先行して、この先にある村の様子を見て来てくれないか?」


「村……ッ!?」

カーチャ嬢の顔色が、瞬時に青くなった。


ふにゃ?もしかして今の言葉だけで気付いた?

やっぱ頭の回転は早いねぇ。

「場合によっては色々しなきゃならんし……兵達の心構えも必要だろうな」

俺はそう呟き、再びタコ助を進める。

カーチャ嬢は何やら戦士長に指示を出していた。

すぐさま俺の脇を騎士が一人、全力で駆け抜けて行く。


「なぁ魔王」


「ん?なんでおじゃるかな黒ちゃん?」


「黒ちゃんって言うなや。それより、村とやらはどないなっとると思う?」


「……ま、凄惨な現場が広がっているだろうねぇ」

何しろ魔王軍に化けていたのだ。

奴等が想像する魔王の兵らしく、これ見よがしに惨たらしく村人を惨殺している事だろう。

「数名ほど残して、後は容赦なく……って所かな」


「皆殺しやないんや」


「魔王軍の残忍さを広める生き証人が必要だからな」

ってか、略奪まではしてないだろうな?

晩飯分ぐらいは、何か物資を残しておいて欲しいんじゃが……


「酷い話や……ロードタニヤと言っても、一応は自国領なんやで。しかもただの村人や。この王国はどないなっとるねん」


「さぁな。人それぞれ、国それぞれだ。ま、色々とあるんだろう。ただ、国内のゴタゴタを片付けるのに、魔王軍の名を騙るのはねぇ……正直、物凄く不愉快だ。それなりに、落とし前はつけてもらわんとな」



「……お嬢様」

慌てて馬を駆って走り去って行く兵の後ろ姿を見つめながら、ジルコフが静かに馬を寄せる。

彼の顔には些か困惑の色が広がっていた。

「一体、どう言う事ですか?この先にはバーニャと言う小さな村があるだけですが……何故にあの魔王は斥候をと?まさか敵兵でも潜んでいると……」


「分からない?」

カーチャは目を細め、ジルコフを見つめる。

そしてそのまま視線を幼友達兼警護役であるセレヴァとロセフにスライドさせながら、

「そうね。私にも本当の所は良く分からないわ。けど……多分、警告的な意味じゃないかしら?それとも気を遣ってくれたのかしら……」


「気を遣う?」

ジルコフは更に困惑の度合いを強めた。

魔王が人間に気を遣う……サッパリ意味が分からない。

魔王とは恐怖の象徴であり、他者に対しての気遣いなどからは一番遠い存在だ。


そんなコロコロと目まぐるしく変わる彼の表情に、カーチャは思わず吹き出しそうになりながら、

「そうよ。いきなり悲惨な光景を目の当たりにして、私や兵達が動揺しないようにってね」


「それは……どう意味で?」


「魔王軍に扮した王国軍は、この街道を北進してノイエルに攻め込んで来たのよ。その途中にあるバーニャ村を素通りして来ると思う?」


「――ッ!?」

そこまで言われてジルコフはやっと気付き、大きく息を飲み込んだ。

ノイエルに奇襲を掛け、カーチャを亡き者にしようと企んだ卑劣な奴等が、小さなとは言えロードタニヤ領内にある村をそのまま見過ごす筈が無い。

ましてや奴等は魔王軍のフリをしているのだ。

魔王の軍勢らしく、さぞ残忍に村の者達を……


「そうよ。何しろ奴等は魔王軍を演じているわけだし」

カーチャは眉間に深く皺を刻み込んだ。

ジルコフも難しい顔をし唸っている。

セレヴァとロセフは供に蒼褪めた顔をしていた。

カーチャは小さな溜息を吐くと、顔を上げ、目の前を行く魔王を見つめる。

この場にいる兵士達を瞬く間に蹂躙出来るであろう恐ろしき八本足の魔獣に乗った魔王は、ボンヤリと空を眺めていた。

耳を澄ますと、小さな鼻歌さえ聞こえてくる。

一見すると呑気そうにも見えるが、実際はそうではないのだろう。


「……にしても、誰よりも早くそれに気付くなんて……あの魔王はやはり頭もキレるわね」

率直な感想だ。

先のノイエルの街でもそうだったが、魔王シングの慧眼には、カーチャ自身も舌を巻くほどだ。

「私達が頭に思い浮かべる魔王とは、全く違う存在ね」


「確かに……仰る通り、見た感じはただの人間のように見えますな」


「ただの人間って事はないわよ。貴族か王族の子弟に見えるわ。顔立ちも整っているしね。人間の街に紛れていても、かなり目立つ存在よ。もちろん、良い意味でね」


「は、はぁ…」


「それにしても……これから先の舵取りが、かなり難しいわ」

カーチャは呟くように言うと、知らず知らずの内に親指の爪を噛んでいた。

貴族の令嬢らしからぬ悪癖だ。

考え事に夢中になると、何時の間にか無意識にしてしまう。

それで行儀が悪いと良く怒られたし、カーチャ自身も気を付けてはいるのだが、ついつい出てしまうのだ。

「ダーヤ・ウシャラクのように魔王に味方しても良いし、それどころかこの際臣下の礼を取って傘下に入っても良いわ。ま、その為に一応、兵と供に私も付いて来たのだし……」


「お、お嬢様……さすがにそれは……」


「何で?あの魔王の気性からして、厚遇される筈よ」


「それはそうですが、周辺国家からの反感も買いますし、ましてや領民の心情なども……そこは少し考慮されるべきかと思いますが」


「そうね。そこが問題よね。一応、辺境伯はタウル王家に仕える一領主ですものね。独立は反乱と同じよね。けど、ならばこのまま何もしないで静観する?国軍が私の暗殺を企み、街を蹂躙したと言うのに?」


「……むぅ」


「王国に反旗を翻す充分な動機が私達にはあるわ。けど、一地方領では王国軍には勝てないでしょう?その為に魔王軍に助力を求める。それなら別に悪い事じゃないわ」


「いやいや、それはどうでしょうか。領民の中には、かつて魔王アルガスの侵攻に伴い、家族を失ったり故郷を追われた者も大勢います。それにやはり、我等人間種と魔族や亜人種との間には千年に及ぶ確執もありますれば……王国に対して非を唱える事は結構ですが、その為に魔王軍に助けを求めるのは些か……下手をすれば領内が割れますぞ」


「分かってるわ。だから難しいのよ」

カーチャは短く溜息を吐く。

そして再び魔王シングの後ろ姿を見つめ、

「なら、あの魔王に意見を求めましょうか」


「……は?」


「言ったでしょ?あの魔王はかなりの知恵者よ」

相談を持ちかける、と言うのは別に悪い事ではない。

むしろこの際はかなりプラスだ。

強者に対し敢えて自分達の弱味を見せるのは、敵対する気は微塵も無いと言う明確な意思表示だ。


「いやいや、お嬢様……そんな気軽に相談などと……そもそもお嬢様は、あの魔王を恐ろしいとは思わないのですか?」


「思うわよ。物凄く怖いわ」

カーチャは素直に答えた。

「何しろ言葉だけで相手を服従させ、睨んだだけで数百人の兵を殺せる相手よ。怖いに決まっているでしょ?」

万が一にも勘気を被れば、その場で消滅させられるかも知れないのだ。

もちろん、あの魔王の人となりからして、そのような事はしないだろうとは思う。

出会ってからまだ数時間だが、何となくカーチャには分かる。

だが魔王は魔王だ。

接する時は慎重に、細心の注意を払い、隙を見せてはいけない。


……異世界より来た最強の魔王、何て言う噂があったけど、あながち本当なのかもね。

カーチャは小さく息を吐き、呼吸を整えつつ、馬の足を速めながら再び魔王の傍へと近付いて行く。

ジルコフと二人の騎士見習いもそれに続いた。



ぼんやり、本日の晩飯の事やどのようにしてダーヤ・タウル王国を滅ぼしてやろうかと考えていると、軽い蹄の音と供にカーチャ嬢が馬を寄せてきた。

その後ろには先程と同じく髭の戦士長に若い見習い騎士の兄ちゃん達もいる。


「ま、魔王……殿」


「ん?なんだね、辺境伯代行殿?」

タコ助の巨体から見下ろす形で、俺は腕白系お嬢様を見つめる。

緊張しているのか、整った顔立ちを微かに強張らせたカーチャ嬢は、少しだけ呼吸を整えるとおもむろに、

「少し相談があるのですが……良いでしょうか?」


「……」

え?相談?僕チンに?

……

なんで?

え?もしかして何か試されてる?


内心で困惑しながら、ちらりと黒兵衛を見やると、鞍の上で前足を舐めていた馬鹿猫は、

『姉ちゃん。言うとくけど、この魔王はパープーやで?』

とでも言いたそうな顔をしていた。

誠に以って遺憾だが、まぁ……事実だ。

政治とか軍学とか、未だに良く分からん。

正直、大まかに方針を決めるだけで、細かい所は酒井さんや参謀達に丸投げだ。


「ふむ…」

等と偉そう且つ大仰に頷きながら、俺は話の先を促す。

カーチャ嬢の相談内容は、おおよそ次の事であった。

ロードタニヤは魔王軍と敵対する気はない。

むしろ現状を鑑み、魔王軍に協力してダーヤ・タウルを滅ぼしたい。

って言うか、むしろ魔王軍の傘下に入りたい。

しかし魔王軍に味方すると、周辺国家や近隣領主が全て敵になる。

それに領民の反撥も予想される。

どうしたら良いのでしょう?

と言うことだそうだ。


「……なるほどな」

正直、知らんがなぁ、と言いたい所だが……いや、これはある意味チャンスかも。

現在我が魔王軍の帷幄は、絶賛人手不足中。

カーチャ嬢のように頭の良い子は随時募集中なのである。

これは彼女をゲット出来る千載一遇の好機かも。


「ならば今から辺境伯代行殿は我の人質だ。魔王軍の参謀に名を連ねてもらおうか」

取り敢えず、勧誘を掛けてみる。

了承したのなら、何とか知恵を絞って辺境領について考えてみるとしよう。


「え…わ、私が……」


「そうだ」


「――ッ!?な、なるほど」


「……へ」

にゃ?

なんだ?何故か妙に納得した顔してるし……そもそも何が『なるほど』なんだ?

サッパリ分からん。


「表向きは私が無理矢理、魔王殿の人質にされたと……その見返りに、ロードタニヤ領は独立国として自治権を認められ……それならば周辺国家に対しても言い訳が出来るし領民も納得し……いや、むしろ憐れみさえ……」


「……え?」

いやいや、何でそんな話になるの?

これだから頭の良いは分からん。

思考がワープしてるんだもん。

まぁ、納得してるんならそれでも良いけどさぁ。

……

ってか、髭のおっちゃんや兄ちゃん達が、あんぐりと口を開けているぞ。


「ですが魔王殿」

カーチャ嬢が真剣な眼差しで俺を見つめる。

「もし私を質に取れば……魔王軍に対しての評判が益々落ちますし、それに我が領民の怨嗟が魔王殿に集中する恐れが……」


「……それは構わん。どうせ最初から評判は悪いからな」

ってか、評判を落すように行動しているわけだしね。

「もっとも、表立って反抗の意思を見せれば、我もそれなりに対処しなければならないが……その辺は領民に対して何か言って置くが良い。ふ……ともかくカーチャ嬢は、これより我が軍の参謀だ。色々と知恵を貸してもらおう。ロードタニヤ領の統治は暫く、家宰なり大臣にでも任せれば良いだろう。もし何かあれば、我が名を出せば良い。そもそも正式な領主はどうしているのだ?話では病床に臥せっていると聞いたが……それは生まれ付きなのか?」


「い、いえ。昔は元気だったのですが、数年前より急に体調を崩し……」


「ふ~ん……王国に毒でも盛られたか。はたまた呪いの類かな」


「ッ!?」


「何を驚いている?魔王軍に扮して自分を暗殺するような連中だぞ?それぐらいの工作は仕掛けてくるだろう」

どうもカーチャ嬢は頭は良いけど、ちょっぴり素直だよね。

謀略関係には疎いみたいだ。


「い、言われてみれば確かに怪しい点が……」


「ならばその非を声高に説くが良い。領内や周辺の貴族達に聞こえるようにな」


「ですが証拠が……」


「言ったモン勝ちだ」

俺は小さく鼻を鳴らし、話は終わりだと言わんばかりに軽く手を振った。

カーチャ嬢は馬上で一礼し、そそくさと離れて行く。

と、鞍の上で毛繕いをしていた黒兵衛が俺を見上げ、

「なんや、適当な事を言うてた割には、何となく纏まったやないけ」


「適当ではないぞ。結構、考えて言ったつもりだ」


「嘘吐けや」


「うひひ……まぁね。何か適当に言ったら、勝手に解釈してくれたよ。楽チンだね。しかしまぁ、結果オーライってヤツだ。人的補充も出来たし、ロードタニヤも我が魔王軍の支配地域になった。後は王都を滅ぼせば、この国は終わりだ。彼方此方で混乱して、勝手に自滅して行くだろうよ」


「その次はどないするんや?」


「どうしようねぇ?ま、その辺は成り行きで……そろそろ、何ちゃって勇者クンの方も気になるしね」







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