- 黒い訪問者 -
"他には、何かあるかなぁ?"
必要な物を買いに出て、だいたいは揃った。夢中になり過ぎて昼食時間もだいぶ過ぎていたので、コンビニ店内の一角で軽食を済ませながら裏サイトをスマホで眺めて居る。
すると…
「あー…そこの13番二つちょうだいっ」
「はい、こちらで宜しいでしょうか?」
「あぁ、それ…」
背面のレジに、聞き慣れた声がした。
ん?と思い、振り向いてその聞き慣れた声の主を見てみると、タバコを買いに来た太田だ。わたしは思わず呼び止めた、
「おい!太田ぁー、何やってんだぁ?」
太田もわたしに気が付き、レジの精算を済ませてわたしのところへ来た。
「ぉ、おう!昨日は悪かったなぁ。
お前こそココで何やってんだよぉ?」
「あぁ…休みで予定も無いからフラフラして居てココへ寄っただけだよ、お前は仕事かぁ?大変だなぁー」
「まぁな。急な仕事が入ってな、休日出勤になっちまったんだぁ、俺も休みだったのに。それより、昨日の話しだけど…わかったか?あの事はもう忘れるんだ、いいな?ロクなことにはならんぞ、たぶん。」
「あぁ、興味あったけど忘れることにしたよ。ご忠告をありがとうございます!ハハッ
仕事頑張れよッ」
「そうかぁ、じゃぁまた来週あの店でな!」
「ぁあー、じゃぁッ!」
太田は正装だった、ネクタイの色はブルーだ。冠婚葬祭ではなさそうだった。
仕事と言ったので深くは聞かなかったが、仕事の様子では無い事はこのわたしでもわかった。例のラジオの事は念を押されてしまったが、もう遅い。わたしは実践するために今日が在るし、そのためにここに居る。
それにしても、太田の様子が昨日からおかしい…それだけは明らかだった。このまま跡をつけて尾行しても良かったが、わたしの今はラジオの事だけ。太田のことが気になったが、優先順位は変えられないし、このままの状況ではこれがわたしの使命とも思えてくる、軽食も済ませたので取り敢えず帰宅する事にした。
家に着き玄関のカギを開けようとしていたその時、待ち構えていたかの様に詰め寄ってきた迎えのおばちゃんが慌てて詰め寄り声をかけてきた…
「ちょっとっちょっとぉ?
あんた、大丈夫なの?!黒ずくめで長身の外国人3人位があんたの家の周りを暫くウロウロして帰って行ったわよぉー何かやらかしたのぉ??」
「えッ!何すかそれぇ?」
わたしは驚いた。
犯罪の様な悪い事もしていないし、誰かに追われる様な事もして居ないし、そんな人間では無い。しかも外国人の、趣味の良いとは言えない全身黒ずくめの知人や友人など居ないし…アッ!?
「おばちゃん、ありがとう。
何でもないから大丈夫だよ!」
わたしは平静を装って、訪問者を教えてくれた迎えのおばちゃんに言った。
やっぱり、あのラジオだ…とてもマズイものを手にしてしまったらしい。さっき偶然コンビニで会った太田の忠告もこれで納得ができた。急いで部屋へ向かい、ラジオが入ったダンボールを確認した。ホッとする間も無く、そのラジオを隠さないといけないと辺りを見回すが、もしまたその黒ずくめの男たちが家に来て部屋を物色したら簡単に見つかってしまう…何か良い方法は無いかなぁ?
そこで天井を見上げると、先月の台風で雨漏りがした時の工事跡があったのを見つけた。
そうだ!あそこに…と言うのは素人考えだな、あそこをダミーにして違う所にしよう。
天井裏で一番わかりにくい場所は…そうだ、あそこにしよう!わたしは、その密室の天井裏にラジオを隠した。
と、丁度その時に"ピンポーン"と宅配業者が訪れ荷物を受け取った。代物を別の出品者からもう一つ購入したのを忘れていた、これもそのラジオだ。これで狙われる数がまた増えてしまったが、何か良い策はないか?と考えた。
…と、また閃いた事があった。
「あ、そうだ!」
つづく