- マニア発見! -
もうかれこれ二ヶ月ほど、例の古い付録のトランジスタラジオを探している。現物は勿論の事、暇さえあればネットで検索しているし、こんなわたしには縁が無い図書館にも足を運んで調べている。キーワードで名前らしき当時の物は見つかるが、家電の年表に出されている程度。現物探しに古本屋やリサイクルショップへも出かけた。古本屋は、根本的に家電に興味が無い店主と思っていたので取り敢えずは仲良くなり、古い本集めが趣味と言い少しばかりか話をする営業マンにいつの間にかなっていた、やれやれだ。
ある休日に、夕飯を済ませたわたしは自宅のパソコンへ何時ものように向かっていた。
この日も、あの付録のトランジスタラジオの事ばかり頭にありボーッとネットを閲覧していた。いつも検索ワードは"Appendix Transistor radio magazine book"としていたが、違う角度からワードを変えて検索してみることにしてみた。
今度は"Appendix Radio Mania"と入力。
これなら当時の物の収集家やマニア、わたしと同じ噂を聞いて探している人に出くわすかもしれないと思ったからだ。期待して検索結果を待ったが…出てこない。
検索ページを何ページか進めていくと、一件だけそれらしいマニアを見つけ出した。
わたしは喜んで画面に顔を近づけ食い入る様に見たが、やはりマニアだけの人物だった。
雑誌は勿論無く、ラジオ自体も単体で画像が載っていた、初めてそのトランジスタラジオを見た。それと、白には決して見えない薄茶色の大きな染み付きで色褪せたマニュアルの見開き両面が載っていた。ジュニア向けらしくポップに大まかにしか説明が載っていないのは当たり前だが、メーカーの名前と協力研究チーム名が下側の隅に記載されていた。
付録提供にR社とあるがその下に協力会社として、開発チームE-J.Tチーム・代表/ A.Moritaとあった。
これは旧東通工、現在S社の創業者の名前だった。日本人がこの当時、既に海外の協力会社の開発チームにいたのは驚いた。開発部だが、この日本人が例え玩具の付録であろう簡易なラジオを手掛けていた…わたしは感動した。
それと同時に噂されている事は果たして確かかどうか?と言う思いが先だった。
ここで閃いたのが、このマニアは何処で入手したのだろう?と言う疑問だった。
この人物の手記を読んでみると…
"欲しい古い物は店頭には存在しない。なので、ネットオークションで探し見つけ出したのだ!"とあった。
そうか!日本だけでは無い、海外のオークションサイトで探せば良いんだ!
今までの二ヶ月は余興にしか過ぎなかったと思うとどっと疲れが出たが、また新たに探すポイントがわかり心機一転、海外のサイトへ付録のラジオを探す旅へ出てみる事にした。
A-bayネットオークションサイト。
ここは、米国民全員が参加する国内大手の老舗サイトだ。ここで探すのは日本のサイトに比べて容易い事では無いがそれを所持して公開していたマニアの手記通りに検索してみた。その人物によると、噂はもう拡がっていてラジオとして検索は出来ていないので、
"ツール"や何故か"マシン"として検索出来ると記載されていた。やはり噂通りの代物だったか…わたしは、中年でいい大人にも関わらずワクワク感を隠せなかった。
童心が戻ったのか蘇ったのか、はたまたまだまだ子供なのか?
まぁ、なんでも良い。
また一歩、苦労して探している代物に近づけたのだから…
つづく