- プロジェクトのために… -
暗い世界の中、たったひとつの光を目指して歩いて居る…腕には猫のヤンを抱えて。
何キロあるのかなぁ?なかなかその光の場所へ辿り着けない。歩きながら、肘にかけたホームセンターの買い物袋に気が付き段々と重く感じてくる。
何十分と歩いただろうか、光る場所は段々と大きくなり近くなってきた。普通のドアほどの大きさの明るい場所、あと100メートルくらい…やっと、辿り着いた。
"眩しいなぁ…ここは何処だろう?"
暗い世界から明るい光の場所は、視力が慣れるまで数十秒はかかった。段々と視力も明るさに慣れてくると、その場所はどこかの会議室の様な場所だとわかった。ホワイトボードと、大きな液晶モニターが半分ずつ有り、正面に1人、周の席には10人ほど居るだろうか?その周りの席に座っている1人がわたしに気がついてこちらへ向かって歩いてきた。
黒ずくめの男…わたしはもうダメかと思ったが…
「だからやめろと言ったのにぃ…」
それは、正装姿の太田だった。
「な、何で太田がここに居るんだよ?!
ここは…何処なんだ?説明してくれ!」
太田を見つけてわたしは混乱したのか、怒鳴ってしまった。座って居る人たちも、わたしの怒鳴り声でこちらを振り向いた。
太田は言う…
「まぁまぁ、落ち着けって。お前も俺も選ばれし者らしいんだ。あのラジオの秘密を知って、調べて、実行した者同士と言うところかな?だから、ここへ来たんだ。
来た…と言うより呼ばれたんだよ、CIAに。」
わたしは頭の中を整理するのに5分はかかっただろうか…太田は喋り続けて居たが、今の言葉が衝撃過ぎて耳には入っていない。
「まぁ、こっちへ来てお前も隣へ座れよ。」
会議席の端へ座らされるわたし。
太田がアシスタントと思われる女性に何か言い、その後キャリーバッグを持ってわたしのところへ来た。どうやら腕に抱えてるヤンをこのバッグへ入れろと言うことらしい、言われる通りにヤンをキャリーバッグへ入れ足元へ買い物袋と一緒に置く、ヤンも状況がわかってる様で鳴かずに静かにしている。
「コレ、耳に付けろよ。ほら…」
太田が耳栓のようなものをわたしに渡す。
「コレで聴けば、全て翻訳される翻訳機だ、便利だよなぁー全く。真正面を見なよ?あれが、ニコラ・テスラだ、本物だぜ?生きてる。」
わたしの思考を創り上げてくれた、神様的存在の人物が、目の前に生きた姿で動いている…夢の様だ。驚きと感動と喜びで瞬きせずにいたせいか左の眼から涙が溢れる。男泣きは恥ずかしいことではない、目の前にわたしの身体の一部が存在するのを確認出来たからだ、喜怒哀楽は選ばずして出てきたわたしの胸のうちだ。
また、太田が言う…
「お前も改造したあのインスタントラジオは、生前の時のテスラのプロジェクトだったらしい。それを息子が受け継いで付録の物でマシンとして未完成なら気付かれないとそう言う代物にしたそうだ、クォーツ石もモールス信号もそのためだ。CIAも、テスラの死後に所持品を没収して途中からこのプロジェクトに参加してる。それから、開発チームのE-J.Tチームってラジオのケース内側にもサインがあっただろ?J.Tってのは、ジョン・タイターだ。少し前に未来人とか言って話題になったやつ、アイツもこのプロジェクトに参加しててA.Moritaって日本人、今のS社の創業者も協力してたって訳さっ。」
このラジオの噂の真相が、今の太田の説明でわたしの中の点と点が繋がった瞬間だった。
「向かいに座ってる頭がグシャグシャの人は誰だと思う?…アインシュタインだよ、全く驚いたね。皆んなテスラが計画したんだって。生き返らせた訳ではなく、生前から連れてきたって事だな。そして、事が起こるのは歴史ではわかってるから、その時に、また歴史が変わるらしい、そのやり方でこの世を良い方へ変えようとするプロジェクトらしい、テスラのやりたい事は。スゲェーよなぁ、
ハハッ…」
わたしは黙って居るしかなかった…
太田の話は嘘でも夢物語でも捏造したものでも無かったからだ。目の前にテスラとアインシュタインが生きて居る事が事実と受け止めなくてはならなかったからだ…
つづく