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叛逆の戦姫  作者: アマちゃん
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序章 捕らわれの戦姫

「このっ……しつこいわね……!」

海上を恐ろしい速さで駆け抜ける武装少女が一人。だがその恐ろしい速さも、いつも通りの速さではない。彼女の背中に取り付けられたブースターは損傷し、バーニアが一つ欠損してしまっている。

これではスピードが出るわけもない。姿勢制御でやっとだ。後ろからは複数の武装兵が無限にもある弾薬をばら撒きながら追って来ており、一瞬で止まることは許されない。

「振り切れないならっ……!」

彼女は腕に装備された30mmガトリング砲を後ろに向けて弾をばら撒く。当たらなくたっていい。敵兵を少しでも後ろに下げられたらあとは逃げられる。大丈夫だ、精神力を強く持て。

ここで心が崩れたら武装が上手く操れなくなる。

しかしその時、敵の放った一発の弾丸が背中のブースターに直撃した。間も無くブースターは爆発、炎上した。

「嘘っ……?」

一瞬、時間が止まったかのように感じた。その一瞬の中で確かに分かったのは、私が墜落するという揺るぎない事実だけ。

あまりスピードが落ちないまま彼女は滑空を続け、遂に海面に叩きつけられた。勢いで何度か水面を跳ね、やがて完全に沈黙した。

「目標墜落、帰投します」

複数の武装兵は墜落を確認した後、そのまま飛び去って行った。


「今日は穏やかだな。いい天気だ」

心地よい波風に揺られながら青年アーサーは船を走らせる。今日もいつものように漁場に行って魚を獲る。戦争が起きていてもこの習慣は変わらない。

「アーサー!ちょっと来てくれ!」

「父さん?」

戦備にいた父のバーニィが声を上げる。

「目が悪くなってよく見えねぇんだが、あそこに何か浮いてないか?」

「ちょっと待って」

船尾に移動して父の指差す方を見る。確かに何か浮いている。しかもあれはイルカやクジラなんかじゃない。

「ちょっと船を近づけようか」

「おう」

舵を切って浮遊物に近づいていく。近づいていくと、すぐにその浮遊物の正体が明らかになった。

「父さん、あれ人だよ!」

「人だと?」

「何かつけてる!あれメンタルウェポンじゃないかな!?」

「あぁなるほど、そういうことか」

メンタルウェポン。元々は帝国が開発した技術であり、体に小さな媒体を埋め込むだけでその人間は武装ができるという代物だ。武装の強さはその者の精神力の強さに比例すると言われており、そこから

メンタルウェポンという名前が付けられた。漂流している人はおそらく戦闘で撃墜されたのだろう。

「引き上げようよ!」

「もう死んでるだろ」

「でもそのままだと可哀想だよ!」

父バーニィは変に優しい息子に呆れながら、船を更に近づけていった。

「あっ、この人……」

「……女か」

浮かんでいたのは何と女性だった。アーサーと同じ年頃であろう、金髪の女性。青い装甲に身を包んでいるが、その装甲ももうボロボロになっていた。

「引き上げよう」

引き上げてみると意外に軽く、あっさりと船に乗せることができた。

「こんなでけぇ重火器つけてんのにこの軽さかよ」

あとはこのまま連れて帰ってどこかに埋めてあげるのだが、バーニィはすぐにそうならないことを悟った。

「おい、こいつ生きてるぞ」

「えっ!?」

「よく見ろ、ちゃんと呼吸してる」

言われてみれば、彼女はしっかりと呼吸をしている。武装のおかげで海面に浮いていられたのが唯一の救いだったらしい。どちらにせよ、今日の漁は中止せざるを得なくなった。


「う……」

……生きてる。ここはどこだか分からないけど、誰かが助けてくれたのだろう。メンタルウェポンはボロボロのまま。これでは当分使うことはできない。

建物を見るに、ここは村のようだ。あまり発展はしていない。

「あ、起きたんだね」

話しかけてきたのは、村の住人と思われる青年。この辺にしては珍しい黒髪で、見るからに優しそうだ。

「あなたが助けてくれたの?」

「まぁ、そんな感じかな。大丈夫?どこか痛む?」

「……平気」

外から話し声を聞いたのか、新たに中年の男が部屋に入ってきた。おそらくこの青年の父親だろう。こっちは……どうやら快く受け入れてくれてるわけではなさそうだ。

「おぉ、起きたのか。おいアーサー、お前茶でも淹れてやれ」

「え?いいけど」

アーサー、そう呼ばれた青年はどこか不思議そうな表情をしながら部屋を出て行った。中年の男は、一気に真剣な顔になった。だがこっちはこの男の考えてることなど手に取るように分かっている。

「腰にナイフなんか隠し持って……やっぱり私は『クルール』に拾われたのね」

「ご名答」

クルールというのは村の名前。元々私に指示された命令は、中継地点として重要な役割を果たすであろうこの村を制圧することだった。それが敵の罠にかかって墜落、見事敵地に拾われたということだ。

「……私を殺すわけ?」

「いや、お前が暴れるなら仕方なく、と考えてただけだよ。『ベアトリーセ・ブローベル』」

「っ!」

名前で割れている。やっぱり、私もこっちの国では有名人というわけか。

「ふん!そこまで分かってるなら話が早いわね!やってみなさい!拷問でも何でもすればいいわ!何されたって情報は吐かないわよ!!」

「おいおい待て、別に拷問しようって気は微塵もねぇよ。攻撃もできない女に鞭打とうとも思わねぇ」

「騙されないわよ!あんたたちブリューナス人の考えてることなんてお見通しなんだから!」

「はぁ……」

バーニィは呆れて物も言えなくなった。やっぱり、帝国の兵士なんてものはみんなこういうものなのか。幼い頃から捻じ曲げられた教育を受け、祖国の思い通りにならない国は全て敵と教えられ、まともな

視点を持たされないまま戦場に向かう。帝国の使い勝手のいい駒にされてるわけだ。

「紅茶淹れたよ」

アーサーが部屋に戻ってきた。ベアトリーセはそれを見るなり、更に警戒心を強めた。

「その紅茶にも何か入ってるのね」

「そんなわけあるか。俺はこいつに茶でも淹れてやれとしか言ってねぇぞ」

そう言っても、彼女は全く信用せず、紅茶の入ったティーカップには触れようともしない。

「……そっとしといたほうが良いんじゃない?」

「そうだな……」

ここまで警戒心を強めているのも、撃墜されたことによるショックだと……信じたい。ここは一旦そっとしておいて警戒を解くのを待っていた方がいい。

「まぁとにかくだ。俺達はお前に危害を加えない。一日三食の飯も出す」

「絶対食べない」

「……」

「父さん」

息子に促されて、バーニィは一緒に部屋を出た。鍵もかけていない。一人取り残された部屋で、ベアトリーセはぶつぶつと呟く。

「絶対に吐いてやるもんですか……」


彼女はは部屋の隅で、殻に閉じこもるように丸くなって、再び眠りについた。

なんとなーく書いたやつ。不定期更新

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