二度目のデート 二度目の告白
車から降りるとまず、大きく伸びをした。家から小一時間で着く小さな砂浜はこの時期、人影は全くなかった。夏になると釣り人が数人くらい来るくらいの砂浜でデートをするならほとんど邪魔が入らないという情報を秀人にもらっていた。あの時は冗談半分に聞いていたが、秀人に感謝しなくちゃな。
「いやー運転お疲れさまー」
続いて助手席から降りた有紗も同様に伸びをしながら言った。
「まあ、まずは遊ぼっか?」
そういうと、有紗は服を脱ぎ始めた。
「おい、お前何やってんだ」
あわてて有紗から目を逸らすと。
「大丈夫だよー。下に水着着て来てるから」
何を慌ててんだかと言わんばかりの反応に。
「え?なに?お前泳ぐつもりなの?この季節に?この気温で?」
有紗は「何言ってんだこいつ」みたいな目で見ているが、本日は三月五日、現在の気温は十度に満たない。今度は反対に俺が「こいつ何言ってんだ」という目で見てやった。
「せっかく海に来て泳がないとか、大阪行って甲子園行かないようなもんだよ」
「なんだよ。その例え。たくさんいんだろそんなもん。第一、甲子園は大阪じゃなくて兵庫な」
「わぁー最高!また祥馬が昔みたいに突っ込んでくれたー」
有紗は本気で喜んでいた。まさかそのためだけに水着を仕込んできたのか。
改めて見ると案の定有紗の体にはたくさんの鳥肌が立っていた。しかし、それ以上に俺の目が釘付けになったのは。
「なにジロジロ見てんだよ」
有紗は腕で胸を隠すようなしぐさをしてちょっとだけ、ほんのちょっとだけ恥ずかしそうにしていた。久々に有紗の身体をちゃんと見た気がする。昔は一緒にお風呂入ったり、なかなか着替えない有紗を無理やり着替えさせたりしていた。しかし、久々に見る有紗は。女だった。胸も年頃の女の子みたいに膨らんで、スポーツをやっているおかげかくびれ具合もきれいである。もともと可愛らしい顔立ちにポニーテール、社交的な女の子。モテる要素はたくさんあった。さらにこのスタイル。今更ながらよくこんなガリ細で人見知りの俺が付き会えたもんだ。
「いや、スタイルいいなと思って」
正直な感想を述べた。すると、有紗は顔を赤くしながら。
「そんなエッチな目で見るなー。このスケベ。ロリコン」
こないだからうすうす感じてはいたが、こいつ意外とウブなのか?
「いいから、早く服着ろよ。風邪ひくぜ」
「話題を逸らしたな」
有紗は急に車の陰に隠れて服を着だした。服を着替え終わると、砂浜に降りた。
「冷たっ」
「ほら見ろ、これがさっきお前が入ろうとしていた海だぞ」
「よーし、寒中水泳やるぞ~」
「待て待て、もういいから。今日は足だけにしような」
「でも、少し暖かくなってきたよね」
確かに太陽が上がるにつれ、気温は少しずつ上がってきた。
「もうそろそろ春だもんな」
「小春日和だね~ねぇねぇ祥馬。今度桜を見に行かない?」
「お花見か。いいな~。ちなみに小春日和ってのは秋から冬の間を指すから春に使うのは間違いなんだぞ」
「えー紛らわしいなそれ。そういえば、意外と祥馬って物知りだよね」
「一応勉強はちゃんとやってきたからな」
それから二人でお昼を食べ、談笑したり、砂浜ダッシュをしたりした。そうこうしているうちにあっという間に夕方になった。
「さてそろそろ、本題に入ろうか祥馬君」
「正直いつやるかドキドキしてたよ」
「ここからはお互い本音をぶつけ合おうじゃないか。遠慮なんていらないぜ。酒でも入ればボロボロ本音が聞けるかもしれないけど祥馬車だもんね」
「いや、それ以前の問題だろ」
急に真剣な顔をして、俺の顔をしっかりと見ている。
「私考えたんだ。なんで祥馬に告ったか」
「正直な、高校進学とか、慣れ親しんだ中学の奴らと別れたりとか考えてるとしんどくなるんだよ。そんな時さ、相談相手がほしくなってさ。誰か頼れる人がほしかった。で、あの日祥馬に久々に会えてさ。それで告白した訳さ。だけど、祥馬にオッケーしてもらった後もずっとなんか心がもやもやしてたんだよ。私は祥馬に頼りたかっただけなんじゃないかって。でもね、やっぱ祥馬じゃないとやなんだよ。だって、祥馬のことが大好きだから。ずっとずっと憧れの人だったから」
有紗が一気に言い終えると、一呼吸おいて。
「俺もだよ…正直な、お前に告られたとき彼女ができるってスゲー嬉しかったんだ。有紗が彼女になるってことより、彼女ができることが嬉しかったんだと思う。俺は気づくの遅くてよ。今日やっと分かった。俺もやっぱお前じゃなきゃいやだ。お前が彼女だからいいんだ。今ならはっきり言える。お前のことを一番愛してる」
「これからも祥馬のことたくさん頼っちゃうかもだけどいい?」
「当たり前だろ。俺たちの間に遠慮なんていらねーよ。それに俺はこの二週間お前から逃げてた。それなのに今日こうしてお前から誘ってもらって。男として失格だよ」
「なによそれ。こないだ私にそんなに自分を卑下するなって言ってたじゃない。昔から祥馬の存在がどれほど大事だったか分かる?私と春菜は祥馬がいなかったら、きっと何もできなかったよ。それに生徒会長とかもやってたんでしょ。すごいじゃん」
俺たちは夕日をバックに抱き合った。金色に染まる海と真っ赤な空。そして、有紗の泣きじゃくった笑顔。この景色を俺は一生忘れることがないだろう。




