表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

無垢なる白き悪鬼

超展開で、雑文です。

話中に出てくる過去編はいつか書きます。

森を歩いてどのくらい経っただろうか。

時計なんてものは持ってないから、二人には正確な時間は分からなかった。

歩いても歩いても視界には樹木の海が見えるだけで何の変化も無かった。

変わったのは疲労感だけ。

砂浜の時とは違い、影と潮風で涼しささえも感じられる。

だが、デコボコの悪路のせいで疲労感は砂浜の比ではなかった。


「そこで休憩しましょうか」


優梨は自身の斜め上の方角を指差した。

その先にはデコボコしているが二人ほど座れるサイズの岩が鎮座していた。


「うん、ちょっと待ってて」


リアは肩に掛けた布袋を地面に置き、中から透明の容器を取り出した。

2リットルほど容器には蓋がしてあるものの何も入ってなかった。

リアはその容器の蓋を優梨に手渡すと地面にしゃがみこんだ。

そしてもう片方の手を地面に近づけると、そのまま立ち上がる。


まるで釣られた魚の様に、手をかざした地面から水が湧き出てきた。

そのまま手を容器の方へ近づけると、水は滑らかな弧を描きながら容器の中へ入っていく。


「不純物とかは入ってないはずだから、飲める……はず」


リアは自信がないのか、断言はしなかった。

ただ、濁りが一切無いのを見る限り、その発言に説得力はあった。


「大丈夫だよ。リアが頑張って汲んだ水だもの! 美味しいに決まってるよ」

「うん、ありがとう!」


優梨が飲もうと口を容器に近づけた瞬間、リアはあることに気が付いた。


「コップ、どうしよう」

「あ……」


思わずその場で硬直する優梨。

その瞬間、優梨は前回の旅の途中でコップを壊してしまったのを思い出した。


「じゃあ、交代で飲み合いっこしよう」

「え、えぇええぇぇぇ!!!!?????」


森中にリアの声が響き渡った。


しかし、それしか方法は無かった。

優梨もリアも、コピーなんて魔法は使えないので、苦肉の策なのだ。


「しかたないよ。だってコップがないんだもん」

「で、でも……恥ずかしいよ」


リアは赤らめた顔で俯く。

リアだけでなく、優梨若干ではあるが顔を赤らめていたのだ。


「大丈夫!今は誰もいないんだから」

「そうだけど……」

「ね、二人だけの秘密にすれば大丈夫だから」


優梨の言葉に説得されて、リアはゆっくりと頷いた。


「では、いただきます」


優梨は容器に入った水を半分くらい飲むと、リアに手渡した。

リアも躊躇いながらも容器の水を飲み干した。

飲んでる最中、耳と尻尾が歪な動きをしていたのは優梨しか知らなかった。


「そういえば、優梨の兄妹って何人いるの?」

「ん? あぁ、そういえば話してなかったっけ」


優梨は上空に視線を移すと昔話を語るような口調で話し始めた。


「私を含め、5人いたのよ」

「長女の翡翠ちゃん、長男の火焔くん、次女の結衣ちゃん、そして……次男だった奏くん」


奏の名前だけ、間が空いたことにリアは引っかかった。

しかも『だった』という過去形というのもあり、リア好奇心を刺激したのだ。


「『だった』って、どういうこと?」

「……死んじゃったのよ」


目を閉じて、静かに呟く。

その瞬間、リアは聞いてはいけない事を聞いてしまったのだと悟った。


「あ……ごめんなさい」

「いいのよ。アナタも知っておくべきかしらね」

「え?」

「私たちが住んでた島、そしてアナタが生まれた島、そこを襲撃した事件を」


優梨は奏の事を、あの事件について語り始めた。


「私たちより先に結衣ちゃんはあの島で暮らしていたの。

 母への復讐という目的で私たち家族は繋がっていたわ。

 母が作った島で、幸せそうに暮らす結衣を裏切り者と罵り、私たちは彼女を襲った」


リアは優梨の言葉を疑った。

復讐はダメなことだと、そう言っていた優梨が復讐をしていたのが信じられなかったのだ。


「復讐?」

「そう、復讐。 

 『世界を救う』そんな綺麗事の為に私達を造った母への、ね」


「世界を滅ぼす悪い神様を倒す為に生まれた私達は母を憎んだ。

 そしてそれに反対する結衣とその友人達に手をかけた

 ……結局復讐は失敗し、結衣の説得で私達は改心した。

 でも、悪い神様は奏を乗っ取る形で姿を表したわ。

 奏は自らを犠牲にする形で神様を倒した。」


「それからいくつかの困難を乗り越えて今に至るのよ」


優梨はそう話を締めくくると、立ち上がり汚れを払いながら前に歩み出る。

その姿を後ろから見つめるリア。


「さぁ、休憩は終わりにして進みましょう」


優梨は振り返ると、リアに手を伸ばす。

リアも立ち上がると、リアの手を掴もうと歩み出た。

その時だった。


「!?」

「え、なに?」


大地が揺れ、木々が震えたのだ。

突然の地震に二人は動揺を隠せないでいた。


鳥が一斉に声を上げて羽ばたく。

それが二人の不安を掻き立てていた。


次の瞬間、世界が光に満たされた。

二人はあまりの眩しさに手で顔を覆い、目を瞑る。

リアが最後に聞いたのは、自分の名前を呼ぶ優梨の声だった。





「……うぅ」


リアは起き上がり。周りを見渡す。

森自体は地震が起こる前と何も変わらない状態のままだった。

”優梨がいない”以外は。


「優梨......どこにいるの!?」


返ってくる声は無かった。

聞こえるのは葉が風に煽られて擦れる音だけ。


「いったい何が……とにかく探さないと!」


リアはおぼつかない足取りで歩き出した。

休憩した岩場が米粒ほどの大きさになるまで歩いても優梨の姿は見当たらなかった。


「優梨……」


諦めかけてたその瞬間、背後で草を踏む音が聞こえた。

警戒と期待で振り向いた先には優梨が立っていた。


「……優梨!」

「リア、探したのよ!」


リアは優梨に近づき、その身体を抱きしめた。


「怖かった! 怖かったよ!!!」

「よしよし、甘えん坊さんね」


数秒間、リアは優梨を抱きしめた。

満足したのか、リアは優梨から離れていく。


「さぁ、一緒に行きましょう」


そう言って、先程のようにリアへ手を伸ばす。

その時、優梨から発せられる雰囲気に違和感を覚えた。

そして、あることに気づく。


「優梨、髪の毛……」


リアは警戒心を高める。

優梨の髪は金髪で先端が白いのだ。

今の優梨は白い部分が無かった。


「あぁ、これ染めたのよ

何が起こるかわからないから、念の為にね」


優梨の一言で、リアは確信した。

優梨は髪の白い部分を恥じることはなかった。

だから旅の最中も染めることを拒んだのだ。

それを否定する発言を、リアは聞き逃さなかった。


「……お前は、誰だ!」


リアは手を頭上にかざして振り下ろすと、その手には水色で半透明な両手剣が握られていた。

獣の目で優梨の姿をした誰かを睨み付けた。


「ど、どうしたのリア?

私よ、優梨よ」


「優梨は自分の発言を簡単には曲げたりしない!

それに、染料は持ってきてなかった」


「魔法で染めたのよ。それくらい簡単でしょう」


「......優梨は髪を染める魔法は知らない」


決定打だった。

リアは今までの旅で、優梨が髪を染める魔法の知識がない事を知っていたのだ。



「……結構バレるの早かったなー

 あ、そうそう。名前紛らわしいから、ユリでいいからね」


彼女は気だるそうな口調名乗った。

そして、金髪の髪が徐々に真っ白に変化していく。


「まぁ、隔離するという目的は果たしたから良いか」


「質問に答えろ!」


彼女から発せられる雰囲気と発言の内容。

それを自身の記憶と照らし合わせていく。


そして、リアの脳内にある光景が再生された。

それと答え合わせをするかの様に、ユリの姿が変わっていく。


「そんな...なんでお前が.....?」


リアは恐怖から構えを解いてしまった。

最悪の相手が目の前にいると分かってしまったから。


背中からは3対の瞳模様の翼が生え、両手の手首には両円錐状の白い結晶が囲っていた。

リアの脳内での光景と目の前の光景が殆ど一致した瞬間だった。

優梨が突然変異し、リアと死闘を繰り広げた時の姿そのままだったのだ。

そのまま宙に浮き上がると、両手から槍のような刀を出現させた。


「また、会えたね────、


 さぁ、おいでリア。

 また、あの時のように殺しあおうよ!」



誰だお前!?

そんな展開が、あと最終話まで続きます。

ごめんなさい


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ