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症例1-1

日進月歩。


その言葉の通り、絶え間なく様々なものが進歩し、昨日の常識は今日の非常識となりうるこの現代。

その技術の革新や進歩が著しい世界のひとつとして医療の世界があるが、それと同時に、様々な問題も生まれてきているのも確かである。

一体この先、医療はどうなっていくのであろうか。

そして、我々人間は、どう向き合っていくのであろうか。


【西暦20xx年 伊丹→鹿児島 国内線 機内】

「当機は、あと30分程で鹿児島空港に…」

機内に機長のアナウンスが流れ、何事もなく平穏な空の旅の時間が流れる中、後方の一角で小声で言い争いをする2人がいた。

「おいコラ、聞いてないぞ!なんでそんなに借金があるんだよ!」

「うん、なんというかその、ねぇ、何事もお金がいるじゃない?ねっ!」

「ねっ、じゃないだろうが!」

語気を荒げる細身の青年と、それをあまり気にせず受け流す青年の2人は、こうやって少し前からこのようなやり取りを続けていた。

「借金は一体誰が返すんや!」

「まぁ2人で返そうぜ!なっ!きっとなんとかなると思うよ!」

「聞いてないわもう…」

2人がそんなやり取りをしていたその時、機内にアナウンスが流れた。

「ご搭乗のお客様に連絡です。お客様の中に医師、看護師、医療関係者の方はいらっしゃいませんでしょうか…」

今まで飄々と受け流していた青年がこのアナウンスを聞いて、不機嫌な青年に切り込んでいった。

「おっ、そんなこんなしてたらこれですよ!」

「ちょっと待て!話は終わっとらんぞ!」

「ほらほら行きますよー、ボクらには応召義務があるからねー」

「覚えとれよ…」

2人は、機内の前方へと向かっていった。


「すみません、ボクら医者です。何かありましたか?」

相変わらず飄々とした様子の青年は客室乗務員にこう告げた。

「助かります!実は頭が痛いと訴えているお客様がいらっしゃいまして…」

客室乗務員の向こうには、苦悶の表情で頭を抱えている太り気味の中年の男性が腰を下ろしていた。

「ふむ…なるほど!出番だよ江藤くん」

飄々とした青年は、これまた飄々として細身の青年にこう言った。

「応召義務とか言っておいて…そこは自分でやらないのかよ…」

「いやいや、まぁちゃんとボクもやるって。診断つけるはキミの得意分野だし、一刻を争うヤツならなるべく早い方がいい気がするから、ねっ!」

「まぁええわ…」

細身の青年はあきれつつも、苦しむ男性のもとに歩み寄った。

「こんにちは、自分は医師の江藤といいます。どうされましたか?」

「頭痛が…とてもひどくて…」

男性は苦しそうにそう答えた。

「この頭痛はいつから起こりましたか?」

「少し前から…突然…すごい衝撃を受けたように痛くなって…」

「今までこんな頭痛はありましたか?」

「いいえ…こんな痛みは初めてで…」

「そうですか…今まで何か検査か何かをして異常を指摘されたことはありませんでしたか?」

「はい、脳の血管に動脈瘤があると言われていて…」

「なるほど、わかりました。ちょっと診察をしますね。」

細身の青年は、いくつか問診をすると、男性を仰向けに寝かせ、頭部を持ち上げた。そうすると、男性は明らかに痛そうにする様子を見せた。

この様子を見た瞬間、2人の青年の眼光が鋭くなった。

「…これは急ぎで間違いないよね?」

「おそらく間違いない。早くしないと。」

問診を後ろで見ていた青年はこう言葉を交わすと、客室乗務員にこう聞いた。

「ナノマシンの外科手術キットはありますよね?」

「はい、あります。」

「よかった!急いで持ってきてください。緊急で手術が必要です!」

客室乗務員は急いでキットを取りに行くと同時に、2人も慌ただしく手術の準備をし始めた。



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