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長い耳の狩人

[主人公の田乃上裕志たのうえゆうしは、王国への密入国と密輸入の罪で軍警察のメリッサに逮捕されてしまいました]


 取り調べ室で二人きりになり、俺はメリッサに自分が何者なのかを説明していた。

「だから、何度も言ってるじゃない。異世界から召喚されてきたんだってば!」

「だから、何度も言ってるだろう? そんな嘘ではごまかされはしない!」

 しかし、俺の事を密入国者兼密輸業者だと決めつけているメリッサは、俺の話を聞く気がない。

 もう三十分近くこの繰り返しだ。


 ナツミとお師匠様(一ヶ月前から行方不明)が住む屋敷から、俺は手錠を嵌められたまま馬車に詰め込まれた。

 そして約1時間ほど揺られて、首都の中心にあるこの王城にやってきた。

 ちなみにナツミは屋敷で留守番。ニワトリの蒸し焼きを最後まで食べて上げられなかったのが残念だ。

 何層もある王城の第2層の一角がが軍警察の本部になっていて、その中の取り調べ室に俺とメリッサはいた。

「本当だって。あの呪文は、俺が書いた奴をナツミに『写本』させたんだよ」

「お前のようなわけのわからない男が呪文を作れてたまるか」

「そんなこと言われても……」

 頑固で自分の意志を曲げない女だなあ。

「じゃあさ、『写本』ができる人を誰か連れてきてよ。目の前でやって見せるからさ」

 すると、メリッサは視線を少しだけ困ったように逸らして言った。

「……もう呼んでいる」

「え?」

「職務を果たす為に必要なことは全てする。お前は私の事を頑固で自分の意見を曲げない女だと思っているかもしれないが、それは誤解だ」

「心が読めるのかっ!?」

「本当に思っていたのかっ!?」

 メリッサが椅子からがばっと立ち上がって腰のレイピアを引き抜き、その剣先を俺の鼻の頭にピタリとつけた。

「訂正しろ」

「……メリッサ・ルビー二等士官は、職務を全うするにあたり柔軟な思考を持っています」

「よろしい」

 メリッサはレイピアを鞘に戻して椅子に座り直した。

 そして乱れた金髪を整えるために髪に触れた時、耳に付けた黒色のピアスが見えた。

「お、そのピアスも似合ってる。さっきも綺麗って言ったけど、身につける物のセンスがいいんだな、あんた」

「ままままま、またそういうことを言う!!」

 顔を真っ赤にして怒鳴るメリッサ。しかし、なぜか急に横を向いてもじもじし始める。

「あ、あのな……本当に、思ってるか?」

「なにを?」

「だからっ! え、ええと、わ、私が……ききき、きれいい、って……」

「ああ。あんた綺麗で大人っぽい美人だよ」

「サラッと答えるな! なんか適当に返事してるみたいに聞こえるから!」

 ふむ。めんどくさいな。

「綺麗な人を綺麗ということに迷う必要なんてないし、あんたは間違いなく綺麗なんだから綺麗と言われてキョドる必要なんて――」

「わ、分かった! わかったから、そう何度も綺麗って言うな!」

 どうすりゃいいんだよ。

「こここ、この話は終わりだ! わわわ、私がこんなこと言ったなんて、誰にも言うなよ!」

「言わないけど……」

 今の所この世界の知り合いはナツミだけだし。

「よし!」

 メリッサは、顔ではまだ尋問官を演じているが、間違いなく上機嫌になっていた。「異性に言われたのは初めてだ……」と小さく呟いたのは聞こえなかったことにしよう。

「しかし遅いな。そろそろ『写本』のできる奴が来る筈だが」

 と、その時、頭上からものすごい音と衝撃が取り調べ室を揺らした。


 ドゴオオオオオオンッ!


「な、なんだ!?」

 直後、部屋の外が慌ただしくなる。廊下を何人もが走る足音が聞こえる。

 取り調べ室の扉がバタンと開き、男の衛視が「隊長!」とメリッサに呼びかける。

「『鷲の羽根』の強襲です!」

「王城に直接侵入しただと!? 今すぐ行く!」

「ハッ!」

 衛視が走り去る。メリッサは俺にツカツカと近づき、左手の手錠を外しながら言った。

「緊急事態だ。取り調べは延期する」

「俺は帰っていいのか?」

「いいわけあるか!」

 メリッサは外した手錠の片方を自分自身の左手に嵌めた。俺とメリッサが手錠で繋がっている形になる。

「着いてこい!」

 言われなくても着いていくしかない。

 部屋を出た瞬間、メリッサが足下に転がっているなにかに蹴躓く。

「お、お前!」

 床に転がっているのはさっき報告に来た男の衛視だった。足から血を流している。

 廊下の奥から声が聞こえた。

「メリッサ・ルビー、だな?」

 そこには、耳が長く、肌の透き通った女が立っていた。クロスボウを構えて、こちらを狙っている。

「死ね」

 女はそう言って、なんの躊躇もなくクロスボウの引き金を引こうとした!

「危ない!」

 俺は反射的に身体を捻り、メリッサを抱きしめるようにしてクロスボウの射線に入った。


 バシュッ!


 直後、背中の腰、左辺りに衝撃を感じ、次の瞬間それが痛みに変換されて全身をつらぬいた。

「ぐあっ!」

「おい!? お前なんでこんな――」

 突然の事に呆然とするメリッサの声が、途中で聞こえなくなる。

 景色もだんだん見えなくなる。


 あれ、俺、死ぬのか?

打ち切りっぽいけどまだ始まったばかりですよ!w

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