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美人軍士官メリッサ

「と、とりあえず隠れてください!」

 ナツミに言われて奥の部屋に入ろうとした瞬間、轟音と共に玄関のドアが吹き飛んだ。


 ドゴオオオオッ!!


「な、なんてことをするんですか人の家に!」

 ナツミが怒ると、土煙の中から女の子の声が返って来た。

「軍警権限だ! 文句があるなら王妃を娶れ!」

 革靴の音と共に声の主が室内に入ってくる。

「王国軍王家直轄警察機構所属、メリッサ・ルビー二等士官だ」

 漢字だらけでよくわからない。よくもまあ噛まずにスラスラ言えるものだ。

「軍警権限によりこの屋敷はただいまから夜明けまで軍の直轄領となる。お前達を含め、この屋敷にいる人間も同様だ」

 メリッサは俺と同い年くらいの大人びた美人だった。身長も165cmはありそうだ。

 着ているのは濃紺のワンピースだが、胸元の階級章や肩から垂らしている飾り紐からそれが軍服だと分かる。

 いわゆる軍服ワンピースとかミリロリとか言われている奴だ。

 腰がきゅっとしまって、厚い生地のスカートが膝上で広がっている。

 バストも、軍服が少し窮屈に見えるくらいの大きさがあり、シルエットが完璧だった。

 腰まである長いストレートの髪は白に近い金髪で、頭の上にはリボンの付いた軍帽が載せてある。

 白い肌の中で印象的な釣り目がちの蒼い瞳は、職務に燃える輝きがあった。

 その綺麗さにほれぼれ見とれていると、メリッサ・ルビー二等士官は腰のレイピアに片手を添えて、俺を睨んだ。

「……? お前、なにをジロジロ見ている?」

 聞かれて、思ったままの事を答える。

「いや、あんた綺麗だなと思って。軍服もよく似合ってるし。スタイルがいいんだな」

「なななっ!? 突然何を言うんだ!?」

 メリッサが目を見開き、白い頬が一瞬にして赤く染まる。

 背後にいた三人の部下らしい女性隊員が一斉にはやし立てる。

「ひゅーひゅー! 褒められて良かったですね隊長!」

「いつも言ってるじゃないですか! 隊長美人なんだから絶対モテるって!」

「これでようやく年齢=彼氏いない歴が終わりますね!」

「ううう、うるさいうるさい!」

 なおも顔を真っ赤にしたまま部下を黙らせ、キッと俺を睨む。

「お前はいったい何者だ! 今日関所を通過した国外人の中にお前に該当する人物がいないことは確認済みだ!」

「関所って?」

 ナツミに聞く。ナツミは「あっ」と口に手を当て、俺を申し訳なさそうに見た。

「……王国首都は治安維持の目的で、国外からやってくる人を厳密にチェックしてるんです」

「あー出入国管理があるのか。俺は密入国扱いになってるんだな」

「買い物には私一人で行けば良かったですね……ごめんなさい」

「密入国だけじゃない。お前には密輸の嫌疑もかかっている」

 メリッサが指ぬきグローブを嵌めた手を掲げると、部下がさっと羊皮紙を渡す。

「へえ、あんた指も細長くて綺麗だな。爪も綺麗に磨いてるし」

「なんでそんな所見てるんだよ! (ひゅーひゅー♪) お前らも黙れってば!」

 湯気が出そうなくらい赤い顔で、メリッサは羊皮紙をこちらに向けた。ナツミが驚く。

「あれ? これ私が魔術ギルドに売った、黒石の光の呪文ですよ?」

「そうだ。この屋敷の主にしてお前の師匠、ガートランド卿は一ヶ月前から行方不明。『写本』レベル2のナツミが原書無しにこの呪文を作ることは不可能だ」

 ビシッと俺を指さす。

「つまり、この呪文はお前が密輸した物だ!」

「え、いや、それは――」


 ガシャン。


 説明する間もなく、鉄製の手錠が俺の手首にかけられる。

「軍部に連行する! 呪文の密輸入は重罪だ。覚悟しろよ?」

 ……へ?


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