王女!?
[音爆弾の呪文で長い耳の少女を倒した裕志は、腰に受けた矢で失血し、気を失いました]
目覚めると、やたらふかふかするベッドで眠っていた。
「おはようございます。痛みはありませんか?」
ベッドの横に座っていたアンブローシアが覗き込んでくる。
「いや、全然。むしろ元気だ」
「良かった。内臓が傷ついていなかったので、治癒の呪文がよく効いたのでしょう」
そう言ってアンブローシアが微笑むと、後ろに立って仏頂面をしているメリッサが「ふん」と鼻を鳴らす。
「運の良い奴だな!」
「失礼よメリッサ。私達はユーシに命を救われたのですから」
「……」
メリッサは何か言いたげだったが、黙った。
俺はアンブローシアに聞いた。
「ここはどこだ?」
「王城の客間です。ユーシ、あなたは30時間以上眠っていたのです」
「永遠に眠らずに済んでよかったよ。ナツミはどうしてる?」
メリッサが答える。
「もうすぐ到着する。お前への嫌疑は晴れた」
メリッサは一瞬嫌そうな顔をしてから、頭を下げた。
「……すまなかった。なにかお詫びをしたい。なんでも言ってくれ」
別に詫びる必要なんてないだろうに。命を助けられた借りがあると思っているのか?
「あんたは職務を全うしただけだ。別に気にしてない」
「それでは私の気がすまない!」
面倒な奴だな。いいって言ってるのに。
「いいか。俺が必要ないって言ってるんだから、必要ないんだ」
「しかし!」
「ほら、あんた達が使ってる言い回しだよ。『文句があるなら王女を娶れ』だ」
ジョークのつもりで俺がそう言うと、何故かメリッサの顔が蒼白になる。
「どうした?」
すると、アンブローシアが目を細め、イタズラっぽく微笑んだ。
「まあ、面と向かって言われたのは初めてです。プロポーズって、なかなか気持ちが良い物なのね」
「え?」
俺がポカンとしていると、メリッサが「本当に知らないのか……」と頭をかかえ、俺に言った。
「この方は、栄光なる我らがカナン王国、第九十九代国王セルゲイ・カナン様のご息女にして長女、アンブローシア・カナン姫様にあらせられる」
「……国王の、長女? ええと、つまり、それは……」
「ええ。私は、カナン王国の第一位王位継承者です」
アンブローシア・カナンはいたずらっぽく微笑み、俺の手を両手で優しく握った。
「つまり、アンブローシア『王女』よ。愛しのお婿様候補さん?」
ちょっと短めですが、キリが良いのでここまでを第1章にしたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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