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猿と姫の異世界旅行記  作者: 暗根
第一章 異世界の灯
6/11

魔法測定

目が覚めると知らない天井でした。

―――なんてな。


「…やっぱ夢じゃあなかったかあ。なんか目え覚めた時に

木の天井が見えるって不思議だな」


現在時刻は…よくわからんけどたぶん朝の8時くらいだろうと思う。

目覚まし時計でたたき起こさない限り俺は基本的にそれくらいの時間に目覚めてたはずだし。


辺りを見渡すと朝の光が窓から入って昨日はよく見えなかった部屋の全景が見える。

…と言ってもあるのは椅子と机とベッドくらいなもんだが。

…あれ?他の二人は?

と突然ドアが思い切り開いた。


「ああ、やっと起きたのね。おはよう朝寝坊さん。いつまで寝てる気?」

「え、あ、アズサ?今何時だ?」

「さあ?でもお昼回ってるわね。もう私とヴェードさんで朝食とってここを出る準備終わったとこよ。

置いていかれたいの?」

「嘘っ!ちょ、ちょっと待っててくれ!すぐ準備する!」


うわああ!疲れたせいで寝坊したああ!


□□□□□□


そのあと俺は神速で持ち物を持つと下で飯を光速で食らい尽くして

大急ぎですでに外にいた二人の下へと向かった。


「すまん!遅れた!」

「ああ、ゴウ。おはよう。あんまりよく寝てたから起こすのもかわいそうかと思ってな。

そのまんまにしておいたんだ」

「そしたら昼過ぎまで寝てるんだもの…呆れる」

「しかたねえだろ!昨日いろいろやりすぎて疲れてたんだ!

というかそこは起こしてくれよ!」

「いやよ。なんで私が」


こ、こいつぁ…


「まあまあ二人とも、とりあえずゆっくり休息がとれたならいいじゃないか?

特に予定が詰まってるわけでもないんだろ?」

「まあそうね…というより何をしていいのか分からないんだけど…

ヴェードさん。私たちがついて行ったら邪魔かしら?

今のところ他に頼れる人がいなくて」

「んー、そうだな。俺は別に構わないが…あぶないぞ?

俺たち冒険者つーのは危険な場所に行くことが基本だからな」

「その点は大丈夫。最悪ここに武器にも盾にもなりそうなのがいるから」

「俺は物か!?」


その言葉にヴェードが考え込む。

いや戦力として考慮してくれるのはそれなりに嬉しいけど物扱いはひどくね?


「…そうだな。2人がいいならそれでいいだろう。

俺も1人でいるよりはその方がいいしな」

「なら決まりね。じゃあゴウ。時が来たらその時は頼むわよ?

私が死なないように」

「だーかーらー!俺はお前の盾でも護衛でもねえっつーの!」

「でも今の私にはあなたしかまともに頼れる人がいないのよ?

昨日みたいにまた守ってくれないの?」

「…っちしゃあねえなあ全く。昨日も言ったけど目の前で死なれるのが嫌なだけだからな。

そこんとこ間違えんじゃねえぞ」

「…ちょろいわね」

「ん?なんか言ったか?」

「いや?別に」


思いのほか頼られてんだな俺?

ただ…なんか聞こえた気がしたんだが…気のせい?


「じゃあとりあえず二人にはまず冒険者になってもらおうと思う」

「え、そんな簡単になれるものなのか?」

「ああ、冒険者っていうのは文字さえかければなるのは誰でもできる。

書類書いてちょっとした測定するだけだからな。

冒険者になるとカードが支給されるんだがこれが身分証明代わりになる。

それさえ持ってれば基本的にこの大陸ならどこの街にも入れるからな、

とりあえずなっておくのがここの基本なんだ…ってこれ昨日の門兵にも言われたか?」

「ええ、言われた気がするけど忘れかけてたからちょうどよかったわ。

測定がなんなのか少し気になるけど…誰でもなれるっていうなら気兼ねする必要はないわね」

「ああ。やろうと思えば5歳児でも普通になれるからな。安心してくれ。

じゃあ行くぞ。すぐそこだ」


そう言いながら歩いていくヴェードを追いかける。


街の中は昨日と違ってそれなりにたくさんの通行人がいた。

ヴェードと同じように剣を持った男から、手提げ籠のようなものを持っている主婦のような女性。

杖を持ったじいちゃんが通ったかと思えば、猫耳生やした女の人が…猫耳!?


「お、おいヴェード!化け猫!化け猫が通った!」

「ん?ああ、あの人は化け猫じゃあないさ。俺たちと種族が違うだけだ。

亜人族ってやつだったかな」


あ、亜人かあ。まさか本物をお目にかかるとは思わなかったね?

ネコだよね今の人。じゃあイヌとかトカゲとかいるんだろうか?


「…何故かしら。視線を感じるわ」


そう呟くアズサの声を聴いてよく注意してみると…

確かに道行く人みんながちらちらとこちらを見ているような…。


「あー。忘れてたわ。アズサ、これ羽織っとけ。その服装はここだと目立つからな」


確かにというか今更なのだが、俺は普段着のシャツにハーフパンツとかいう格好でこっちに

飛ばされたのでまだましなのだが、アズサはどうやら学校帰りだったのか制服だった。

…そりゃ目立つわな。


「…ローブかしらこれ?」

「ああ、手持ちがそれくらいしかなくてな。古い友人…つーか幼馴染のお古で悪いが」

「…ありがたくもらっておくわ。

さすがにこの視線は耐え切れないし」


といってその朱色のローブを羽織るアズサ。

それだけでもだいぶ周囲の風景に溶け込んだ気がする。

…若干怪しい人になってるけど。


「うん、まあそれでとりあえず大丈夫だろう。ゴウの方は…まあ特に問題ないか?」

「え、俺はいいのか?」

「ああ、まあ似たような服も一応売ってるからな。それにそれはそこまでド派手でもないし。

まあ大丈夫じゃないか?」

「そうか?…若干不安だが」

「影薄いから大丈夫よ」

「そういうこと言ってんじゃねえよ!というか影そこまで薄くもねえよ!」


とかやりながら歩みを進めると一際大きな建物が目に入る。

…えーと、ぎ、る、ど。ああ、ギルドだな。

…なんで読めたんだ俺。


「…なあアズサ、あの文字読めるか?」

「何がよ。ギルドって書いて…いやおかしいわ。私あんな字見たことないわ」


そこにあったのはそれこそ見たことも無いような記号と言った方がよさそうな物だったんだが

何故かすんなり読むことができてしまった。

…どうなってんだ?


「よく分からないけど、ここに来るときに読めるようになったのかしら?

知識だけ頭に流し込む感じで」

「…どうやって?」

「…さあ?」

「…」

「…」

「ま、まあ今考えてもしかたないな。行こうぜ」

「そ、そうね。行きましょう」


いちいち読めるようにする必要がないのはいいけど

知らないのに読めるっていうのもなんか気持ち悪いよな?


「おーい、二人ともどうした?目的地ここだぞ?」

「ああ!今いく!」


そうして俺たちはその『ギルド』とかいう場所に足を踏み入れた。


□□□□□□


…今俺はギルドにいる。

なんだろうか、一言で表すとこの場所は…むさ苦しい。


「俺から離れるなよ。冒険者つってもチンピラみたいなのもよくいるんだ…。

ここはよっぽどいねえとは思うがな」


それに無言でうなずき返す俺たち。

それもそのはず、今周囲にいるのはヴェードが可愛く見えるレベルのおっさん集団ばかりなのだ。

正しく筋肉ダルマな男が大半を占め、そうでないものもヤクザのような雰囲気を漂わせている。

中身はいい人なのかもしれないがあの見た目で積極的に近づこうとは思わねえなあ…


その中を進んでカウンターまで行くと、

この空間ではかなり異質な存在感を放つ綺麗な女性がいた。


「よお。姉さん」

「あら、ヴェード。今日はどんな要件?昨日の依頼の達成報告かしら?」

「ああ、それもあるがこの2人の冒険者登録お願いできるか?

ちょうど昨日ここに来たみたいでよ」

「あら何、いつの間に子供を?」

「俺の子供じゃねえよ。とりあえず知り合いだ」

「なんだつまんない。じゃああなたたち2人はこっちに来てくれるかしら?

奥で冒険者登録するからね。ヴェードはそれやってる間に昨日の依頼報告済ませちゃいなさい」

「ああ。じゃあそういうことだから、奥にいって冒険者登録終わらせちまってくれ。

俺はここにいるからあとで合流しよう」

「分かった。行くぞアズサ」

「言われなくても分かってるわ」


そう言ってヴェードと別れ、奥へと通された俺たち。

相変わらずものすごい威圧感のおっさんたちがいるが

案内してくれるのが綺麗な女性なので多少緩和されている。


「それでは冒険者登録始めるわね。

じゃあまずはあなたたちの名前教えてくれるかしら?」

「私はアズサ。でこっちは…ゴウよ」

「…おい」

「…もう門兵に言っちゃったし変えたらおかしいでしょ…」


…ひでえ暴論だ…。だが、この際仕方ない。


「へえ、アズサさんにゴウ君ね。2人は冒険者が何か知ってるかしら?」

「いいえ。なんなのかは知ってますけど、詳しいことは」

「じゃあまずはそこの説明からね。

まず冒険者が何するかだけどこれは知ってるわよね?

冒険者っていうのは基本的に依頼掲示板に届く依頼をこなしていくことになるわ」


うん、まあそれはヴェードも言ってたし、なんか予想はついた。


「そこで依頼を受けて、書いてある内容を達成してこういうギルドに報告すれば報酬が入るってわけ。

依頼には色々あるわけなんだけど、当然危険度の高い依頼は報酬も多い。

でも私たちとしても、そういう依頼になり立て冒険者が突っ込んで死ぬのは見たくない。

で、それを解決するシステムとしてランクっていうのが導入されてるの。

危険度の高い依頼はランクが高くないと受けれないってわけ」


ランクかあ…。まあ確かに報酬しか見ずに突っ込んでく人もそうしないと出るわな。


「ランクっていうのは依頼を受けていけば少しずつ上がっていくわ。

つまり、簡単な依頼から初めて少しずつランクを上げていって

さらに難易度の高い依頼を受けていくって感じになるわね。

ここまでいいかしら?」


俺はとりあえず頷いておく。

まあ要するに最初は簡単な感じの依頼しか受けれねえよってことだよな?


「じゃあ続き。それで、冒険者になるとこのカード、

冒険者カードってやつね。が渡されるわ。

たぶん何度も言われてると思うけどこれを見せればどこの街にも入れてもらえるはずよ。

ギルドで見せれば冒険者のためのサービスもどこでも受けれるわ。

あとさっき言ったランクっていうのもこのカードの隅に書いてあるから

確認しておくといいわね。

…さてと。じゃあ基本事項の確認は終わり。

こっから登録の方に移るわね」


そう言うと大柄の男が座っていた席から立ち上がってこちらに歩いてきた。

かなりの剛毛で筋肉質で…ゴリラみたいだった。


「じゃあまずは物理的審査から。彼はその道のプロで

相手の攻撃からパワーや技術量を計測してE~Sで判定してくれるわ。

一般的な人ならCくらいってとこかしら?」

「ほう。今日は君たちか。それでは遠慮はいらん。

一発本気のパンチをお見舞いしてほしい。必ず本気でやるんだ。

そうしないとしっかり測定できないからな」


と言い張るゴリラさん。

…いや、ようするに殴れってことだよな…?


「じゃあ私からやるわ。殴ればいいのよね?」

「ああ、さあ思い切り来い。何、鍛えてるから殴られた痛みは

ほとんど感じない。遠慮はいらんぞ」

「…そう、なら遠慮なくっ!」


刹那、アズサの長い髪がなびいて

強烈なパンチがゴリラさんに叩き込まれる。

…アズサ運動できたんだな…


「…Cだな。いや、正直見くびっていたよ。

力は無いに等しいが、技術量が高い。やるじゃないか少女」

「C…普通ってことね。普通か…」

「…お前どこでそんな技術身に着けたんだ…?

素人じゃないよな今の」

「何。ただの護身術よ。大したことじゃないわ」


…割と大したことあると思うんだが…?


「じゃあ次はそこの少年。さあ来たまえ」

「おうよ」


その声と共に俺はゆっくりとそのゴリラさんへと近づいた。

そしてそのまま少し腰を落としてゆっくり腕を引いてゆく。


「はぁぁぁぁあああああ!!!」


破裂音のような打撃の一撃が辺りを包み込む。

俺の攻撃を喰らった男がそのまま3歩後ろに下がって膝をついた。


「げほっ、がはあ!いや、まさかこんなやつがいるとは思わなかった…!

Aランクだよ少年。この俺に傷を負わせるやつがいるとはな…!

いつかお前と本気で殴り合いしたいもんだな?」

「Aランク?マジで?」


…確かに本気だったんだが上から2番目ってそんなにやばいのか俺?


「…あなた今までどんな生活してきたわけ…?

何今の…。本気で部屋が揺れたかと思ったわよ…」

「いや別に、ただ昔1日10時間くらい鬼爺に訓練させられただけだ」

「…十分おかしいわよ。1日10時間って何者よあんた…」


せいぜい山の中で飛び回ってたくらいのもんだがなあ…?

そんなにおかしいんだろうか?


「それじゃあ次は魔力検査ね。魔力容量、すなわち体内にどれだけの魔力を溜めることができるかを調べるわ。当然多いほうが素質十分ってことになるわね。

じゃあこれ持ってみてちょうだいな」


お、待ってました魔法!

というわけで渡された青色の宝玉のようなものを持ってみたんだが…。

―――変化ねえな。


「…終わりか?何にも起こらねえぞ?」

「…えーと、君、非常に言いにくいんだけど…」

「だけど?」

「…君、魔法の素質…無いわ」

「…え?」


…何か絶望的なこと言われたような…?


「…すいません、もう一回お願いします」

「ああ、えーっと…。あなたに魔法は使えません」

「…嘘だああああああああああ!」


□□□□□□


「…えーあー、なんかごめんなさいね」

「いえ、構いません。勝手に落ち込んでるだけだし」


私は今部屋の隅でいじけているゴウを片目にそう言う。

…確かにあそこまで魅力的な物が使えないっていうのは微妙に同情するけど。


「じゃあ次はあなたね。はいこれ、持ってみて」

「ええ、…これでいいかしら?」


というわけで私も青い宝玉を持ってみたのだが…

…何も起こる様子が…?


「きゃあ!?」


―――突然部屋中が真っ白に染まる。

色が全てが白に染まって辺りの空間が音をたてて軋む。

すさまじい風圧が辺りの空間を支配し色々な物が飛び散ってゆく――


パリンッ!


気持ちいいほどの音をたてて手の中の重みがスッと消え去る。

それと共に部屋の色が少しずつ戻ってくる。


「…」

「…」

「…えっと…?」


…誰か何か答えてほしい。

不安になるじゃないか。


「え、えっと、えっとね。

ごめんなさい、あまりにもありえないことだったから驚いて…」

「…?どういう?」


…告げられた内容は、私の想像の遥か上に行っていた。


「…あなたの魔法力は測定値オーバー。

ランクで言うならSの上のSSとでも言おうかしら…

…端的に言うなら、規格外の魔力よ。御嬢さん」



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