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僕らのヒーロー  作者: 狐 鉄
ヒーロー登場!?
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ヒーロー登場!

初登校から二週間が経った。今では通り慣れた道を進み、僕は高校へ向かう。

県立星見台(ほしみだい)高校。通称、星見だ。総生徒数四八〇人ほど。正確には、四七七人。覚えたわけではなく、昨日見た高校の概要に書かれていただけだ。

星見台は、高校の建っている地域の名前で、この辺りは星見台町と言う。特産物は何だったか忘れたが、星を見るには最適な場所なのか、そんな名前がつけられたらしい。

星見台町には、特別な法律のようなものがあり、街灯が無い。星を見るためには、他の明かりが邪魔をするから、と言うことらしいのだが、正直、コンビニや二十四時間の店、民家などが着ける明かりが邪魔をしているのも確かだ。もしも、それを取り締まってしまったら、町の存続も出来ないからだろう。

高校の門を通りすぎ、校内へ入る。数人の生徒が挨拶をしてくる。「おはよう」

僕も、それには返した。「おはよう」

クラスは、一年二組。挨拶をしてくれたのは、クラスメイトの佐野崎、阿部、加藤、條原だ。クラスメイトの名字ぐらいは流石に覚えたが、名前までは厳しい。

下駄箱で靴を脱ぎ、上履きへ履き替える。

教室は、渡り廊下を渡った先、第二校舎の一階だ。

教室へ着くと、自分の席に座り、周りを眺める。ホームルーム開始まで、後十五分。クラスの半分ほどはすでに登校していて、誰かと話したり、寝ていたりする。

趣味も無く、これと言って興味のあることが無い僕にとって、一日は長く感じた。だけれども、振り返ってみると短く感じるものだ。今日も、いつも通り平常運転だった。

……あの時までは。


天候、雨。

予備の傘は便利だと、この時まで思わなかった。いつも鞄に入れておいた折り畳み傘も、たまには雨に濡れさせてやらなければ。

家までは近い、だから二十分ほどで家につくはずだったのだ。だが、そうはならなかった。

「おい、金出せや」

カツアゲとは、こんなに雑な物言いだっただろうか。いや、そんなことはないだろう。もっとマイルドに、回りくどくかつ分かりやすくと言う丁寧なもののはずだ。

「ぼ、僕は、お、お金、なんて……」

と思っていても、恐いものは恐い。

相手は他校の生徒だ。制服が学ランではなくブレザーだ。紋章を見れば分かると思ったが、何校かはさっぱり分からない。校章なんて、どこでも同じに見える。

他校の生徒が、僕の学ランをまさぐり、大事なお小遣い入れであるがま口を見つけ出した。

「は?」

他校の生徒が声を出す。それには反論も何もしない。僕のがま口を見ればそんな声が出るのも当たり前だ。

男の手に乗った、僕のがま口の中身。四十三円。十円玉三枚、五円玉二枚と一円玉三枚に、ゲームセンターのメダルが一枚。それだけだ。

男の手に力がこもり、僕の体が浮くのを感じた。息苦しくて辛い。

「てめ、ただじゃ済まさねぇぞ」

もう、ただでは済んでいない。苦しくて言葉も出なかった。

このまま気絶するのは嫌だな……。

四十三円が地面にばらまかれる、と。

「待ちたまえ!」

声がした。

「イジメはよくないぞ!見苦しいぞ!」

「んだてめぇ!」

僕は、首を動かすこともできず、見ることは出来なかった。

突然、視界から男が消えて、僕は地面に尻餅をついた。

「大丈夫か?少年」

と、手が差しのべられる。

見れば、赤い仮面と赤いマント、下には星見台高校の制服を来た人がいた。制服から女の子だとは分かるが、誰かは分からない。

「ありがとうございます。助かりました」

手を取り体を起こしてもらう。ズボンについた砂ぼこりを払うと、男の呻き声が聞こえて来たのでそちらを向く。男が完全にノビていた。

仮面を着けた女の子は、四十三円と一枚のメダルを拾い、僕に渡してくれる。

「あの、どちら様でしょうか?」

ばか正直に聞いてみる。

仮面を着けた女の子は、手を前に出し、ポーズを決める。僕が幼少期に見ていた戦隊ものヒーローに似たポーズだ。

「私はヒーローだ!」

この日から、僕の人生は変わっていく。ヒーローとの出会いは、僕に新しい生き方を教えてくれた。

「えーっと……」

僕は頬を掻く。

「誰?」


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