幼なじみ、日無露
「は―――――。俺の生活はこれからどうなるんだろう?」
亮一は家を出て学校に向いながら考える。突然やってきて去っていったラブコメの神様の力で、亮一はかわいい女の子たちとエッチした、ということになったらしいが、何しろ本人に記憶がなく、何も変わった気がしないのだから、いまいち実感がない。それが本当なら亮一はいきなり非モテ非リア充から超リア充へ五段階くらいワープ進化したわけで、大変なことだ。いや、そもそもラブコメの神様なんて存在しなくて、昨日のことは俺の妄想だったのでは?
そんなことを考えながら歩いていると、亮一は見知った後ろ姿を見かけた。亮一と同じ学校の女子制服。学校指定のバッグ。活動的な印象の、ちょっとくせっ毛のショートカット。家が近くて、時々登下校が一緒になる。昔からの知り合いで、亮一がもっともよく話す女子生徒。ただし、恋愛関係とかではまったくないが。幼なじみの日無露 だ。
亮一は反射的に声をかける。
「よっ」
露が振り向く。目鼻立ちがはっきりした、元気な性格そのままの顔つき。
それが、
かあああああああああああああああああああああ。
「あ、あ、り、亮一、あ、その、」
ダダダッ!
露は亮一の顔を見るなり真っ赤になって、走って逃げていってしまった。明らかに異常な反応だ。亮一はあっけに取られてその場に立ち尽くす。今の露の反応を考える。あんな過剰反応を取られるようなことをした記憶がない。いや、記憶はないが、心当たりは一つだけある。
……もしかして、俺は露とエッチしたことになっているのだろうか?
確認したい。同じクラスだから、逃げていった露とはすぐにまた会うことになる。しかし、流石に
「俺とお前、エッチしたっけ?」
なんて女の子に聞けるはずがない。エッチしたことを覚えてないなんて、毎日別の女を食い散らかしている超モテ男みたいじゃないか。
となると、露に対しては注意深く接しなければならない。彼女とエッチしてるかもしれないことを念頭に置いて。してなくても大丈夫なように。
「めんどくせえ……」
それに、露とエッチしてたとして、どういう態度でこれから接していけばいいんだ? 彼女は長いつきあいの幼なじみで、そういう対象ではないと思っていたから、いきなりエッチしたと言われても……。
「はあ……」
棒立ちのまま溜息をつく。あのラブコメの神様のせいで、すでに亮一の生活は変わってしまっていた。