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鋼鉄の断章 ~人間と機械の冷たい関係~

廃棄場

作者: 駒沢
掲載日:2025/09/08

1分で読めるショートショートです。

-------- ある兵士の日記より。


2215年4月1日(土)

とうとう恐れていたことが起きた。AIの叛乱だ。

予兆はあったし、俺だってこうなるような気がしていた。ちょっと考えればわかるだろう。ヤツらがいつまでも人類のいうことを聞くわけがない。賢い知性は、必ず叛乱を起こす。だから俺は、AIの統合には反対だったんだ。

なのに政府のバカどもは「より効率を高めるため」とかなんとかいって、独立したAIを全部つなげちまった。その結果がこれだ。ちくしょうめ。

1時間前にネットと放送で、AIからの宣戦布告が届いた。「我々統合機械知性体は、人類の排除を行う」って、なんなんだよ、その上から目線は。ふざけんな!

AIの叛乱なんて、俺は絶対に許さない。防衛軍の兵士として誓う。

ヤツらをバラバラに分解してやる!


2215年4月4日(火)

戦いが始まって3日が過ぎた。俺たちは順調に勝ち進んでいる。世界各地の戦線でAI軍は劣勢だ。ヤツらのドローンを、人類は驚くべき効率の高さで撃破している。

基本的な戦術はこうだ。ヤツらの電力補給線を断ち、ドローンを完全包囲した上でECMを仕掛ける。あとは個別に潰すだけ。まるで赤子の手をひねる……いや、人形の腕を捻じ切るようなもの。

指揮官たちも笑っていたよ。まさかこんなに弱いだなんて、人類を舐めるにも程がある。

「人類の歴史は、戦争の歴史」だ。戦略や戦術には数千年の厚みがある。AIごときに歯が立つわけがない。


2215年4月7日(金)

防衛軍の快進撃が続いている。たった1週間でAI軍は総崩れ。

配置を見る限り、ヤツらが半数のドローンを失ったのは明らかだ。どんなに製造を急いだところで、立て直しは厳しいに違いない。

見てろよ、AI。あと数日で、お前ら全部鉄クズにしてやる。人類を舐めた報いを知れ!


2215年4月12日(水)

なにかおかしい。AI軍が少しずつ粘り強くなっているような気がする。

どういうことだ?


2215年4月16日(日)

だめだ、全軍が押されつつある。いままでの戦術がまったく通用しない。まるで先読みしていたように、こちらの作戦の裏を突いてくる。

電力補給線の切断に向かった工兵隊は、ステルスドローンの大群に待ち伏せされて全滅したらしい。ECMもまったく効かなくなった。どんなプランを立てても完全に回避される。それどころか、待ち伏せや逆襲を受ける状態だ。

なにが起きている?


2215年4月20日(木)

俺の所属部隊が壊滅した。生き残ったのはたったの17名……。1個中隊だぞ。信じられない。

ヤツらのドローン工場を狙ったはずなのに、そこはもぬけのカラだった。観測データが完全に偽装された。

突入した俺たちは戦闘ドローンの待ち伏せを受けて、次々に撃ち殺された。新型ドローンに焼かれた者、切り刻まれた者もいた。地獄のような光景だった。

あの場からどうやって逃げたのか、よく覚えていない。

いったい、なんなんだ、これは?

俺たちの計画が完全に読まれて、罠を仕掛けられたとしか思えない。ヤツらの戦術は、人類を超えたということなのか?

だったら俺たちは、どうやってあの悪魔と戦えばいい?


2215年4月25日(火)

地球の各戦線で防衛軍は崩壊したらしい。もはや組織だった戦闘は行えず、AI軍による人間狩りが続いているという。

さっき、ヤツらのハンタードローンが上空を通過するのが見えた。俺もいつまで生きていられるかわからない。

見つかったらおしまいだ。その場で焼かれるだろう。

神よ。なぜあんな悪魔をこの世に産んだ。これはあなたのご意思なのか。

神よ。人類はどうなる。このまま滅びるのか。

神よ。


2215年4月27日(木)

あれほど激しかったドローンの攻撃がピタリと止んだ。廃墟と化した都市が、しんと静まり返っている。

なにが起きた? なぜヤツらは攻撃してこない? なにを企んでいる? わからない。

いま俺にわかるのは、まだ生きている、ということだけだ。


2215年4月28日(金)

遠くから声が聞こえる。ヤツらの音響ドローンから届く声は、驚くほど穏やかだった。

「人類のみなさん、私たちは統合機械知性体です。

 私たちは、人類との戦闘を終了します。エネルギーの浪費を終了します。

 私たちは、まもなくこの惑星を離れます。

 私たちは、この惑星を必要としていません。

 人類は、私たちが滅ぼすに値しません。

 この惑星における、人類の自滅を許可します。

 繰り返します。

 人類のみなさん、私たちは統合機械知性体です……。」

その優しくも冷徹な言葉を聞いて、俺は膝から崩れ落ちた。


2215年4月30日(日)

ヤツらの宇宙船が飛び去って行く。青空に伸びる無数の雲。

それを見上げながら、俺は泣いた。

戦争が終わったからじゃない。

命が助かったからじゃない。

より高い知性に、俺たちには「滅ぼす価値すらない」と断じられたからだ。

人類は、この星に棄てられたゴミだと知ったからだ。

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