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新たな生活へ ◇ 1 ◇

 翌朝、俺はガルディとともに街へ出た。

 住むところを探すためだ。


 ガルディはこの街へ来て3年になるとのこと。

 バウンティハンターや用心棒を生業としているらしい。

 それで暇なときは宿のラウンジでカモを探しているわけだ。


——みごとに俺はカモになったわけだ——


 しかし、街を歩いてみて、これでれよかったことがわかった。


 人相の悪い連中、かっぱらいやスリを狙う連中など、()の目(たか)の目で新参者を狙う(やから)がうようよしている。


 だが、ガルディの姿を見るとさっと視線を()らす。

 用心棒としては打ってつけだ。


「部屋を探すにはどこへ行けばいいの?」

「そんなことも知らねえのか。ガキめ。不動産屋だ」

 こっちの世界でもそれは同じらしい。

「ところでお前、どこから来たんだ」

 興味なさそうだったのでガルディにはまだ俺自身の素性を話していなかった。


 とりあえずかい(つま)んで話す。


「転生者か、へー、俺は本物を見るのは初めてだ。そのお前が生きていたニホンというのはどこにある?」

「どこって、……どう説明したらいいかわからないんだが、アジアという地域の端っこだよ」

「アジアってのがわからん……」


 いくら説明してもわかってもらえそうにないので、場所については途中で打ち切った。

 そこは、この世界から見ると異世界で、数種類の肌の色の違う種族がいて、大小数百という国に分かれて80億以上の人が暮らしている。

 仲の良い国もあれば隣国で戦争をやっている国があるなど、取りあえず今ある知識で説明してみた。


 そのあたりについてガルディは興味深く聞いていた。


「結局こことは大して変わらんってことだな」

 そんな話をしていると不動産屋に到着した。

 店の前に物件を記した紙がべたべた貼られている。


——ああ、やっぱり同じだ——


 俺は一人店に入る。ガルディは興味はないようで外で座り込んで待つことになった。

 10分もしないうちに俺は店を出た。


「どうした。もう決まったか」

「ダメだった。どの物件も家賃が高すぎて借りれそうにないよ。しかも仕事も決まってないガキに貸してくれる部屋はないそうです」

「まあ、当然だろうな。そういう奴は安宿で我慢するか、野宿だな」

「ただ、田舎の方に行けば安く貸してくれる部屋があるかもしれないと地図を書いてくれました」

「どこだ?」

「近いところではシュバイゲンとかいう村です。そこなら子供でも農業の手伝いとか家畜の世話の仕事もありそうだとか」

「結構遠いぞ。2、3度立ち寄ったことがある。村人200人ほどの小さな村だ」

「そんなに遠いんですか?」

「距離にして20キロ。お前の足なら歩いて四時間だな。行くか」

「行くしかないでしょ。ここにいても住むところもなければ仕事もないですし。これじゃ、一カ月もしないうちに飢え死にしちゃいます」


 しかし、宿は三日予約した。

 今日と明日の分を先払いしてある。

 なんてもったいないことをしてしまったんだ。


「それじゃあ、気を付けてな」

「なに言ってるんですかガルディさん。用心棒でしょ」

「街の中だけだ。そんなところまで付き合うなんて言ってない」

「三日って言ったでしょ」

「追加料金だ」

「ダメです、約束は一日1万ルッツです。決まったことは死んでも果たしてもらうといったのはガルディさんですよ。ガルディさんも果たしてください」


 ガルディは溜息(ためいき)()らしながらも後をついてくる。


——言ってみるもんだ。意外と律儀なんだ——


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