俺、エルンです。
俺のこの世界での名前はエルンスト・ラインハルトに決まった。
確かにイケメン風の名前だ。SNSだったら、この名前だけで登録者数激増だ。
年齢は16歳希望だったが、この身体は8歳か9歳……9歳ということにしておこう。
小学校三年生くらいだ。
身長145センチ、髪はブロンドのロン毛。
瞳は瑠璃色。取りあえずこの年ではイケメン。
しかし、妙な気分だ。
今はまだ前世の面立ちが残っているが、いずれ容姿も完全にこちらの世界の人たちに似てくるとのこと。
いずれ16歳になるのだし、背も伸びるだろうからこれでよしとする。
名前と年齢が変わると気分まで変わるようだ。
これは神によるものか自分自身の心理的なものかはわからない。
でも、罪業の柩とは……この世界を根底から覆す?
手にあるのはその箱の鍵ということか?
——俺は、世界を根底から覆す鍵を握っているということか……。俺は支配者か? よくわからんが……——
もう少し説明があってもいいと思うのだが。
「とりあえず、今日は近くの宿に泊まって、明日からゆっくりと住まいを探すといい。そして仕事も……決まったら必ず役所へ届けること。ところで、君、何のスキルがあるの?」
公園で爺さんにも聞かれたが、スキルと言われても……異世界に来ると何らかのスキルが備わるものらしいが、特に何かができる感じはしない。
手を広げて念じても火も水も出る気配はない。
神の爺ぃさんに「特別な能力を与えてやる」といわれたが、それが何か聞いていない。
あの爺ぃに騙されたか。
「スキルがないと苦労するよ。取りあえず。職安へ行ってみることだね。そこでスキルテストが受けられる。その結果を見て仕事を探すといい。行くいかないは自由だけどね。間違っても冒険者にはならないように。異世界から来た者は冒険者に憧れを持っているようだけど、死に急ぐようなものだからね」
役所を出るとき、異世界転生のお祝い金として30万ルッツが手渡された。
ルッツというのはこちらの貨幣単位だとのこと。
この金で生活の基盤を整え、後は勝手に暮らせということだ。
役所にとってもこれで厄介払いができるわけだから安いものなのだろう。
異世界から転生者が突然やってきて、無一文のまま、犯罪にでも手を染められたら堪ったものではないから、身元を確認したのち、当分の生活費を渡して紐付けしておくというのが本来の目的なのだ。
——意外と無慈悲な世界なのかもしれない——
役人は親切そうではあるが、総合的に判断すると、手っ取り早く厄介払いされた印象だ。
最後に何か手渡された、見るとこの世界での心得が書かれた小冊子と、この世界で不審者と思われないための青いローブと揃いのウイザードハットが折りたたまれて入っていた。
取りあえず魔法使いという設定なのだろう。
でも安っぽい。
貰ったのだから素早くローブを羽織る。ウイザードハットを被る。
ハロウィーンみたいだ。
だが、好奇の目に晒されるのもごめんだ。
でも、これって逆に目立ってない?