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新しい魔法の開発とピリピリ種の揚げ鶏(2)

 リーリオの指揮の下、調理が始まった。レティセンとナバーはピリピリ種の黄色と赤をすり鉢で潰し、シオンちゃんは自分のセンスでサラダを作り始める。みじん切りにしていくキャベツの側に塩が置いてあるけど、シオンちゃんは何するつもり?


 そして俺はリーリオと共に、熱を見る魔法の訓練だ。倒れても大丈夫なように椅子を持ち込んで、中央の作業台に置いたお湯を張った片手鍋の前で深呼吸をした。


「ははっ、そんな緊張しなくても。いきなり成功するワケないだろう?」

「……それは、そうだけどな?」


 そんないきなり現実を突きつけなくても。いつも塩対応してる仕返しか、そうか。

 まぁおかげで緊張は少しほぐれた。やってみるか。


 周りに熱属性の魔法使いが誰一人としていない環境は変わっていない。故に自分で訓練方法を探すことには慣れている。今回はひとまず、目に魔力を込めて、熱を見る意識をしてみよう。


 いつもは手に集める魔力を、瞼を閉じた両目に寄せて。熱を色分けするイメージをする。高温から順に白→赤→黄色→青→黒。グラデーションを付けてピンクや緑にも色付くように。

 さぁ見てみよう。いざ、開眼!


「……」

「どう? 出来た?」

「なんにも。いつもの光景」


 こんなに失敗するんかってくらい何も起きてない。なのにちょっとずつ力が消費されてる感じはする。瞼を下ろして解除っと。


「何が原因だ……? リーリオ、リーリオが熱を見る時は、何を意識してる?」

「意識かぁ。あまりしたことは無いんだけど……」


 そういや、コイツにとっては身体能力って言ってたな。歩いたり泳いだりと変わらないって。そりゃ意識しないか。

 それでも考えてくれるリーリオは、顎に当てていた手で人差し指を立てた。


「そうだね、移動中に色分けされた世界を見ていると言ったよね」

「あぁ。だから俺も高温から白、赤、黄、青、黒の順に色分けをしたイメージを持って魔法を使った」

「なるほど、いいね。じゃあ、その下限と上限は?」

「……下限と上限?」


 わざわざ、限りを付けるのか? ……いや、待てよ? 確かに、欲しい温度以外に色が付いてたって、しょうがないのか。


「私の目はおじいちゃんである大蛇からの遺伝。熱から欲しい情報は、『獲物がいるかどうか』。だからそれが一番見えるように進化したんだ」

「なるほど。体温が一番目立つように、そもそも上限が定まっているという事か」


 明確な目的があって手に入れた能力だから、見たい温度は決まっていたってわけね。うーん、1からのスタートである俺には、一朝一夕で手に入れられるもんじゃないな、コレ。


「ならまずは水の温度を変えての練習だな。分かりやすいのは、凍り始める水を0、沸騰した水を100とする条件付けだな。数字で表しやすいしな」

「そうだね。……練習方法に、私が口出しするのも変だけど」


 そういうのも慣れてる。見守ってくれるだけ有り難い。


「誰かの同意があるだけで心持ちが違うさ。俺はのんびり訓練するから、また1か月後に成長を見てくれ」

「了解、楽しみにしてるよ。それで、0と100を決めたわけだけど、どういう風に訓練するんだい?」

「それは、こうかな」


 リーリオからの質問に答える為に、片手鍋に入ったお湯に手を翳す。

 「沸騰しろ」と呪文を唱えて沸かし直し、閉じた目に魔力を集めながらしっかりとイメージする。

 沸騰したお湯は、上限の白。100とする。そうだ、呪文を唱えないと。決まった型なんて無い。ただ、結果がこうあって欲しいと願望を込めて。


「水が沸騰する熱よ。俺の目に白く色づけ」


 いつもより長く、具体的な詠唱。着飾った言葉でカッコつけたりしない。ただ一直線に、結果を求める言葉を並べる。両目により魔力が集中した気がする。

 息を吸って、吐いて。気合を入れて、目を開けた!


 カッ!!


「うわっ!? まぶしっ!?」

「光らせちゃったの?」


 鍋からの輝きを直視してしまって、思わず用意してた椅子に腰を落とした。目が、目がぁ……!


「ちょっとフェルティくん、大丈夫!?」

「あ、あぁ……」


 目をしぱしぱさせて中の光を散らしてたら、シオンちゃんが駆け寄ってきて心配してくれた。男の余裕を見せたいところなのに、くらんだ目から魔力を抜く方が急務で、それどころじゃなかった。あー、魔力を抜くと顔の周りが涼しー。……それだけ、無駄に魔力を集めて使ったって事か。ってことはよ、熱を見るのに魔力消費は大きくないってことだな。転んでもただでは起きんぞ。


「ふう、張り切りすぎたよ。でも、確かに色づいて見えたし、普段魔法を使う時より消費が控えめってのも分かった。意外と練習しやすいかもしれない」

「そう……でも、無理しないでね」

「うん。今日はここで止めとくよ」

「そうね、そうして」


 倒れてシオンちゃんを泣かせるのは許せないからな。油の温度を見るのは、また次の機会にしよう。


 カウンターに椅子を戻してキッチンに帰ってきたら、ピリピリ種をすり潰していたナバーが、まだ湯気が上がる片手鍋の前に居た。悪い予感がすると思った矢先、ナバーがお湯に手を翳して、言った。


「水が沸騰する熱よ。俺の目に白く色づけ。……そぉい!」

「どうだい? 眩しい?」

「全然! 魔法が発動した気配も無い! なんか絶対に無理な気がしてる!」

「やっぱり水属性は温度を見るのは難しいのかもね」


 あー良かった! 熱属性の優位性は保たれた!

 胸をなでおろして、ふと視線を感じたから目をやったら、レティセンがふっと顔を逸らした。……見られたかぁ。弟子が失敗してるとこ見て、安心してる、情けない師匠の姿。


 まぁ、でも、しょうがないじゃん? 水属性が氷を作れるようになったから、せっかく「氷を作れる」で上げた熱属性の価値が下がってたんだから。


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