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わだかまりを溶かすシャーベット(1)

シオン視点

 10月17日、金曜日。日が傾き始め、気の早い家から明かりが灯ってきた時間帯。フェルティくんたちが帰ってくる前にウチに来たナバーは、なんだかメソメソしてた。


「シオン姉ちゃ~ん! どーしよー!」

「何があったの。話してみてよ」

「うん……」


 顔色を白くさせてるナバーは、目に涙を溜めて事情を話してくれた。

 いわく、昨日『四属性』の2人に絡まれた時の捨て台詞で、「“ヴィシタンテ・エノールミ”の時に来なかったクセに!」って一旦だけど、それが一番刺さったのは十何年と帰ってきていなかったレティセンだった。って話みたい。あちゃー。


「こないだ、大活躍してたから、すっかり忘れてて……」

「まぁレティセンは出身領こそエノールミだけど、生まれ育ちはこの街じゃないって言ってたからねぇ。解体バイトに来たことはあったけど、水魔法で対処とかはしてなくて。で、18歳くらいからは風まかせの大鳥に入って世界を回ってたみたいだから、そりゃ戻ってこなかったわけよねぇ」

「そうなんだよなぁ……」


 優しい子だからねぇ。フェルティくんの受けた仕打ちに怒っていて、その原因がいざ目の前に現れたら、頭に血が昇っちゃったんだね。レティセンも気まずいだろうなぁ。まぁ大人だし、あっちは大丈夫でしょ。

 私が気にかけるべきは、反省して泣きべそをかいている、ナバーの心ね。


「大丈夫よ、なんて言ったって、気休めにもならないわよね。ナバーはどうしたいの?」

「うう……。まずは、謝りたい。でも、謝るだけってのが、なんか、怖くて……」

「お詫びの品を渡したら良いんじゃない? 間に挟むだけで緊張が違うわよ」

「そう、なんかな。でも、何あげたら喜んで、許してくれっかなぁ……?」

「なんでも受け入れてくれそうなところが、迷うわよねぇ。んー」


 あ、そうだ、閃いた。ついでにナバーを使っちゃおう。


「ねぇナバー、実は今日は、昨日迷惑をかけたお詫びで訓練するつもりはないってフェルティくん言ってたんだけどね」

「えっ、そうなの? 揚げもん何作んの?」

「それは調理までのお楽しみに! でね、ナバーとレティセンを2人にするために、私から2人にデザート作りの訓練を課そうと思います!」

「おお! 訓練ってことは、冷たいお菓子だな! あ、それも秘密、なんて言わないよな?」

「言わない言わない! 2人に作ってほしいのはね……」


 フェルティくんとレティセンが帰ってくるまでに、ナバーにレシピを教えた。これで、わだかまりが無くなればいいなぁ。



 台所で、中央の作業台にデザートの材料を並べる。指さし確認をして……。


「足りないものは後で足せばいっか」

「確認した意味は?」


 ナバーとコントみたいなことをしていたら、馬小屋の方が賑やかになった。2人と1頭が帰ってきたみたい! 一気に緊張しだしたナバーを引っ張ってリビングに出て、皆を出迎えた。


「お帰りなさい、フェルティくん、レティセン」


 目で馬のフランテブランカちゃんにもお疲れ様と労う後ろで、ナバーも2人に挨拶してた。してたんだけど、どこかぎこちない。その態度にフェルティくんは首を傾げ、レティセンは苦笑してた。やっぱり、大人は気にしてなさそうね。


「ねえレティセン。今日はナバーと一緒に冷たいデザートを作ってくれない? 材料はもう並べてあるし、ナバーにレシピは教えておいたから」

「あ、はい」

「えっシオンちゃん? 今日はお詫びとお仕置きで訓練無しに……」

「私が食べたくてお願いしたの! さ、私たちはまた美味しいのを揚げましょ!」

「そうだね。ダイエットはまた明日からだね」

「余計な事言わない!」


 ニヤついたフェルティくんの背中を叩いて、エプロンを掴んで台所に押し込んだ。意地悪なフェルティくんは、私にしかモテないんだからね?


 さて、今日作る揚げ物は、昨日と同じ、豚脂で揚げるトンカツ。挟むパンがオリーブオイルたっぷりのフォカッチャから、油が入ってないチャバタに変えただけ。豚脂の風味を削がないようにね。こら、ダイエット意識とか思っても言わないの。


 2度揚げするのと腹ペコさんたちを待たせないようにって、1度目の揚げ作業は済ませておいた。温め直しを兼ねた2度揚げの為にちょっと冷めた揚げ油を温めてる間に、薄切りにしたカボチャとニンジンを蒸し始める。

 ナバーとレティセンの方に目を向けると、ナバーがレティセンにレシピを説明していた。買っといてよかった、メンブリーのコンポート。瓶を回して眺めるレティセンは、説明が終わるとしっかり頷いて、瓶の蓋を開けた。

 2人で協力して、美味しいシャーベット、作ってね。


メンブリー

マルメロによく似た、自然たっぷり系のダンジョンにしか生えない植物の果実。甘くて爽やかな香りがし、生だと渋いしお腹を壊す毒があるが、よーく加熱すると毒が壊れて渋みも消えて甘くなる。エノールミ領の近くにも生えているため、冒険者なりたての子供が採取依頼でたくさん取ってくる。


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