罪の告白とカス(6)
実家に仕事で寄ったついでに、『四属性』の2人が今エノールミ領にいることを伝えた。
「……そう。教えてくれてありがとうね。道理で朝から胸がざわついていたわけね」
「今更のこのこやって来やがって。解体してやろうか」
「返り討ちだよ。アイツら負けが嫌いだから……」
物騒な企みをする父さんを少し本気で宥めたら、氷を納めて実家を出た。アイツらが手加減を今もできないなら、割と本気で死にかねない。あー、嫌いだ。
その後もいつも通り、取引先に氷を納めて、夕方まで仕事をして、帰路についた。
馬のテロホの上で揺られている道中、レティセンが前からやって来た。眉間にしわを寄せた申し訳なさそうな表情が、胸をざわつかせた。
「お疲れ様です、フェルティ師匠、バラト、テロホ」
「おつかれっす」
「おつかれ、レティセン。ナバーから聞いた。『四属性』の2人の相手をしてくれてたらしいな。疲れたろ、ありがとうな」
馬上から話し続けるのは失礼だろうと降りようとしたら、レティセンがそれを手で制止してきた。
「師匠、今すぐ自宅へ帰ってくれ」
そのあとに続いた言葉で、悪い予感が当たってしまった事実を、突きつけられた。
あー! 嫌い!!
テロホに安全かつ早い速度で走ってもらい、家の前に着いたら転がり込むように家に入った。凍らせ屋の受付を抜けて、住居部分のダイニングリビングへ入ると、気配の薄い人影2つがカウンター席に着いていた。クソがっ! 教えてない俺らの聖域に入り込むんじゃねぇよ!
「今すぐ出てけ、クソ野郎ども」
「はっはっは! そんな冷たいこと言うなって! 何も泊まろうとは言ってないぞー?」
「久しぶりねーフェルティ! 大きくなったわねぇ! さぁさぁ、5年ぶりなんだから、積もる話があるでしょう? お喋りしましょー!」
俺にはねぇよ。テメェらに崩してやる積もった話なんて。
「シオンちゃんに挨拶してくる」と言って、コートも脱がないままキッチンに入る。緊張と怒りで入ってこなかったが、ジュワジュワ、カラカラという揚がる音と、香ばしく肉の脂の甘くて香しい匂いがキッチンに充満していた。昨日知ったばかりの美味しいものが生産されている!
嬉しさと空腹と、アイツらにこれでトンカツを作ってやるのかという戸惑いで、少し気持ち悪くなってきた。多分、お腹空いたせい。
「お帰り、フェルティくん」
「ただいま、シオンちゃん……」
「ゴメンだけど、本当にゴメンだけどさ。あの2人の相手、しててくれる?」
「うん、シオンちゃんがそう言うなら。……でも、アイツらにトンカツは」
「大丈夫よ」
俺の不安と疑問の声に、シオンちゃんは安心させる言葉を被せた。
魔道竈の火にかけた、豚の脂身と皮から脂を抽出する揚げ物用鍋。その前に立ち、目を離さないシオンちゃんは、異様な雰囲気を纏っていた。
「私が、フェルティくんに不義理をしたあの2人に、まともなおもてなしをするわけないじゃない」
「シオンちゃん……!」
「ただ、もう少し掛かりそうなの。だから、リンドに何かされないか見張るのも兼ねて……」
「分かったよ。頑張ってくる。あ、でも、その前に追い出しても許してね」
「ふふっ、了解」
よし、追っ払っていい言質は取った! 変に引き延ばさなくていいぞ!
気合を入れてキッチンから出る。追い出せなくてもシオンちゃんが意趣返ししてくれるらしいから、それをモチベーションに相手してやるよ。お前らのな。
戻ってきて、カウンターの内側に立ったら、カウンターで頬杖をついたインシネラが気まずそうな顔をしていた。
「シオン、やっぱり俺らの事、よく思ってなかったんだな。良い時間だから夕食をご馳走してくれって言ったら家に案内してくれたから、てっきり……」
「盗み聞きしてんじゃねぇよ」
「聞こえちゃったんだもん、仕方ないでしょ?」
聞こえてても聞こえてなかったフリくらいしろや。
この夫婦、図々しいのは2人ともなんだが、よりそうなのはフルイルの方だ。俺に言葉を吐き捨てられても特に気にしてなさそうなのが、イラつく。
「確かに、フェルティにしたことは良くない事も多かったかもしれないけれど、もう貴方も大人じゃない?」
だから、時間も経ったから、いい加減水に流せって? 馬鹿がよ、そんな加害者に都合のいい話があるかよ。
「許さないのが子供だって言うなら、俺は永遠に子供でいい。大体、俺はアンタらの血縁者ってのがバレてるから、アンタらがデカい依頼を達成したって話が流れてくるたび、俺が嘲笑われんだよ」
「もう。嫌なら強くなればいいだけでしょー?」
「アンタらと同じ職になってたまるか」
このボケが。より比べられるって考えにストレートに繋がらないのなんなんだ。ダンジョンアタックで使う以外の脳みそはカッスカスなのか?
まぁそうだよな。火と風、水と地の魔法適性のある自分たちの子供なら、四属性の適性を持って生まれてくるとか安直すぎる発想が潰れないくらいには、軽い頭だもんな。




