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アロス・コン・ポジョとクロケタス・デ・アロス(5)

 ナバーが氷を無事に魔法で作れたのを見届けてから、油鍋を火にかけた。シオンちゃんが担当する、クロケタス・デ・アロスのバージョン1がそろそろ揚げられそうだからだ。早く揚げられるように熱魔法をちょちょいと。


 ハムの混ぜご飯でチーズを包んだタネに、小麦粉、溶き卵、パン粉を付ける。衣を付けた手のひらサイズのタネは皿にコロコロと乗せられる。


「ふう……。数を作るとけっこう大変ね」

「チーズを入れるなら力がいる作業だからね。でも上手だよ」

「そう? プロのシェフが褒めてくれるなら自信になるわ」


 中のチーズが漏れ出ないようにか、けっこう力強く握られるタネ。それは小麦粉や卵、パン粉の上を転がされても割れることも、ヒビが入ることもなかった。

 それを、それほど高くない温度までに温めた揚げ油に入れて揚げていく。


 シュワッ しゅわしゅわしゅわ…… パチパチパチ……!


 溢れないようにとビビったせいで、4つ入れてもタネは揚げ油に浸りきらなかった。トングの掴む平たい部分で油をかけつつ、優しく転がしながら揚げていく。やがて泡が落ち着き、カラカラと音が軽くなったら、金網バットに移して油を切る。いつも通りの美味しそうな揚げ上がりの色。思わず喉が鳴るな。


「よかった、チーズが漏れ出なくて」

「シオンちゃんが丁寧に丸めたからだよ」

「私が丁寧に衣を付けたおかげでもあるだろう?」

「ソーダナ」

「なんかまた冷たくないか君」

「ソンナコトナイゾー」


 ただし、これからシオンちゃんの口に入るすべての米料理は、俺の手で作ったものにする。ガルルルル。


 俺が第2陣を揚げ終えて取り上げる後ろでは、バージョン2のタネを冷やしていたレティセンとナバーが稽古を終わらせていた。ナバーがそれを濡らした手で細めの俵型にして、レティセンがそれを小麦粉、溶き卵、パン粉にくぐらせて衣を付けていく。見守っているリーリオは「楽させてもらっていいね」とか言っている。絶対ハラハラしてるだろうに。


「今日も熱さが強敵だったぜ。だからこそ、美味しく揚がるように、しっかり握らないとな」

「魔法で出した冷水で手を冷やしながら丸めてくれてるから、まず壊れないと思うよ。……勉強になるね」


 ナバーの自発的な行動に感心するリーリオ。バットの周りに冷水をくっつけてタネが緩くならないように冷やし続けているレティセンの事も感心してやれ。


 レティセンに協力してもらって、バージョン2のクロケタス・デ・アロスも揚げ終えた。クリーム成分が多めだから、いつ破裂するかハラハラしたが、被害は1つで済んだ。バチバチ言いながら油を跳ね散らかすのは悲鳴もんだった。


 生の千切りキャベツや、シオンちゃんが蒸かしてくれたジャガイモやかぼちゃ、ニンジンを皿に盛り付け、マヨネーズをスプーンでドバッと添えて。軽く温めて敷いたトマトソースの上に粗熱の取れたクロケタス・デ・アロスを1つずつ乗せたら、完成だ。


「パセリも揉んで散らしてっと」

「おぉ、一気に金が取れそうな見た目に!」

「揚げ物ってだけで元々お金取れるわよ、フェルティくん」

「確かに」


 くだらない話をしつつ、出来上がった皿をカウンターに持っていき、レティセンがカトラリーを用意してくれてたそこに並べていく。今日はジャガイモもあるし、クロケッタが米だからパンは無し。

 でかめのワンプレート1枚と、鶏の出汁と余ったキノコと玉ねぎで簡単に作ったスープ。コレが今日の夕飯だ。……あれ、肉が足りねぇな。


「いただきまーす!」


 肉が少ないことを気にしない、ご機嫌なナバーの挨拶に乗って、俺たちもディナーをいただく。

 野菜から食べた方が良いらしいとは聞くけれど、新作の揚げ物の味を早く知りたくて、茶色くて丸いバージョン1のクロケタス・デ・アロスにナイフを入れた。


 サクッザクッ カラカラ とろ~


 良い揚がり具合に、伸びるチーズの破壊力! つなぎの卵で黄色に色づいた米とハムが色のメリハリが合って食欲誘う。大きめの1口サイズに切って、ナイフにくっついてくるチーズをフォークで外したら、いよいよ1口!

 サクッ!と、もちもちと、とろ~りと! 衣の食感と卵とチーズのコクを纏った米、ハムの塩味。揚げてるのになんだかヘルシーな感じがする! うっまい!


「お米であっさりしてるんだけど、チーズやハムの油でコクもある。揚げなかったら何個でも食べられそう!」

「混ぜご飯の、握り飯? さらにヘルシーになって良いかもな!」

「揚げ物アイデンティティは……?」


 まぁまぁ、リーリオ。クロケタス・デ・アロスも美味しいから。

 ジャガイモで口の中の味をリセットしてから、バージョン2にも手を付ける。


 ザクッ! ぶわっ とろとろ~


 食べるまで決壊しないようにと長めに揚げたから、硬めになった衣。それをナイフで破れば、クリーム状になった米のタネが濃い湯気と共にとろとろと流れ出て、トマトソースと溶けあった。白と赤でおめでたいね。

 こちらも一口サイズにして、こぼれ出たクリームをかき集めて、ぱくっ! むは~! 鶏の出汁をよく吸い込んだ米も、雷呼茸とマッシュルームの出汁も旨いし、火の通った玉ねぎは甘いし、とろっとしたクリームがも舌触りをよくしてる! それをコショウがピリッと引き締めていて、食べ飽きなさそう。うっまぁ!


「トマトソースとの相性もいいし、揚げる意味もあるし、私はこっちが好き~!」

「俺も。刻んだキノコたちが食感でも出汁でも良い味出してて、クリームなのがいいね」


 でも……。静かに堪能してるレティセンもナバーも同じことを考えてるだろう。なんなら女性陣2人も。


「これは、前菜だな」

「簡単にお肉焼きましょうか」

「ステーキにしようぜ」


 幸い、それに適した豚肉があるからな。リーリオ、焼き方指南を頼んだ。


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