アロス・コン・ポジョとクロケタス・デ・アロス(4)
シオンちゃんにクロケタス・デ・アロスのバージョン1の手順を教えた後、リーリオは俺ら男衆に身体を向き直して、むふーっと息を漏らした。
「それじゃあ君たちには、バージョン2を説明しよう。玉ねぎとキノコをニンニクの香りを立たせたオリーブオイルで炒めたら、ごはん、牛乳、出汁を入れて一緒に煮込んで、リゾット状、またはもったりしたベシャメルソース状にするよ」
「べしゃめるそーす?」
「どこかの国のベシャメルさんが発明したソース。色んなソースや料理の下地になる便利なソースだよ」
「そーなんだ」
「続けるよ。味付けしたりチーズとかを加えたそれを冷ましたら、俵型に成型して、パン粉の衣を付けて揚げていくよ。……熱々だから、頑張ってね」
最後にニヤッと意地悪に笑ったリーリオに、ナバーとレティセンがむーっと口を締めた。一度倒れかけたから嫌なのは分かるが、頑張れよ。さすがに粗熱は放置で取らせてくれるって。
リゾットにするのはリーリオの仕事だ。具材を炒めて、ごはんと牛乳、鶏の出汁、塩を入れて軽く混ぜながら煮込む。5分ほど煮込んだらチーズを加えて溶けるまで煮込んで、トロッとしたらリゾットの完成!
「味見するかい?」
「はいはいはーい! リーリオのリゾット食べたーい!」
「了解。そっちの味見もさせてくれる?」
「お願いしまーす!」
シオンちゃんが、俺以外の奴の米料理を、食べる……? あ、やっば、すっごいジェラシー。腹が煮えくり返ってる。視界が赤くなってきた。俺って米料理をシオンちゃんにもてなすの、誇りがあったのか。
熱いのを冷ます目的もあって、それぞれ小皿に盛って、交換した。シオンちゃんは未使用のスプーンを使って、リーリオはとろみが無いからって皿を振って上向いた口に放り込むようにして。
「ん~! キノコの味がガツンと来て、牛乳とチーズでまろやかな口当たりで、鶏の出汁が追いかけてくる! 美味しい!」
「ふふ、ありがとう。シオンのもムラなく混ぜられて、ハムの肉感とチーズが効いて、良い感じだよ」
「ありがとー!」
カーーーーーー。リーリオに指導を受けながらでもいいから、俺がリゾットを作ればよかったーーーーー。でも、味見したリゾットは確かにキノコとチーズが効いていて、文句のつけようのない美味しさだった。
今日のリゾットはそれとして美味しくいただくものじゃなく、丸めて揚げるもの。だからここからリーリオは小麦粉を入れて混ぜて、ぽってりさせる。木べらで持ち上げるとぽっとり落ちるくらいの粘度になったら、フライパンからバットに移された。
「さぁ、君らの稽古の時間だよ!」
「湯気が落ち着いてからにしてくれよ! もわもわしてるぞ!」
「……粗熱は取れてからにしてくれ」
「あっはっは! 揶揄っただけさ」
やっぱりやりおったコイツ。今回から仕事じゃないからってやりたい放題だな。
ひとまずバットを周囲から冷やすための氷水を、協力してもう一回り大きいバットに用意したレティセンとナバー。今回は自分の魔法で生み出した冷水で冷やしているから以前より楽そうだが、冷水の中に置いたクロケッタのタネがずっと熱いから、水が熱くなるそばから冷やさないといけないのが大変そうだ。
「やっぱりコレ、大変だって……!」
「……慣れてはきたものの、だな」
それだけでも俺はハラハラしてるのに、リーリオは右手の人差し指を立てて、「あ、そうだ!」と良い笑顔で何かを閃いた。
「フェルティ、硬く絞った濡れ布巾と、蜜蝋ラップを用意できる?」
「あぁ、出来るが。何するつもりだ?」
「ほら、今のままだと下からは冷やせても表面はまだまだ熱いままだろう? その2つを敷いた上から氷や冷水を置けば、そちらも冷やせる。この急冷方法は領主館でもやってる手法だが、フェルティたちはやってないのか?」
「やってるっちゃ、やってるが……。まだ絶望させたくなくて」
現に、黙ってはいるが話は聞いていたレティセンとナバーの顔が青くなっている。熱くなる自分の水を冷やし続けるのは大変だからな。
「レティセン、ナバー。覚悟を決められたら、残り魔力との相談の上でやってみろよ」
とはいえ、出来ないことはないだろう。俺は濡れ布巾と蜜蝋ラップを取りに収納に向かった。
「あ、そういえばナバー。お前の兄貴のホージャスはこの急冷方法、普通にこなしてるらしいぞ」
「あのポーションラバーめ! 兄貴に水魔法関連で負けてたまるかー!」
天才の称号とか関係なく負けず嫌いを発揮してるの、子供って感じで可愛いなコイツ。布巾たちをバットに被せたらすぐさま氷を作ったし。魔力回復ポーションは布巾とかも入ってる収納の中にもしまってあるから、安心して頑張れ。あっちはさすがに氷は作れてないらしいから、負けてはねぇぞ。




