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アロス・コン・ポジョとクロケタス・デ・アロス(3)

 10月3日、金曜日。今月もオリーブオイルを貰える日を無事迎えられた。

 いつも通り領主館の氷室に氷を納品して、帰る為に馬小屋へと向かう。弟子のレティセン。幌馬車を牽いてくれる馬のフランテブランカ。そして、わざわざ休みを取って揚げ物指導をしてくれることになったシェフのリーリオ。少し肌寒くなってきたからか、レティセンとリーリオは薄めのセーターを羽織っていた。色違いのお揃いって、仲良しだな?


「待たせたな」

「あぁ、勿論待っていたさ。見せてもらおうか、甘いマヨネーズとやらの実力を」

「はいはい」


 なんか、ニアミスな気がする。何のニアミスだろう。

 近寄ってそのまま幌馬車に乗り込み、レティセンが指示を出してフランテブランカが走り出した後で、リーリオの言葉に応えた。


「聞いてるぞ。マルバ兄さんの店に行って、マヨネーズのレシピを聞き出したんだろ? レティセンからも聞いて、甘いマヨネーズの再現もしたって、いつの間にかマルバ兄さんの店でも提供しててビビったぞこっちは」

「美味しいものは広がっていかないとね。ま、そろそろ私もマルバさんもレシピの秘匿の時期になるかな」

「見せていい部分を作っとかないと、恨まれるぞ」

「そうだね。核になる材料だけは隠さないよ。そもそも元になるソースがあるわけだしね」


 そうだった。マルバがお客から聞いた別地域のマノルカソースから発展したものだった。アレンジした部分以外の情報は開かれてないとおかしいな。


「リーリオ、今回教えてくれる揚げ物のテーマは何だ?」

「テーマかぁ。余り物の活用、かな」

「まさしく家庭料理って感じか」

「さすがに今日は、一から作るけれどもね」


 美味しい食材が多くなる季節だ。欲張りすぎて食べきれないことも出てくるだろうから、この視点は助かるな。余り物が揚げたことでご馳走になるぞ。



 家に帰ってきて、フランテブランカに挨拶するリンドの鼻を撫でてから、ウチに入る。出迎えてくれたシオンちゃん、とナバーは例によってエプロンをしっかり身に着けていて、カウンター奥のキッチンからは米の炊けた良い香りがする。米なんだ。


「おかえりなさい、フェルティくん、レティセン、リーリオ」

「ただいま、シオンちゃん。お米炊いたんだね。リーリオの指示で?」

「ええ。本当はフェルティくんが炊いた方が美味しいんだけど、冷まさなきゃいけないらしくて」

「そっか。でも、シオンちゃんが炊いても美味しいんだから、気にしなくていいんだよ?」

「私は美味しいものが食べたいの」

「あははっ」


 思わず笑っちゃった。俺はシオンちゃんが作ってくれるならなんでも美味しいけど、料理した本人はそうでもないよね。分かる。


 水分補給と身支度を済ませたら、俺はシオンちゃんから、レティセンはナバーからエプロンを受け取り、リーリオはバスケットから取り出したエプロンをテキパキと身に着けた。そろってキッチンに入れば、鍋から皿に広げられた白米(アロス・ブランコ)がほのかに湯気を立てつつ、炊きたての甘い、温かい、何とも言えない美味しい香りを漂わせていた。

 リーリオが我が物顔でキッチンの中央部分に立ち、俺たちに対して自信満々な笑みを見せつける。


「今日教える揚げ物は、クロケタス・デ・アロス。お米のクロケッタだよ」

「お米の、クロケッタ」


 クリーム部分が少ないってことか? でも揚げやすそうだし、そもそも扱いやすそう。いいじゃん。


 材料は以下の通り。

バージョン1

・炊いた米

・卵

・塩こしょう

・粗みじんにしたハム

・刻み玉ねぎ

・粉チーズ

・伸びるチーズ

・パセリ


バージョン2

・炊いた米

・牛乳

・鶏の出汁

・小麦粉

・塩

・こしょう

・刻み玉ねぎ

・粗みじん雷呼茸

・粗みじんマッシュルーム

・刻みニンニク

・粉チーズ

・オリーブオイル


「2種類作るのか」

「今回のはご馳走というより余り物のリメイクがテーマだからね。パターンを多くしないと味気ないと思って」


 そうだった、そんなテーマだったな。白米はパエリアにしても美味しいかも。バージョン2は牛乳を使うってことはきっととろみがある。この間食べたアロス・コン・ポジョも余ったら転用出来るな。


「レティセン、ナバー。今日の揚げ物の作業工程に冷ます部分があるからね。よろしく!」

「やっぱそうだよなー」

「……クロケッタと聞いた時点で覚悟した」


 覚悟ってなんだお前ら。繰り返しの訓練は大事だわ。シオンちゃんが火傷しないように冷ませよ。


 2種類作るから、粗熱を取っていた白米を半分取り分ける。一つはボウルに、もう一つはそのまま。バージョン2、リゾット状にするらしいから本来は生米から煮込んだ方が美味しいんだろうけど、余り物の活用ってテーマだからな。知らんぷりだ。


 バージョン1は揚げる以外はもう火を使わず混ぜるだけだから、シオンちゃんにお任せする。

 ボウルに取り分けた白米に卵1個、小麦粉、塩コショウを加えて混ぜて、粗みじんにしたハム、刻み玉ねぎ、粉チーズを加えて更に混ぜる。それで伸びるチーズを包んで、パン粉衣を付けて揚げる。

 といった手順だとリーリオがシオンちゃんに説明していた。なるほど、簡単だ。クロケタス・デ・アロスに使う米は冷めてたっていいらしいし、これは白米を炊くとき、心配が減っていいな。


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