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アロス・コン・ポジョとクロケタス・デ・アロス(2)

 アロス・コン・ポジョ。鶏肉の煮込みごはんで使う材料は以下の通り。


・鶏もも肉 大きめの一口サイズにぶつ切り

・米(短粒種)

・玉ねぎ みじん切り

・ピーマン みじん切り

・トマト みじん切り

・ニンニク みじん切り

・オリーブオイル

・白ワイン

・鶏出汁

・パプリカパウダー

・ローリエ

・塩・コショウ


 シオンちゃんが下拵えしてくれてるから、後は油でそれぞれ炒めた後に鶏の出汁で煮込むくらい。それが鍋1つで完結するから良いよな。


 鉄鍋に油を敷いて、火にかける。鍋が温まったら塩コショウをしたぶつ切りの鶏肉を皮目から焼いていく。この段階で出る油と旨味が良いのよ。

 鶏肉を両面良い焼き色にしたら、肉を端に寄せて同じ鍋でみじん切りにした玉ねぎ・ピーマン・ニンニクを炒める。これらがしんなりしたら同じくみじん切りにしたトマトを入れて煮詰める。タネの部分を除く人もいるらしいが、ウチはそんな面倒なことはしない。


「う~ん、良い香りしてきた!」

「そっちもね。玉ねぎって、加熱するとシチューの香りになるよね」

「え? そう?」

「……俺は、そう思うかな」


 俺の隣ではシオンちゃんが鶏出汁の入った深めの鍋でスープを作っていた。薄切りにした玉ねぎをバラバラにして入れて、そばにはとろみをつける為の水溶き片栗粉がスタンバイしている。


「今日は溶き卵入れる?」

「あ、良いわね。卵は1個で良いわよね?」

「うん。お願いします」


 そう話してる間にもトマトから出た水分は蒸発して、そろそろスパイスの入れ頃だ。

 辛みは無いパプリカパウダーを入れて軽く炒めて、香りを出す。本格を目指すならサフランかターメリックを入れるが、無いので知らんぷり。

 香ってきたら白ワインを加えて、肉の臭みをアルコールと共に飛ばしつつ、旨味を凝縮させる。


「数少ない、ウチでの酒の活躍場面だな」

「節約したいから、お互いお酒も煙草もしない人間で助かったわね」

「広い家に住みたいもんな」


 もしどっちも嗜める人間だったとしても、シオンちゃんの為に止められる。でもお腹空きすぎちゃったから鶏肉の味見しよーっと。あっち、はふはふ、うっま。臭みの取れた鶏肉の旨い汁と、弾力のある食感が旨い。


「はいシオンちゃん、あーん♡」

「あーん♡ うん! 美味しい! 蹴破り鶏のもも肉は弾力合って美味しいわね!」

「あ、モンスターだったのか」


 蹴破り鶏。その名の通り、蹴りの威力が凄まじい鶏のモンスターだ。

 近所で言うと、山型ダンジョン近くの森に群棲していて、樹木とか岩とか別に破壊できないけど、人の骨くらいなら細ければ折れる。冒険者なりたての子供には強敵だが、警戒心は低いから後ろから抱えれば生け捕りにも出来る。ちなみに卵も美味しい。人が作った鳥小屋も活用してくれてるらしい。家畜化できたらいいのに。


 アルコールの香りがしなくなってきたら、生米を加えて軽く炒める。生米に油と細かい野菜が纏ったら、シオンちゃんがスープとして煮ているのと同じで、取り分けて冷やしておいた鶏出汁を加えて煮込む。冷水からってのが俺のこだわり。

 コレ、米の三倍量も入れるから、最初作り方を見た時はビビったよね。この出汁を米が全部吸いきれるの?って。

 さぁ、ローリエを一枚乗せて、中火でまずは10分煮込んでいこう。魔道竈があって本当に良かった。普通の竈だったら火加減の調節で離れられないからな。


 温まってきた鶏出汁のスープはシオンちゃんによって改めて塩で味が調えられて、水溶き片栗粉を注いでとろみをつけた。そのあと、水溶き片栗粉が入ってた器に卵を1つ割り入れて、フォークで溶いた。洗い物は少なければ少ないほどいいもんな。


「あ、マヨネーズ作って出た卵白でよかったじゃん」

「あらら。え、マヨネーズ作ってくれたんだ」

「うん。サラダに付けようと思って」

「やったー!」


 一応火を見ながら、皿洗いをして煮込み時間が過ぎるのを待つ。10分砂時計が落ちきっても、弱火にしてまた砂時計をひっくり返さないといけないけどな。

 にしても、良い香りがする。味見だけじゃ足りねぇよ。


「あ~、お腹空いた」

「火を止めても蓋して5分蒸らさないとだしね~」

「空腹はスパイス……空腹はスパイス……」

「サラダで用意してたにんじんスティック、食べとく?」

「食べる」


 なんか今日はあまりにもお腹がすくんで、フライングでニンジンをぽりぽり。シオンちゃんが今日作ってくれた出来立てマヨネーズをつけて、ぽりぽり。

 ほんの少しの土の香りと、にんじんらしい甘さ。骨を振動させる硬めの食感も美味しいし、卵黄多めのマヨネーズはとろっとなめらかで濃厚だ。明日の朝ご飯は卵白オムレツかな。


「生のニンジンを喜んで食べるなんて、うさぎさんみたいねぇ」

「頭撫でていいよ」

「可愛いうさぎさんだったわね。よしよし」


 シオンちゃんの前ではなー。ぽりぽりぽり。



 蒸らし時間も終えて、味を見て塩と胡椒で整える。米は柔らかめで、鶏や野菜の旨味をしっかり吸っている。スープは少し残ってるくらいがアロス・コン・ポジョらしい。

 最後にオーブンで焼いて香ばしさを出したいところではあるが、空腹がそろそろ限界なので、皿に盛り付けて、さぁ、食べよう!


 今日のディナーは、アロス・コン・ポジョと鶏出汁と玉ねぎのスープ。生の細切りニンジンにマヨネーズを添えて(シオンちゃんのみ)。


「「いただきます」」


 命に感謝したら、アロス・コン・ポジョに手を付ける。スプーンで救い上げ、湯気が立つそれにふー、ふー、と息を吹きかけ冷まして、一口。


 ふわっ とろっ むぎゅっむぎゅっ! 


 一度焼いて香ばしくなった鶏と甘味も出てきた野菜たちの香り! とろっとしたスープを纏った米のクリーミーな口当たり! 噛むと歯を跳ね返す鶏肉の弾力! 舌に、口内に、炒めて引き出した野菜たちと鶏の出汁の旨味が爆発する!


「我ながら美味しくできた!」

「最高よ~! フェルティくんの作る米料理はどんなお店よりも美味しいわ!」

「シオンちゃんがやってくれた下拵えのおかげだって。でもありがとう」


 特に強いこだわりだってないから、美味しくなる要素があるとしたら下拵えと、肉屋での丁寧な肉の処理、そして俺からのシオンちゃんへの大きな愛だな。


「料理といえば、もうすぐオリーブオイルの日ね。リーリオはどんな新しい揚げ物を教えてくれるのかしら」

「そうだな。ウツボも無くなって肉の供給も普段通りになって来たし、野菜も旬が変わってきた。ズッキーニとか、かぼちゃとか、キノコとか?」

「なるほどね! たしかにキノコは美味しそう! どうしよう、明日キノコの揚げ物しちゃう?」

「いいね。またリーリオを揶揄ってやろうぜ」


 夫婦そろって悪い笑顔をしながら、夕食を食べ進めた。スープも玉ねぎの甘さが際立っていて美味しかった。


アロス・コン・ポジョ

スペインの家庭的米料理。汁気はパエリアよりあって、リゾットよりは無い。中南米のものはスパイスの種類やビールを使っているなど、より濃厚でスパイシーであり、味わいが違う。

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