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兄ちゃん’sのポーション作りと勧誘(2)

 ベンチ付きテーブルに腰掛け、ホージャスから預かったザルの上で根っこ付きの癒し草から葉っぱと根を丁寧にブチブチと千切って仕分ける。鋏だと刃の鉄分と反応してポーションの質が下がるらしい。おかげで爪が黒くなる。


 今預かったこのザルは活力回復ポーション用だから、他にはホジャデアホ、ジンギブレー、ペレジール(ポーション用に気取って言っているが、つまり葉ニンニク、ショウガ、パセリのこと)があり、それぞれちぎったり麺棒で叩いて砕いたりして下処理をする。

 魔力回復ポーションにはここに傘が薄い紫色のマヒア茸を裂いて追加。


 これらを魔石の出汁にタイミングを見てそれぞれ入れていく。ほぼスープ料理だが、素材の相性なんて効果以外ガン無視。だから下級なんて味がメチャクチャなのが普通だ。特に今日のは俺たちの個人使用だからな。効果がありゃいいんだよ。



 急げ、急げ。あと10分しかない。

 癒し草の根を麺棒で叩いて繊維にして、ジンギブレー(しょうが)も砕いて、マヒア茸を裂いて……。


 男2人、テーブルの椅子に対面で腰掛け、ザル2つ分の素材の下拵えする。それが出来た頃、ポーション釜の水が沸いてきた。鍋底からふつふつと、小さな気泡が現れている。


「そろそろじゃないか?」

「そうだね。ウティリザ、活力回復の方をお願いできる?」

「了解」


 今日作るのは薬師ギルドに納品するものじゃなくて、俺たちしか飲まないやつ。

 両方のポーション釜にまず入れられるのは、癒し草の潰した根っこ。俺が任せられた左と、ホージャスの担当の右に砕いたジンギブレー(しょうが)を入れた。

 活力回復は最悪劣級でもいいが、魔力回復は下級であってほしい。だからほぼ同じ材料でも、俺が制作に手を出せるのは活力回復だけ。クオリティが下がって困るのは俺たちだからな。


 ここから10分、ふつふつ状態を保って煮込んでいく。ボコボコと沸かないように火加減を見たり、危なくなったら鍋を竈の上の台に避難させたりと、さほど目が離せない時間が続いていく。ま、大半は暇なんだけどな。

 ホージャスのロッカーからポーション瓶を仕舞った12個の仕切り付き木箱を4箱、中庭のテーブルまで運び出したら、休憩に入った。


「スーーー……はぁーー」

「はたから見たらあぶねぇことすんな」


 中庭のベンチに腰掛けたホージャスが、裂いたマヒア茸の断面に鼻を当てて、大きく吸った。怖いって。確かに土の香りの中に旨そうな香りがするけどよ、何度見ても慣れねぇよ。


「だって、最高の香りなんだもん。干したマヒア茸も香り高いけど、生の香りは今の時期しか嗅げないじゃん? そりゃ胸いっぱいに吸いたいよ。ッスーーー」

「吸うなって言ってねぇよ。人目を気にしろって言ってんの」

「気にしてる方がアブナイもの吸ってるっぽくなるじゃん」

「……」


 確かに。

 それに、ここはポーション職人養成教室だし、素材の香りを嗅ぐくらい普通……いや、二階の座学教室からこっち見てるやつが、ホージャスをヤベェ奴を見る目してるって。だから白目剥くな。


「スゥーーー……はぁ。ありがとうね、ウティリザ」

「あん?」

「あの時、違和感たっぷりでもここに戻るのを決行してくれて」

「……俺に面倒な役割を押し付けやがってよぉー」

「あははっ、ありがとね」


 “あの時”ってのは、ホージャスがフェルティに弟子入りした後、揚げ物をご馳走してもらったあの日の事だ。

 まだロクに教わってないのにヒエリバス領に戻ることにしたのは、涼しくなってきたこの時期にしか生えない、マヒア茸のためだった。やる気だったフェルティには申し訳なかったが、戻らないとこいつが泣いてうるさいんだよ。


 まぁでもこいつは水属性魔法の天才の兄。ナバーから夜な夜なやり方を聞いて手本を見て、フェルティの仕事ぶりを見ただけで、冷水を出せるようになったからな、こいつ。何の問題もなかった。

 最近来た手紙には、ナバーもレティセンさんも熱いものを冷ますことが出来るようになったらしい。もう、氷はまだ作れてないだけで熱属性魔法使えてるじゃんってなったな。


「ズーーー……。ほんと、たとえ身内でも、この趣味ばっかりは見せるのは恥ずかしいからねぇ」

「なら止めろって。二階の教室からお前を異常者を見る目で見てくる奴いるぞ」

「はぁ、今日で座学って事は、高い入学料を払った方の生徒かな? まぁいずれこの香しさに酔うに違いないよ。あ、火が強い」

「おっと、薪をちょっと回収しないとな」


 ボコボコと釜の中身が沸かないように、竈の中で燃えてる薪を1本2本、火消し壺に一旦避難させた。うん、良い感じに熱量が下がって、またふつふつ程度に釜の温度が保たれた。


「んー、マヒア茸の香りも十分嗅げたし、俺、残りの素材の下拵えしてくるね。次の素材を入れるタイミングまで、火の番よろしく」

「了解」


 満足したらしいホージャスはザルにマヒア茸の一部を置いて、教室の中に戻っていった。残りは治癒と筋力強化と、水中呼吸か。

 水中呼吸はそろそろ作り納めの時期か? これからは寒くなるし、エノールミ湖も凍るしな。


 ホージャスも不憫な奴。チビの頃から湖と魚に興味津々だったナバーの為に水中呼吸のポーションを極めようとしたのに、そのナバーが自力で水中呼吸の魔法を開発したから、大きな意味はなくなっちまって。ポーション職人検定の対策にも必須じゃないし。それでも作り続けるのは、愛故だよなぁ。


 今のところは俺が海で水生の薬草、息継ぎ草を摘んだり、旨い貝を採取したりするのに使ってる。釣れないからな、貝は。


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