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兄ちゃん’sのポーション作りと勧誘(1)

 少し空が高くなってきた、もう秋も深まってきたな。そう思いながら、薬草の森から帰路につく。背にしょった籠には様々なポーションの素材が、ふわっと入っている。


「ふんふふ~ん!」


 俺の後ろを歩くのは相方のホージャス。鼻歌まで歌って、今日はよっぽど良い素材を摘めたみてぇだ。質の良いマヒア茸を摘めてたみたいだしな。


「ウティリザ、見張りだけじゃなくて薬草籠も持ってくれてありがとね」

「何言ってんだよ。今や俺たちの活動資金の大半が、ホージャスのポーションじゃねぇか。もっとデカい面していいんだぜ?」

「そっちこそ何言ってんの! ここまで成長を待ってくれたウティリザのおかげでしょー? 見張っててくれないと集中して採取できないし、お互い様だよ」

「……投資で儲けた気分だぜ」


 モンスターと積極的に戦わなくなったから、装備が消耗しなくなった。贅沢をしていないから金は貯まる。貯めた金でポーション釜を新調したり、俺たちじゃまだ採取しきれない素材を買って、それでよりクオリティの高いポーションを作って儲けている。

 エンジョイ冒険者としてはそこそこ金が稼げてそうだよな、俺たち。


 森から出て、ヒエリバス領のリクイド街、通称ポーション村に戻ってきた。その足で薬師ギルドに依頼分の薬草を納品して、八百屋に寄って、最近ホージャスが世話になっているポーション教室に採取物の大半を持ち込んだ。

 ポーション職人養成教室第8室。高いが月謝を払えば稽古日以外の空いてる時間ならいつでも場所と道具を使っていい、土地の規模に対して緩めな教室だ。

 ただし、馬鹿高い入学料金を支払うか、ポーション検定5級を取得していることが前提条件となる。誰もかれもを受け入れるには教室が足りないんだとさ。20室まであるから、街は頑張ってる方だ。


 しかし、冒険者ならパーティーメンバーを他に3名までなら、月謝を人数分払えば実習室に入ることは出来る。俺もその口で入室している。ホージャスの作業をずっと見てたから、もう劣級ポーションなら作れるような気がしている。


 二階建ての、コの字の校舎。左手にロッカーが並ぶ廊下を抜け、俺たちに割り当てられた西棟の一番奥の実習室へ入る。今日は二階の座学教室しか使う予定が無い日だからか、一階の6つある実習室にはあまり人はいないし、入った教室は無人だった。


「喋ってても大丈夫そうだな」

「あーいるよねー、気が散るから喋るなって言う生徒さん。人がいればうるさいのは当たり前なのにねー」


 高い月謝を払っているだけあってきれいな教室の長机の一つに、背負い籠を置いた。


「こっからホージャスは何する?」

「いつも通り、作るポーションごとに素材を分けて、2・2・1で煮出してくよ」

「作るのは?」

「活力回復、魔力回復、治癒に、筋力強化と水中呼吸の5つ。いつものラインナップだね」

「じゃあ、鍋とエラの干物、持ってくるぞー」

「ありがとー」


 月謝を払って使えるのは教室や道具だけじゃなく、廊下に立ち並ぶロッカーもだ。

 2人分のロッカーから、中にいろいろ道具を詰めた銅製のポーション釜を2つと、魚系モンスターのエラの干物が入った革袋を取り出した。歴代の使用者によって素材の匂いが染みついているから、今更干物の匂い漏れとか気にしなくていいのは気が楽だ。ロッカーの扉を開けるたびに『う゛っ』とはなるが。


 廊下から教室を通過して中庭に出て、一旦ベンチ付きテーブルにポーション釜を置いて、中に詰まった道具を取り出す。木べらとか漏斗とか。あ、革袋……窓から投げ入れるか。


「ホージャスー、干物の革袋投げるぞー」

「えっ、うわっ! ったくー」


 軽いし割れもんじゃないし、冒険者なんだから、受け取れるくらいの反射神経はあるだろ?

 それから、教室にくっついた形の水道からポーション釜に水を大体3分の2程、2L 注いでいく。水を満たせたポーション釜は水道のそばにあるベンチ付きテーブルに一度置いて、もう1つ注げたら竈の準備に入る。


 中央棟の外壁沿いに積まれた薪を両腕いっぱいに抱えて運び出し、中庭の真ん中に6つもある4つ連なった竈のうち2つの竈に、置き場から取ってきた薪をセットする。

 まずはほっそい薪。それに自前の黒い布を一切れ置いて、火打石で着火して、火を育てる。ある程度大きくなったら他の竈に火を移して、少しずつ薪の太さを大きくしながら火を育てていった。


 火がしっかりしたら、水を入れたポーション釜3つを竈の上部にセットした。2Lくらいの水だし、大体15分くらいかかるよな。


「ウティリザー! 魔石も入れといてよー!」

「あぁ、そうだったな」


 危ない、忘れていた。腰から下げている巾着袋から、水色で形の悪い小さな魔石を2つ取り出して、それぞれにポチャンポチャンと入れていった。ポーションをポーションたらしめる大きな要素が、この魔石だ。


 色も形もなんでもいいから魔石を入れてりゃ、素材がちゃんとしてるならとりあえず劣級ポーション、ないしは下級ポーションにはなる。素材からの魔力だけじゃ、ポーションにはならずにタダの出汁になっちまう、らしい。魔石は下味みたいな、味の引き出し役、引き立て役みたいなことだな。


 竈の火加減を見ながら、窓から教室の中の様子を見る。何度もやってるだけあって、手際がいい。草や根菜、きのこにスパイスがすっかり仕分けられ、出番が遠い3組は一旦、布に包まれた。


 最初の2組である活力回復と魔力回復のポーションの素材は、備品の金ザルにキノコ以外それぞれ入れて、水を張ったボウルに浸してジャブジャブ洗う。ポーション職人の中には『土付きの方が良い』とか言って運んで、ここで時間をかけて洗うのもいるって話を聞くが、ホージャスはその日の内に加工するからって採取したその場で自分の魔法で洗っていたから、ここでは軽くすすぐだけで完了している。

 ジャッジャッとザルを振って水切りしたものの1つを、ホージャスが中庭に出てきながら俺に素材を差し出してきた。


「癒し草は茎から葉っぱちぎって! あと根っこも!」

「はいはい」


 人使いが荒いな。もう慣れたけど。


今回は残念ながら、料理・食事シーンはありません。どうして……。

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