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クリームクロケッタと冷製揚げ鶏もも(2)

 キッチンに入ると、既にシオンちゃんとナバーが下ごしらえしてくれた食材たちが中央の作業台に用意されていた。

 凍らせ魔法をかけるタイミングを揃える為に、まずは揚げ鶏ももから取り掛かる。ウチにあったウイスキーと砂糖、塩、コショウ、ショウガ、ニンニク。それらで漬けこんだ鶏もも肉を1個ずつでんぷん粉をまぶしていく。人数分とお持ち帰りと俺たちの明日のお昼ご飯の為に、揚げる量が多いこと多いこと。

 粉をまぶしてちょっと時間をおいて衣と肉が馴染んだら、細長くなるよう形を整えつつ、熱した油に入れていく。


 シュワッ ジュワーーッ! ブクブクブク パチパチパチ カラカラ……


 美味しい色になり、トングで持ち上げるとジリジリと振動が伝わってくる。後、最近ちゃんと気づいたのが、良い揚げ頃になるとキンキンッと高い音がしてくるんだ。それも合図にしながら、俺とレティセンがタネに油を入れ、シオンちゃんとナバーが上がったものを引き上げていく。


 その間、リーリオは揚げ鶏に絡めるタレや、クロケッタにかけるソースを作っていた。

 ボウルに入ったオレンジ色なのはマーマレードと麦芽酢、オリーブ油、塩コショウを混ぜたもの。タレっていうかドレッシングかも。


 小鍋で火にかけられてるのは真っ赤なソース。オリーブ油で炒めたニンニク、玉ねぎに、パプリカパウダーと唐辛子。そこによく潰したトマトを入れて、砂糖と塩を入れて煮詰めている。

 俺が目を向けた時には良い煮詰め加減だったらしく、味を見たリーリオが麦芽酢を入れて、混ぜたらザルで濾した。


「っふー! ブラバスソース、出来上がり! あ、凍らせ魔法使いのだれかー、マーマレードのタレ、冷やしてくれー」

「あー、俺やるー」


 リーリオの呼びかけに手が汚れていないナバーが応え、マーマレードのタレをボウル越しに冷やしていった。

 実は、この時点では冷やさなくてもいいんだけどな。一応、今日も修行の日だから。


 タレづくりを終えたリーリオは、マノルカソースを後回しにしてクロケッタ用のクリームを作り始める。

 用意するのは牛乳・小麦粉・バター・玉ねぎ・巨大ウツボの燻製・塩コショウ。


 フライパンでたっぷりのバターを熱し、泡立ち始めたところでみじん切りの玉ねぎを入れ、炒めていく。しんなりとして甘い香りがしてきたら、巨大ウツボの燻製を大雑把に裂いて入れて軽く炒める。

 火を弱めてからバターと同量の強力粉を加えて、しっかり炒めていく。もう纏まってるように見えても加熱し続けるのは、粉っぽくなるのを防ぐためらしい。

 そこに牛乳を加えて、混ぜていく。数回に分けて混ぜているのはダマにさせないため。一気に入れたら馴染まず、中で回るだけだもんな。そうして、とろんとろんになったら塩コショウを入れて、中弱火で焦げ付かないように気を付けながら数分間混ぜ続けていく。


「そろそろ、このクリームを冷ましてもらうからねー」

「……ナバー」

「ムリムリムリムリ!! やるなら2人でやろうよー!」

「……冗談だ。勿論2人でやろう」

「こ、怖い冗談すぎますって~!」


 いや、レティセン若干本気で言ってる感じだったぞ。逃げんな。

 リーリオがよく練ったクリームをグラタン皿に移して広げたら、粗熱が取れるのを待ってから、自分の分の揚げダネを入れ終えたレティセンと皿洗いしてたナバーが冷ます工程に入る。

 最初はレティセンからやるらしい。だいぶ上がらなくなったもののまだ湯気が立つクリームに手を翳し、深呼吸した。……あ、忠告しないと。


「レティセン。いきなり止まれとか呪文唱えるなよ。熱い水の動きは激しいんだからな。落ち着けくらいにしとけ」

「……助かりました」


 そうだな。多分止まれって言ってたら倒れてたぞ。段階を踏めよ?

 改めて深呼吸をしたレティセンが口を開く。


「……“水よ、大人しくなれ”」


 魔法を受けたクリームはうっすらと光り、すぐに消えた。魔法をかけたレティセンはぐらりと体勢を崩し、テーブルに両手をついてなんとか持ち直した。


「……これは、あれだ。直接冷やそうとしない方が、いい……」

「あー、器ごと、水を張ったボウルに浸して冷やせってこと?」

「……あぁ。短時間で冷やそうとするのは、危険だ」


 一度でそこまで発想が浮かぶか、頭いいなぁ。でも、そうなんだよ。一回やってみないとそういうのって閃きもしないんだよな。


 ナバーがボウルに冷水を出し、クリームが入ったグラタン皿を浸す。温くなるそばからナバーは水の動きを止めるイメージで冷やして、レティセンが風を吹かせて表面の熱を飛ばしていった。レティセン、冷えた風だろうな、それ。じゃないなら団扇使え。


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