表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/66

マノルカソースと巨大魚のビール衣揚げ(4)

 マルバ……兄さんとしっかり仲直りした後は、キッチンに戻って片付けと盛り付けだ。

 巨大ウツボのビール衣揚げに、オーブンで焼いたゲンコツじゃが芋。パセリをもりっと添えて、モルトビネガーをボトルごと用意した。レモンも良いけど酢もいいぞ。


 今できる片づけはないと確認したら、落とさない為に2つずつ、シオンちゃんと手分けして皿を持った。芋があるから、今日はパンは無い。


「さーさー、皆さんお待たせー! ビール衣の揚げウツボと、ゲンコツじゃが芋だぞー」

「お酢をかけてさっぱりするも良し、マノルカソースで旨さを倍増させるも良し! 自分が美味しいように食べてね!」


 キッチンから皿をもって帰ってきた俺たちを、男5人は「待ってました」と歓迎して、空っぽの大皿を端に寄せた。お前ら、アレを食べきったの? メイン食べきれんの?


 全員に同じ皿が行き渡ったが、食べ方は様々だ。

 キチンとカトラリーを使って切って食べてるのは俺とレティセンくらいなもので、シオンちゃんを含んだ5人は豪快に手掴みだ。

 そのままかぶりついてサクッと良い音を鳴らしたり。酢をボトルからピシャッとかけて、持てないから皿に口を近づけたり。スプーンでマノルカソースをかけて、噛り付いて口の端を汚したり。


 一口ごとに味を変える人もいれば、はぐはぐと続けて食べ進める人もいる。俺も同じ味を続ける派で、酢をかけた箇所を中心に切り分けては口に運んで、端がカリッとしたゲンコツじゃが芋を切り分けてもぐっとして、またふわふわの揚げウツボに戻って、衣から染み出すモルトビネガーのコクとさっぱりさに美味しさを見出した。


「うめー!」

「衣が厚いのに空気を多く含んでサックリしてる! こんなの初めてすぎる!」

「ビー()衣って言ってたー、ビー()が大事なんだねー?」

「そうね。ホージャスお兄ちゃんが“酒に合う揚げ物”ってリクエストしてくれたけど、見当つかないから、いっそ衣にしようって思って入れたの!」

「シオンちゃん、天才だろ?」

「間違いない! こ()、ウチでも出せないかなー」

「たっぷりの油でないと潰れそうだが……」

「質がそこそこならオ()ーブ油、用意できるから……でもそえ、美味しいかー? 試作しないとだー」


 まぁ頑張ってくれ、マルバ兄さん。マノルカソース以外にも、お前の店に通う理由を新しく作ってくれ。



 最初はそのデカさに皆も気分が上がってたけど、腹が膨れてきたんだろう。食べるペースはゆっくりになってきた。

 俺はここでマノルカソースを付けて、1口。


 カリサクッ とろり ふわっ


 んー! 酢でさっぱりしてた口に、ニンニクがガツンと効いたマノルカソースが堪んねぇ! このソースならとゲンコツじゃが芋にも付けて食べる。


 ガリッじゅわっ とろっ ほろっもちっ


 あー! 見込んだ通り! オリーブオイルが染みてジューシーになったカリカリでゴリゴリのじゃが芋に、まろやかな口当たりのソースが合う! これだけで1食になれそうなくらい食べ応えがあるぜ。付け合わせのつもりだったのに!


「あ、そうだ。皆、1つ報告がある」


 真剣、って程じゃないが、話を聞いてほしいという声色で、ウティリザ兄さんが俺たちの注目を集めた。報告? なんだ?


「俺たち、また明後日には街から出るわ」

(え?)

「“ヴィシタンテ・エノールミ”も、解体しきったしね」


 え、いや、ちょっと待って? そりゃこの2人がこの街に帰ってきたのはそれが理由だけどさ。終われば自分たちの日常に戻るのは分かるけどさ。


「そっか、寂しくなるわね」

「つっても、年末にはいつも通り帰ってくるよ。3ヶ月後か」

「その頃にはポーションの質を最高ランクに出来るように、向こうで鍛えてくるよ」

「頑張れよ、兄ちゃん」

「無理はしないでなー」

「……検討を祈る」


 おや、レティセンまで。って、そうじゃなくって!


「あ、あー、じゃあ、ホージャス兄さん。明日俺、漁港だけ仕事があるんだけどさ、早起きできるか? 俺、ホージャス兄さんにほとんど何も教えてないからさ」

「あ、本当? じゃあお邪魔しようかな。良いよね、ウティリザ」

「まぁ、準備するもんはしたからな。二日酔い対策で空けるだけで」


 良かった。間に合って良かった。二日酔いの頭で理解できるかどうかは分からないが。いやまぁ、修行時代の俺を見てるし、大丈夫か?


「じゃあ明日、早朝に漁港で。寝坊しないでくれよ? 本当に!」

「了解。早朝ね。薬草摘みで早起きには慣れてるから、大丈夫だよ」


 あぁ、気付けて良かった。氷づくりの師として何もしないなんて、悪評が高まりすぎる。ギリギリ間に合って良かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ