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歓迎会と魚出汁の潰し芋揚げと魚と芋の練り揚げ物(1)

名前が長いっ!!


 良く晴れた、日の出の頃。馬のリンドの背に乗り、騎手のシオンちゃんの腰に手を回して、街の西側にある漁港へと送ってもらう。週に一度になってしまった大切な時間を嚙みしめて、眼前のポニーテールに鼻先を叩かれにいく。くしゃみは気合で我慢した。むずむずする。


 今日は8月10日、日曜日。毎週日曜日は漁港と、水中ダンジョンへ狩りに行く冒険者向けの氷の納品だけで、基本は休日だ。

 専属御者のバラトと話し合った結果、日曜日は以前のようにシオンちゃんとリンドに送ってもらい、帰りはそのまま散歩に行ったり、買い物したりしている。

 ほぼ休みな上に、シオンちゃんとリンドとの一緒の時間を長く取れるから、日曜日は好きだ。診療所に緊急で卸すかもしれない氷を追加で作らないといけないけど。日曜日になると増える顧客の冒険者も漁師と一緒でガサツな人ばかりで、やっぱり疲れるけど。


 そんな、数十分後の疲労をはじき返しそうな朗報が、急に飛び込んできた!


「フェルティ兄ちゃん。俺、兄ちゃんの弟子になるよ!」

「ほ、本当か!?」


 俺がここ最近ずっとスカウトしてる、実家のお隣さんで友達のナバーが、ついに決意してくれた! ずっと前向きに考えるとは言ってくれてたから、待ちわびたぞ!


「ありがとうな! 早速だが明日の夜6時ごろ、ウチの店に来てくれ。場所、分かるだろ?」

「うん。毎週金曜日と第2・4週月曜日が今んとこ、稽古日だったよな。うはー、明日から俺も氷をちゃんと作れちゃうんだなー!」

「期待してるぞ、天才ナバーくん」

「世話になります、フェルティ兄ちゃん! あ、師匠!」

「稽古中以外は、普段通りでいいよ」

「わかった!」


 ニカッと、人懐っこい笑顔で了承の返事をするナバー。変な上下関係は生まれなさそうで、一安心ってとこだな。


「ってことで、明日の揚げ物のリクエスト、していい?」

「え? 明日はお前が弟子になったお祝いで、牛カツにしようとしてたんだが」

「俺もうわさで聞いて楽しみにしてるけどさ。それは氷が作れるようになったご褒美に取っておくよ」

「そうか」


 気を遣わせただろうか。その延長でリクエストもしてくれてんのかな。メニューを迷わないように。


「でさ、リクエストなんだけど。“野菜と魚を使って、魚の食感が無い揚げ物”がいいなー!」

「……“野菜と魚で、魚の食感が無い揚げ物”?」

「うん! じゃ、そろそろ相棒が待ちくたびれそうだから、氷、お願い!」

「ああ」


 それって、つくね揚げじゃダメか? いや、つくねは多分コイツも食べ飽きてるよな。野菜もメインの揚げ物……。うーん、シオンちゃんと相談しよう。


 その後は、いつも通り船用の氷を作ってるところを、穴が開くんじゃないかってくらい熱心に見られた。いいぞ、上達のコツは観察だ。水から氷になるのに、どんな変化が、どんな動きがあるのかをしっかり見ろ。お前の得意分野だろ?



 湖や水中ダンジョンでモンスターを狩る冒険者に向けた氷を作り、診療所に卸すかもしれない氷も作った。はい、今日の仕事は終わり! とっととシオンちゃんとリンドと乗馬散歩に行くぞー!


 氷室から出て、シオンちゃんが用意してくれた白湯を飲んで身体を温めたら、リンドの待つ馬留場に向かう。その道すがら、シオンちゃんにナバーのことを報告した。


「へぇ! やっと決めてくれたのね! 正直、今から鍛えても夏に稼げはしなさそうだけどね」

「言ってやるなよ。秋も冬も氷は使うから、小金は稼げると思うし」


 理想は、ナバーが漁師向けの小さな氷を作って、俺は氷室で巨大氷を作る。って感じだな。役割分担できたら本当に楽になる。ガサツを相手にしなくて済むって意味で。


「それでな、ナバーから明日の揚げ物のリクエストが来てな。“野菜と魚を使って、魚の食感の無い揚げ物”ってさ」

「なにそれ、ムズーい。つくね揚げじゃ芸が無いわよね」

「やっぱりシオンちゃんもそう思うよな」

「新しいメニューを考えるの、楽しいからね」


 そこまで話したところで、馬留場に着いた。リクエストメニューを考えるのも大事だが、デートでリラックスするのも大事だよな! その方がきっと良いアイディアも生まれるさ。


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