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グレーな依頼と野菜のカツ(3).

溶き衣揚げ = フリッターっぽいもの


混ぜ野菜溶き衣揚げ = かき揚げっぽいもの


今のところ主人公が教わっていない調理法と言葉なので、こんな風にメンドクサイ名前で書いています。かき揚げ、教わるかなぁ……。

 扱った品目が多いから、思ったより大量に揚げ上がったな。2個ずつあるのがじゃがいも・ズッキーニ・混ぜ野菜溶き衣揚げ。3個ずつなのがナスとパプリカと豚肉。盛り付けたのがそれくらいってだけで、残りは明日の俺の昼飯だ。

 そして、忘れちゃいけない玉ねぎの花形揚げ。このどっしりとした、堂々とした姿。いつも脇役、引き立て役、辛味や甘み役の玉ねぎが、『今日は俺がキングだ』とでも言いたげな、威風堂々さ。あぁそうさ、豚肉じゃない。今日はお前が主役だ。

 中央を陣取る玉ねぎが目立つ、揚げ物ワンプレート。別皿に盛ったトマトソースとバジルソースもカウンターに置いて、夕食だ。


「命に感謝を」

「関わった力に感謝を」

「「いただきます」」


 手を合わせて挨拶して、ナイフとフォークを手にした。


「いきなり玉ねぎから行ーこお!」

「ソースの他に、そこに塩も載せてるからね」

「じゃあそうしよう」


 飽きないように気を使ってくれるシオンちゃんに感謝して、揚げ玉ねぎにナイフを突き立てた。

 ザクッ! サクサクサク……

 8枚ある花びらの1つを切り分けて、まとめてフォークで刺す。ナイフで寄せつつ塩を付けて、ぱくりっ!


「うん! うまい!」


 衣のおかげで表面がサクサクなのはもちろん、中は繊維感の残るとろとろ加減! 塩で引き立つ甘いエキス! グリルよりはしっかりしているが、数回咀嚼すれば口の中でジュースになる。うっまぁ。


「フェルティくん! ごちゃまぜ揚げも結構いけるよ! これは塩よりはソースが合うと思う」

「そうなの? よし」


 次はおすすめされた混ぜ野菜溶き衣揚げ。こちらは粉の分量が多いからな。バジルソースと合わせてみよう。半分だけ浸して……はぐっ!

 ん? ……バジルとニンニクしか感じない。あ、後からトウモロコシの甘さが来た。豆とニンジンは食感、歯触りくらいか。うーん、上手く衣付きを少なく出来てたら、もっと野菜を感じたかな。


「フェルティくん、トマトソースは美味しかったよ」

「あ、うん。……これは、ソースを美味しく食べる揚げ物って感じだね」

「刺さんなかったかぁ。私はこのふかふか感も好きだよ」

「ふふっ、そういう味わい方もあるか」


 言われてみれば、ふんわりした食感は、ちょっとお菓子みたいかも。


「うん、美味しくなってきた!」

「あははっ、良かった!」

「シオンちゃんは昔から、俺を救ってくれるよね」

「んぅ!? ちょっとぉ、大げさー!」


 本当のことを言っているのに。照れたシオンちゃんがじゃがいものカツをあ~ん♡ってしてくれたから、いっか!


「あ~む♡ ……待ってじゃがいもすんごい旨いんだけど。ほくほくしてる。1回蒸したおかげかな。はい!」

「あらほんと。これはトマトもバジルも塩も合うね!」

(……揚げてなくても合うな、そういや)


 その後も互いに感想を言い合いながら、揚げ物を味わった。

 ズッキーニはサクとろだったし、豚肉は脂のある部位だからめっちゃジューシーだったし、メインの玉ねぎカツはどっちのソースでも美味しかった。何より! 口の中の油を流すレモン水の、なんて爽やかなことか!


「ぷはーっ! 旨い!」

「ふふっ、お酒じゃないんだから。それにしても、この食べ応えで野菜なんだから、逆に痩せちゃいそうね!」

「そ、そうだね」


 それは消化に時間がかかるからってこと? とある研究者が、『油は体を動かす素になる』って言ってたから、この後ちょっと運動しない? 体操しよう?

 あ、この話も詰めなきゃ。


「ねぇシオンちゃん。来週水曜日、父さん母さんが牛肉持ってウチに揚げもん食いに来るって話だけどさ。何振る舞う? 酒も準備した方がいいかな」

「お酒は私もフェルティくんもさっぱり分からないし、お父さんもペアリングなんて気にしない。自分で樽を持ってくるように言っとくわ」

「頼むね」


 「ビールが美味しく飲めれば幸せ」っていう、こだわりは無い人だからな。量は飲むけど。


「揚げダネは、まず牛肉は外せないね。今日の玉ねぎとナスも美味しかったから揚げて、パプリカは、サラダにしようかな」

「肉巻き野菜カツにはしないの?」

「あ、それあったわね! でも鶏肉叩くの疲れちゃうから、今日みたいに半分凍らせた豚肉をスライスしてくれない?」

「任せてくれ。それなら火の通りも良さそうだ。チーズも巻いてみない?」

「わぁ! 素敵! バジルとチーズを肉で挟んで、見た目とんかつのサプライズしちゃお!」

「シオンちゃん、天才かよ」

「私の才能は止まらない……」


 本日2度目の得意気な顔。ありがとうございます。


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