表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/15

15話 燃えるカラス

テロが起こり、空港が襲撃された。


「こちらホーク・アイ。正面部隊、今の状況は?オーバー」


「こっちは膠着状態だ。今のところは何も起きてない。オーバー」


「了解」


 空港から離れたホテル。


 その部屋のベランダから、空港の状況を覗いていた。


 風が強いが、問題はない。


 それよりも、表として来ているので、こういった商業施設を、狙撃ポイントとして使えるのはありがたい。


 狙撃銃は、SPRA4【特殊仕様改良型4番】スヴァローグ。


 俺が表でよく使う銃だ。


 射撃の威力は高く、強い。だが、音も馬鹿みたいにデカイ。金属音というのか、金属弾がハンマーで撃たれた様な音なのだ。


 ガキィン!みたいな感じだ。


 普段の使用している銃とはまた違う。バレても良い。


 あくまで、傭兵側。暗殺で使うわけじゃない。その場には本来いても良い狙撃手だから、バレても良い。


 いつもより楽な仕事だ。


 ―「ごしゅじん、隣の部屋?」―


 ―「あぁ。隣にいるぞ。だが来ちゃ駄目だ。相方として来てる訳だしな」―


 エーフィーには、Guardianのパワードスーツを着せていた。


 かなり目立つ。


 というか、そもそもパワードスーツはかなり目立つ。


 しかも、今回は大人が着るサイズ。つまり、2m弱は越える大きさだ。


 サイズが合わず、動きづらそうにしていたので、動きの少ない役割とした。


 仮に近接戦となれば、そこらの軍人なら俺でも倒せるだろうし、大丈夫な筈だ。……多分。 


 Guardianパワードスーツの見た目は、材質はマット加工の金属プレートで、外見は、騎士のような見た目だ。


 ヘルムはバイザーがついており、更にその下に強化ガラスという徹底ぷりだ。


 防御力に特化している。


 俺の今の狙撃銃でも、遠距離ならば一発では貫通しきれるか分からない。


 今回はその上で、ホテルの壁の塗装、暖色の肌色に合わせたフード付きのクロークと、一応保護色でバレにくくしている。


 マット加工もその為だ。


 俺のボディーガード的な存在であり、加えてスポッターという設定にした。


 まぁ、本来、俺はスポッター使わないんだがな……。


 あと、エーフィーの経歴としては囮として買う以前に、既にGuardianに登録はしておいたので、……多分怪しまれないと思う。


 顔写真はゴツいおっさんだ。声も変声器で誤魔化せる。ヘルメット越しだから、より誤魔化し易い。


 そもそも会話する機会も少ないだろうしな。



 え?何故オーダーメイドのパワードスーツを使わないのか?


 オーダーメイドのパワードスーツを着せてしまうと、話がややこしくなるからだ。


 本来、個人で買えるような代物ではないからな。


 そこは既に、囮を雇うとした段階で、Markに説明しておいたので、Guardianのパワードスーツを借りた。


 Guardianも大きな傭兵企業だ。表だけでも、かなりの資産を持っているからな。


 因みに、壊滅者もパワードスーツを着込んでいる。


 あっちは普通に鎧としてはむき出しだ。


 ま、前線だし、クロークとかは邪魔になるだろうしな。


 俺は、普通のGuardianスナイパーの格好だ。騎士っぽいのは変わらない。上で保護色のクローク。


 パワードスーツの、小さい版みたいに思ってくれて良い。



 そんなこんな考えているうちに、拡声器を持った男が前に出てきた。


 遠いので何を言ってるのかは聞こえない。


 まぁ、宣戦布告の件だろう。


 丁度、壊滅者から通信が入った。

 

 ―「テロリストが政府に宣戦布告。警戒されたし。オーバー」―


 ―「了解」―


 さて、今回、俺達の任務は狙撃。


 では、誰を狙撃するのか。


 簡単だ。テロリスト達だ。


 恐らく、30分後か?それくらいに撃ち合いが始まるだろう。


 その際に、相手の戦力をこそぎ落とすのが、俺達の役割だ。

 


 宣戦布告をした以上、撃ち殺しても構わない。と言われた。


 どうせ、暫くは命令待ちだな。


 そう思い、狙撃銃から手を離した瞬間



 遠くで雷が鳴った。


 雷か。


 ふむ。スコールが来るな。狙撃の邪魔になる。


 ……嫌な風だ。


 そろそろ、爆破屋の仕事が終わる頃だろう。


――――――テロ発生前 裏班 爆破屋――――――――


 今回の私に下された命令。


 それは、裏組織側の輸送車の一斉爆破。


 中々に良い、爆破《画》になりそうです。 


 企業間での癒着による輸送を潰すのは、神威さんがやってくれますし。


 3時間前に場所が知らされましたが……。


 少し遅かったですね。Markにしては珍しい事ですね。……やはり予想していないルートを通る車もありましたし。


 まぁ、そのルートに爆弾を仕掛けておけば良いでしょう。


 今の手元には、遠隔操作型の爆弾がありますし。


 何より、隣国との繋がるルートは大抵塞ぎましたし。


 まぁ、相手も裏側の人間です。正直に正面から来る訳でないでしょうし。

 

 ですが、クイルァは大陸の中心ですし、海に接するルートは無いのが幸いですね。


 逆に時間が掛かるといえばそうなんですが……。



 どうやって設置しているのか、は……企業秘密ですが、特別に教えてあげましょう。


 小さいデランド・ラック……と呼んでいます。


 

 0.1センチの正方形の爆弾さくひんです。置く場所によって、保護色を変えています。


 バレたことはありません。通り際に、スッと置いていきます。


 その際に、同じ形状のカメラも置いていきます。


 これで、爆破のタイミングも分かります。カメラが吹き飛ぶのは御愛嬌です。


 勿論、少しずつ服装は変えています。


 仮に今の顔がバレても、私自身の本性がバレることはありませんし。


 因みに、名前の由来は私の好きな作家、ティム・クラスの、作品名デランド・ラックという、小さい絵が由来です。あれは良いものです。小さいのにも関わらず、多くの意図が込められています。あれは……また何処かのティムの個展で見たいものです。



 さて、あと一箇所ですね。



 

 Markの手配した車に乗り、クラシック音楽を掛けます。


 国境の付近。曇った灰色の空と開けた景色が、クラシック音楽とよく合います。


 思わず、鼻唄が漏れてしまいますね。 

 


 さて、あれから50分後、密輸車の通るルートに着きました。


 

  


 小さい絵を置いて……。これで全てのルートは塞ぎましたね。


 後は車に戻り、街中の駐車場にでも停めておきましょうか。


 バレようが逃げれますし。

 

 爆破のタイミングは、付近に小型カメラを配置しましたので、それで見極めるとしましょうか。


 時間とタイミング、白の軽バン。という情報を元に爆破です。


 正直、民間人を巻き込みかねるのが、非常に残念な事なのですが、必要な犠牲なのです。



 さて、あとは2時間程待つだけですね。


 おっと、丁度テロが始まる頃合いでしょうかね。


 ……じっくりと待つとしましょうか。




 ―コンコン―


 ……おや。車の窓が叩かれましたね。


 坊主頭に、サングラス。首元には入れ墨がちらつきますね。


 知らぬ顔ですか。そこらのチンピラの可能性もありますが……。


「おい、開けろ!」


 ……開ける意義はありませんね。開けずに対応しましょうか


「なんでしょうか」


「だから、開けろってんだよ」


「なぜですか?」


「良いから開けろ!」


 ……この状況、泥啜りさんの言っていた刺客でしょうか。


 しかし、一体いつから付けられていたのでしょうか。

 


 さて、肩の傾き具合としては、手は、おおよそ腰あたりに向いているのでしょうか?


 連想されるパターンは……開けた瞬間に銃を撃ち込まれるか、ナイフを突き刺される。


 窓越しに撃ってこない以上、恐らく刃物。


 ……では、逃げるとしましょうか。


 ギアを変え、アクセル、そしてブレーキ。


「な、おい!」


 車の方向を急に変え、逃げるとしましょう。


「待ちやがれ!」


 ふと見ると、バックミラーには、徐々に小さくなっていく男が見え、そして、見えなくなった。


 逃げれましたか。さて、爆破の設置完了を報告しましょうか。



 爆破屋は、ビルに囲まれた、小さい駐車場に車を停めた。


 ―「こちら爆破屋。設置完了しましたので、現場を離脱しますね」―


 ―「……――――…………―――――……」―(分かった。では、任務の継続を頼む)


 ―「了解しました」―


  


 さて、あとは密輸車を待つだけ。本当は、爆破を見たかったんですがね……。


 その後に、疑問が浮かんだ。何故、あの刺客は爆破の待機場所を知っていたのか。


 いや、知っているも何も、私の作戦は、私の中での構想でしたし。話してもいませんので……。


 作戦自体を知られていれば、何処で見張るかなど、容易といえば容易。


 国境付近の道路を、見張ってしまえば良いわけですからね。そこから、車種が特定されているのでしょうから、片っ端からシラミ潰しする。


 というところでしょうかね?


 流石に監視のカメラまでは、知られていないとは思いますが。


 内通者でしょうか。全くもって、面倒ですね。


 車の椅子を倒し、寄り掛かった。


 その際に、爆破屋は気付いた。


 先程までに、目の前にいなかった存在に。


「……おや」


 顔を覆う程の大きいフード、黒いコートに、黒い手袋。大柄な体型。


 それがボンネットに乗っていた。


「……降りて貰えますか?」


 反応は無かった。


 黒いコートは、片足を、頭よりも上にあげた。それはいわゆる、踵落としの構えであると、爆破屋は気付いた。



 爆破屋は、直ぐ様に横に跳ねた。


 直後、ガラスを破り、運転席に踵落としが炸裂した。


 車のシートは避け、中身のスポンジが舞っていた。


 爆破屋は、瞬時に車外に転げ出て、体勢を立て直した。


「……刺客ですか?」


 黒いコートは、シートに突っ込んだ足を抜き、爆破屋の方を見た。


「……」


「まぁ、答えるつもりはありませんよね」


 突如、黒いコートが2m程跳躍し、両脚を曲げた上で、爆破屋目掛けて飛んでくる。


 刹那、爆破屋は後ろにステップし、それを躱す。


 黒いコートは、両脚を弾くように伸ばし、着地した。


 コンクリートが割れる音が響いた。


「……おや。踏んでしまいましたか?」


 爆破屋が後ろに下がる際に、小さい絵を置いていた。それを、黒いコートが踏んだのだ。


「……!」


 黒いコートが守りの体勢に入る前に、静かに破裂音が響いた。


 黒いコートは炎に包まれ、燃えた。


「……良い画です」


 炎に包まれた黒いコートが藻掻く様を見て、爆破屋は、口角が上がっていた。


 しかし、炎に包まれたそれは、爆破屋目掛けて飛び掛ってきた。


「おや」


 直ぐ様躱す。


 黒いコートは燃えてはいたが、それは燃えるというよりは、火がくっついている、と言った方が正しいだろう。


 しかし、爆発自体の威力は相殺しきれず、黒いコートは一部破けていた。


 破けた部分からは、素肌が見えていた。


「耐火コートですか。対策は万全のようで」


 その肌は、何事も無かったかのように、艶々と光っていた。


 いくら小さい爆破とはいえ、火傷は付く。しかし、それが無い。つまりは、強化筋肉である。


「成る程、貴方でしたか」


「……」


「何故、指と敵対するのですか?」


「……」


「まぁ、答える気はありませんよね」


 黒いコートが地面を蹴り、爆破屋に急接近し、顔面に向かい手を伸ばし、掴もうとした。


 爆破屋は背中を反らし、脚をW字型に外側に広げ、地面に背中を付け、避けた。


 近しいもので言うなれば、イナバウアーである。


 黒コートは、蹴りの勢いが止めれず、爆破屋の上を通り掛けた。


 その瞬間、爆破屋の目の前には無防備な腹が見えた。しかし、それに反撃出来る姿勢では無かった。



 通り抜けた黒コートは、前転によって衝撃を相殺し、直ぐ様、爆破屋に体を向けた。


「……」


 黒コートは、腕を曲げ、前腕部を向けた。ボクシングの構えである。


 その構えを維持したまま、爆破屋に対して走り出す。


 近接戦かつ、真っ向勝負では、確実に勝てると判断したのだ。


 この判断は正解であり、近接格闘ともなれば、爆破屋に勝ち目は無い。


 だが、あくまで勝ち目が無いだけである。


 爆破屋はバックステップを繰り返し、逃げ続け、小さいデランド・ラックを置いていく。


 黒いコートは、それを飛び越えつつ、逃げる。


 時たま追いつかれ、攻撃を仕掛けられる事もあったが、それらを全て避けた。


 いつの間にか、2人は駐車場を1周し、中心に来ていた。


 そこで、黒コートは気付いた。爆弾で囲まれた事に。


 そして、爆弾の位置が見えぬ事に。


 黒コートは、動きを止めた。


「おや、気づかれましたか?」


 360度。全てが爆弾で囲まれている。しかも、それは見えぬ地雷。


 爆破規模からして、1つ爆破したら、駐車場一面が爆破するだろう。

 

「……」


 黒コートは動けなかった。


「……やはり、強化筋肉といえど、爆破にそう耐えれるものでは無いようですね」


「……」




「さて、私も出れないんじゃいないかと言いたげですね。私は、下描き《爆弾の設置場所》は覚えているんです。なんせ、意図して置いている訳ですからね。作品の形を想像は、既に形になっていますので……」


「……」


「おっと、芸術の話になると、つい話過ぎてしまいますね」


 爆破屋は、黒いコートを見つつ、後ろ歩きで出口に向かった。


「……それでは、良い画に」


「……」


 爆破屋が駐車場から出る。


 去ろうとした瞬間。


 駐車場で、轟音と共に爆破が起きた。


「おや。踏んでしまいましたか。残念です」



 直後、爆破屋は、背後からの気配に勘づき、咄嗟に身を躱した。


 直後、爆破屋の脇腹から、鮮血が飛び出た。


「……おや」


 爆破屋の目の前には、ボロボロの黒いコートを羽織った男が居た。


 駐車場からの炎に照らされ、顔が見えた。


 その男は、目が赤く光り、肌は爆破で焼けていた。


 爆破屋は、その男を静かに見つめ、それが誰であるか、分かった。分かってしまった。


「……やはり、あなたでしたか」


 男は、ただ目を見据えて、爆破屋を見ていた。


「1番指、鴉……」


 その言葉と共に、鴉は獲物に襲いかかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
That’s great.
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ