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第一話 いつも通りの任務

暗がりの夜。

 

街は黒く染まり、窓からの光が星の様に輝いている。


その天の川の中に、一つ、小さな光があった。

 

その星は、小さく、遠く、しかし、確実に輝いていた。


ふと、街から離れたスラムに、

「貴方がたは、おかしいと思わないのですか?!おかしいでしょう!生まれながらに運命がほぼ決まっているというのは!」

 と声が響く。

 

それに呼応する様に、声が広がる。そうだ!そうだ!おかしい!理不尽だ!と。


 此処はスラム街の小さな広場である。


 経済格差が広がり、不満を持った人々が集まっていた。


 その中で、リーダーとなった人物が、演説をしているのである。


 ヨハン・ゼーリタオン


 彼はスラムの出身でありながら、ずば抜けた頭脳で、政治の場に立った男だ。


 彼は、苦労を重ねに重ね、政治の場に立った。故に苦労を知り、理不尽を良く知っている。


 彼だから、スラムから政治の場に立てたのだ。


 それ故に、スラムは勿論、中間層の人々からの人気は多かった。

 

 苦労人であり、現実的、多角的な視点を持っているからだ。


 それに政治家たちも、この男の意見には概ね賛成する。それ程の男であった。


 しかし、一部の人間はそうは思わなかった。


 彼等は、妬ましさと、自分達の立場を気にして、スナイパーを雇い、ヨハンの殺しを命じたのだ。


 もっと言えば、スラムなんぞに税金を賭けたく無いのだろうか。 


「やっぱり人間は腐っているな。この仕事やってると、つくづくそう思うぜ」

 

 黒い覆面を被り、狙撃銃を、伏せ構えた一人の男がそう言った。


「……俺等もそう変わらねぇ」


 もう一人の覆面の男が頷く。同じく、狙撃銃を伏せ構えている。


「まぁ、そうだな」


 一人目が賛同する。


「おい、お前等、仕事に集中しろ」


 3人目の男は、望遠鏡で、ヨハンの付近、スラムの建物内部、向こうに見える山を見渡している。


狙撃をしても、反撃が来るか否かを確認している。


 最も、必ず来ると承知の上での確認だ。


 ヨハンも馬鹿では無いのは、大抵の人間が知っている。


 きっと、警戒を怠る男では無いだろう。


 故に、彼等狙撃手は、警戒を怠らない。


 しかし、演説中に殺せ、という命令であるが故に、タイミングを、急かねばならない。


「ハァー……面倒くせぇ命令だよな。クソ依頼者がよ」


 と、1人目が愚痴をこぼす。


「まぁ、報酬は良いんだ。依頼を受けれてラッキーだと思えよ」


 と、2人目と宥める。


「……良し、大丈夫だ。おそらく、スコープの反射も、ビル群にカモフラージュ出来るだろうしな」


 と、3人目が索敵を終える。


 彼等は、スラムから少し離れた、ビル群の中の、屋上からヨハンを狙っていた。


 

 既に彼等のスコープレンズには、演説中のヨハンの姿があった。


「どうだ?そろそろ良いか?」


 1人目が、スポッターに聞く。


「良いんじゃないか?人も随分集まってやがるしな」


 スポッターが答える。


「良し、撃つぞ」


「おう」


 一人目がトリガーに指を掛け、引こうとする。

 


 ―パシュン―

 

「あ」


 1人目の男が、スコープこど撃ち抜かれた。


「チッ」


 もう一人の狙撃手が、舌打ちをした。


「ヨハンを撃つぞ」


 しかし、ヨハンはボディーガードに囲まれ、潰されんとばかりに寄られていた。


「やっぱり、狙撃手を雇ってたな。俺等の事を知らされたろう」


 しかし、2人目がトリガーを引こうとした瞬間。

 


 ―パシュン―

 


「がッ……」

 


 2人目が撃ち抜かれた。



 狙撃銃は下を向き、弾丸の軌道はずれ、一つのビルの窓ガラスを割った。


 

「クソッ」

 


 スポッターがその場を離れようと、下の階に繋がる階段に、蛇行しながら走る。



 ―パン―

 


 スポッターも背後から眉間を撃ち抜かれ、その日、3つの新しい星の光が消えた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――


「……こちらに犠牲者がでなかったのは、運が良かったな」


 彼等を撃ち抜いた男が呟く。


 環境に合わせ、土を被り、葉を被っていた。


 現場からは、2キロ程離れた山の中である。


 


 格好は、黒のフルフェスのヘルメット。


 片手は義手であった。


 そして彼の手には、通信装置が握られていた。

 


「その様ですね。御主人」


その装置から、少女の声がした。


「……エーフィー、依頼主は無事だな?」


「ハイ。しっかり連絡を入れました」


「そうか。良くやった」


「依頼完了と、本部に送っても良いですか?」


「あぁ、俺は先に帰っている」


「え?ちょっと待って下さいっ、一緒に帰りたいです」


「……なら待つ。着けられるなよ」


「まだ居場所もバレてません」


「……なら、バレないように声を抑えろ」


「あっ」


「まぁ、お前は囮だし……別に目立つだけなら良いんだけどな。」


「それもそうですね。すぐに向かいます」


 20分後。


「あれ?何処ですか?御主人」


 足音と共に、エーフィーの声が聞こえてきた。


 警戒はしておこう。


 着けられてるかもしてないしな。


「御主人?」


自身の頭より一回り大きなヘルメットを着け、大きな肩パットを着けている。


 狙撃銃を持つためのパワーアーム。


 身長のかさ増しも出来る、脚部分に着ける、パワードレグを装着した少女。


 自身の主人である泥啜りを探している。


 肩幅だけ見れば、大人と遜色は無い。


 そして、なるべく目立たない様にギリースーツを被っていた。


「……大丈夫そうだな」


ゆっくりと起き上がる。


「ヒッ」


 目の前に急に現れた(様に見えた)泥啜りに、エーフィーは声を上げてしまった。

  

「……着けられてないようだな。偉いぞ。エーフィー」


「ありがとうございます。御主人」


「あと、仕事場では泥啜りって呼べよ」


「……ハイ」


 いつも通りの、何気ない依頼が終わった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

―ピコン―


 ヨハンのサブ携帯に、一通の連絡が来ていた。


 Markというアカウントからである。


 ―依頼は完了。ここの口座に頼みます―


 と、口座の番号が書いてあった。

 

「依頼完了ですか……やはり狙われましたね」


「しかし、ヨハンさんにお怪我が無いようで良かったです」


「次、いつ狙われるか分かりません。また、Markに依頼をしたいですが……」


 Mark。


 それは世界連合が、秘密裏に承諾している狙撃者集団であった。


 表向きは、用人の護衛等の狙撃者集団である。


 勿論、そっちはそっちでguardianという名前がある。


 


 しかし、裏では金さえ払えば何でもする。


 トンデモ狙撃者集団である。


 政治家でも一部の者しか知らないし、制約が中々面倒なので、使う者も少ない。



 制約とは、1日毎に、Markの存在を拡めた者の情報を報告する事。


 拡める者も、交友関係が深い者、又は信頼出来るものに拡めること。


 金は絶対に払うこと。


 絶対に、狙撃者の情報を言わない事。


 他にも多くあるが、大雑把に言えばこれらがメインである。


 仮に破れば、Markの監視対象となる。


 あくまで監視であり、何か妙な行動を起こせば、即処罰対象となる。


 プロの狙撃者集団を敵に回す、というリスクを負いながら、利用しなければならない。


しかし、上手く利用すれば、素晴らしい矛となる。

 


 が、やはりそれなりに金は掛かる。


 それに、彼の貯金の大半は、募金や、スラムの改善費に回しているので、シンプルに使える金が少ないというのもある。


「う〜む、どうしたものか」

 

「Mark、奴らは凄いですね、噂以上です」


 ボディーガードがそう呟く。


「えぇ、相手は3人居たと言います。それを、こちらに一人の犠牲者も出さずにやってのけるんですから、凄いですよ。本当に」


「えぇ」


「こちらも、1年単位での契約でもしたいですねぇ。狙撃手を何人か……」


「我々では守れない部分もありますからね」


「いえ、貴方がたはとても優秀ですよ。私が保証します」


「そう言って貰えると嬉しいです」


 ―ピロン―


「ん?Markからですね」


 ―送金を確認しました。なお、このアカウントでは連絡が出来なくなりますので、ご理解お願いします―


「なんのメールでしたか?」


「送金を確認したという、メールでしたね」


「なるほど」


「さて、もうMarkの話は辞めましょう。マスコミに変な噂を建てられるのは、嫌ですからね」


「金持ちがマスコミに金を払って、仕掛けてくるかもしれませんしね」


「ええ」


「しかし、また依頼したいものですね」


「そうですね」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――


 ―泥啜り―


 Markの一員であり、


 名前の由来は、復数ある。

 

泥を啜るようなポジションでも

 そこを選び

 雨風を受け

 泥を啜るような事になっても耐え

 絶対にターゲットを達成する事から由来するという理由。


 彼は、世界レベルのスナイパーであり、仕事を選ばない。

 

基本的に、報酬が良い方に着く。

 

 それ故に、泥から金を啜るというという意味を含み、泥啜り。

 というものである。

 

しかし、この世界の大抵のスナイパーはそんなものである。


 どちらでも無い。という意見もあるが、それは分からない。


 彼らが名乗り始めたのだから。


 彼は仕事人。


 報酬が良ければ、何でもする。


 それが泥啜り。


 それが彼等。


 Markである。


 そして、スナイパーである。

お試しで1話だけ出してみました。


全て書き終えたら、全部一気に投稿しようかと思います。


転生社会はかなり後になりますね……。


ごめんなさい(_ _;)……。

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