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サンタの僕がもらった初めてのクリスマスプレゼント

作者: パミーン

クリスマスなので一本書いてみました。

こういう世界があったらいいなと思って書きました。

 12月に入り、僕の家は忙しくなってくる。本番であるクリスマスに向けて準備が始まるからだ。


 僕の家は代々サンタクロースをやっている。全国各地にサンタがいて、自分の住む地域の未成年までの子供達にプレゼントを届けるという役目を担っているんだ。


 僕は物心ついたときからサンタの仕事を手伝わされているからサンタに夢を見ている同級生が羨ましかった。僕にもサンタが来てくれてもいいじゃないかと思っていた時期もあったけど、今はこの仕事に誇りをもって励んでいる。


 この地域の子供の数は非常に多いから働き手が必要。そういうわけで小学生からサンタを始めた僕。もう今年で11年目。十分にベテランだ。


 今年のクリスマスで僕の同級生たちはサンタが来るのが最後になる。高校2年生ともなるとプレゼントは結構な値段のするものが多い。最新のスマホだったり、ブランド物の鞄だったり。


 これらのプレゼントにかかるお金は全て各自治体から支給され、11月までに欲しいものを申請することになっている。12月に入るとプレゼントが各地のサンタの元に届けられるんだ。


「今年の山田さんのところのお兄ちゃんはゲームのソフトか~。もう小学生だからそういうものも欲しくなってくるよな~」


「あら、清水さんのところは高級ブランドの化粧品だわ。高校生となるとほんとに高価になってくるわね」


 どんどんと送られてくるプレゼントの届け先を確認しながら仕分け作業に入る。こうやって雑談をしながら自分の担当する場所の荷物を整理していく。


 さっきも言った通り、この地域の子供の数は非常に多い。だからうちの家族が総出なのはもちろんだけど、バイトを雇わないととてもじゃないけど全員分を捌き切れない。


「おい倫太郎、今年の真由香ちゃんのプレゼントはなかなか面白いぞ!」


 僕を呼ぶ徳之進とくのしん兄ちゃん。あ、申し遅れたけど、僕の名は佐々岡倫太郎(ささおかりんたろう)。うちは5男3女の兄弟と両親の10人家族で僕が末っ子になる。3つ上の徳之進兄ちゃんは俺の幼馴染で片想い中の柊真由香ひいらぎまゆかの家を担当している。僕が真由香のことが好きだということを知っているのでこうやって毎年ニヤニヤしながら揶揄ってくる。


「どうせ聞いても毎年教えてくれないんだから揶揄うのはやめてくれよ」


「真由香ちゃんのプレゼントは……。へえ、これは確かに面白いわね」


 2つ上の優美ゆみ姉ちゃんも真由香のプレゼントを確認してニヤニヤしている。僕以外の家族全員が真由香のプレゼントを知っているのに毎年絶対に僕には教えてくれない。それで結局真由香に直接聞いて何をもらったのかを聞くというのが毎年の恒例行事になっている。


 というのもこれにはちゃんと理由があって、僕の同級生が何をもらったのか僕が知っていたら僕の家がサンタをやっていることがバレてしまう可能性があるからなんだ。そういうことで真由香が例外という訳ではなく、僕は同級生全員のプレゼントの中身を教えてもらえない。


 未成年の子供達には誰がサンタをやっているかは隠しておかないといけないというルールがある。成人すれば知られても問題はないけど、絶対に未成年には言ってはならないということになっているんだ。


 家族とバイトの人達で自分の担当地域のプレゼントの仕分けが終わるとトナカイの準備とソリの整備が始まる。


 トナカイは誰にも分からないような山奥にある牧場で飼育していて、普段は空を飛べないように魔法をかけている。12月に入ると魔法を解いて空を飛ぶ練習をさせるんだ。


 トナカイにとっては1年ぶりの空を飛びながらソリを引くということになるから勘が鈍っている。その勘を取り戻すためにトレーニングをするんだけど、これが結構大変。


 学校が終わったらすぐに牧場のある山奥まで行く必要がある。片道で1時間はかかる。牧場についたらトレーニングで3時間程度、帰るまでに1時間で家に帰ってくるのは21時を超えることはざらにある。


 12月はそういう生活になるから友達や真由香からは非常に怪訝な目で見られる。


「倫太郎さ~、毎年そうだけど12月なんでそんなに付き合い悪いの?」


 昼休み、小学校からの腐れ縁の親友である木崎剛きさきつよしが聞いてくる。


「12月は家の仕事が忙しくて手伝いをしないといけないから仕方ないんだよ」


 もう何回もやっているやりとりだから分かってくれているはずなのに毎年必ずと言っていいほど聞いてくる。


「その家の仕事って何なの?いつも聞いても教えてくれないじゃん!」


 僕の席の隣の女子グループの中から真由香が顔を出す。僕と剛の話を聞いていたみたいだ。


「もう毎年同じこと言ってるけど、守秘義務があるから言えないんだって。分かってくれよ」


 こんな感じで話をしていると周りも僕のことを変な感じで見てくる。もう高2ともなれば薄々気づいている人もいるんじゃないかと思うけど、まだ僕がサンタであることを言ってはいけない。


「あのさ、倫太郎は今年のクリスマス何か予定ある?」


 放課後、急いで牧場に行かないといけない僕に付いてくる真由香が聞いてきた。クリスマスのプレゼント届けが終わればお役は御免だけど、徹夜で作業をするからクリスマスの日は爆睡することが我が家の定番となっている。


「毎年クリスマスの日は基本寝てるから今年も寝て終わるんじゃないかな」


「今年のクリスマスはそうはならないから覚悟しといてね!」


 そう言って僕と別れた真由香。どういうことか分からなかったけど、それより牧場へ向かうことに必死だった僕は特に気にすることなく家へ走って帰った。





 そうして迎えたクリスマスイブ。この日の夜から朝方まで、僕達は牧場からトナカイにソリを引かれながら担当地域の子供達にプレゼントを届ける。


 僕の今年の配達量は思ったよりも少なかった。というのも担当地域がかなり狭められたからだ。父さんに理由を聞いても教えてくれなかった。


「よし!じゃあ今年もしっかりプレゼントを届けてくれよ!出発だ!」


 父さんの号令が響くと僕は手綱を引き、トナカイが上空へと滑走し始める。年に1回だけ空を飛べるという特別なことができるのはとても嬉しい。ちょっとした優越感に浸れるのもいい。上空から眺める自分の街は山から見る夜景のようにとても美しい。


 まずはすでに寝ているであろう年齢の低い子からプレゼントを届けることになっている。


ピンポーン!


 年齢の低い子をは自分の部屋を持っていないことが多いので、こうやって玄関からお邪魔してプレゼントを渡すことになっている。


「はーい」


「メリークリスマス!輝君の今年のプレゼントになります」


「毎年ありがとうございます!朝起きた時の輝を見るのが楽しみだわ」


 この家の輝君は今年で3歳。もう物心もついているだろうから明日の朝は大はしゃぎしてるだろうなと思うと頬が緩む。


 こんな感じで年齢の低い子の分が終わると自分の部屋を持っている子の家へと向かう。窓がある部屋には直接窓から入って枕元にそっとプレゼントを置いていく。僕の担当する地域は全員が窓付きの部屋なので助かっている。


 いつもなら朝の4時くらいまでかかる量が今年は少ないので2時頃には僕の分は終了していた。誰かの分を手伝った方がいいかなと思った僕は父さんに電話した。


「もしもし、僕の分が終わったんだけど、どこかヘルプに入った方がいい?」


「いや、お前はもう終了でいい。それよりこれから真由香ちゃんの家にそのまま向かってくれ」


「なんで真由香の家に?しかもこの格好のままだったらまずいんじゃないの?」


「そんなことは気にしなくていいから。あともし仮に起きていたとしても気にせず入っていいからな!」


 変なことを言う父さんを怪しみながらも言われた通りにするかと真由香の家へ向かう。途中徳之進兄ちゃんとすれ違ったけど、なんだかニヤニヤしていた。


 真由香の家に着くと真由香の部屋からは明かりがついていた。中学生や高校生はサンタの顔を見るために起きていて、寝静まった3時から4時くらいにプレゼントを届けることもよくあること。


 時間は2時半だというのにまだ起きているのかと思いながらも窓をコンコンとノックする。窓を開けた真由香が僕の顔を見て驚きの表情をしていた。


「ど、どうして倫太郎がサンタさんの格好なんてしてるの!?しかも空を飛んでる!」


「メリークリスマス!よくは分からないけど、真由香の家にこのままで行くように言われたから来たんだよ」


「じゃあ倫太郎がサンタさんだったの!?それだったらめちゃくちゃ恥ずかしいじゃない!」


「うん、実はサンタをやってるんだよ。未成年だから本当は言っちゃだめなことだから秘密にしといてね」


「うん、分かった」


「それでなんで恥ずかしいの?」


「だ、だって……。私の今年のクリスマスプレゼントは倫太郎だから……」


「え?」


「だから!私の今年欲しいプレゼントは倫太郎なの!」


 顔を真っ赤にしながら上目遣いでこちらを見てくる真由香。真由香の仕草と言葉に僕は雷に打たれたような衝撃を受けた。


 え?本当に?今まで真由香が僕のことを好きだというような素振りなんて一度も見せたことなかったから、僕は脈なしなんだと思っていたのに。


「ずっと好きだった。小さい頃からずっとね。でも勇気が出せなかったからクリスマスプレゼントで倫太郎の彼女になれたらなって思って申請したの」


 家族がみんなニヤニヤしていた理由が分かった。父さんもなかなか憎らしい演出をしてくれる。


「僕もずっと真由香のことが好きだった。でも僕は脈なしだと思ってたから今すごい驚いてる」


「そうだよね。今の関係が壊れるのが怖くてそういうのも見せないようにしてたから……。それでどうなの?私のクリスマスプレゼントはちゃんともらえるの?」


「もちろん!じゃあまだ時間があるし、これから特別にクリスマスデートと行こうか!暖かい格好してきなよ」


 そう言うと真由香は窓を閉め着替えを始めたようだ。再び窓が開くと僕は真由香に手を伸ばす。握った手を引っ張ってソリに乗せた。


「さあ、僕からのクリスマスプレゼントだよ!」


 手綱を引っ張り空高く上昇していくトナカイ。隣に恋人になった真由香を乗せて絶景の夜景を見ながら幸せな時間を過ごしましたとさ。


お読みいただきありがとうございました。

今年のクリスマスは数年ぶりにゆっくりできるので書いてみました。


皆さんのクリスマスがハッピーでありますように。

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