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第82話 説明

「着きましたよ。部屋までご案内します」

 合図のあと馬車の扉が開き、リチャードさんが私が降りるために手を差しだす。

「ありがとうございます」

 その手を取って、私は馬車を降りた。


 広すぎる城内、のここはどこになるのだろう。

 降ろされた場所は、祭事では来たことのない場所だった。

 一瞬不安を覚えたけれど、天秤が傾いた光景を思い出す。


 家か城かを審判した時、城に傾いたじゃない。

 大丈夫、暴漢やあの家族の住む家より、ここのほうがきっと安全なのよ。

 天秤を信じなきゃ。


「この塔をご自由に使っていいと、私の上司が許可を出しました。不自由なく暮らせるよう、準備は整えておりますが、」

 リチャードさんは一度言葉を切り、一呼吸置く。

 これは、これから言うことが重要なときの手法だ。



「ひとりで外には出ませんように」

「え?」


 ふらふらと城の中を勝手に歩き回る気はないけれど、外に出るなとまで?

「私の自由はないということですか?」

 家も窮屈だったけれど、ここに来ても同じ。

 これはどこへ行っても変わらないのか。


「いえ、外出の際は私共が護衛につくことになっております。リーディアさまは補佐の必要のない日は、学園やそれ以外の場所にも出ていいということでございます」

「え? いいの!?」

 ぱぁっと、目の前の憂鬱な闇が晴れた気がした。

「街に行っても? ファサの森にお茶をしにいったりしてもいいの? お母さまの墓にも?」

 嬉しくて、矢継ぎ早に質問してしまったけれど、リチャードさんは真面目な顔で「はい」と短く答えてくれた。


 キリカと約束していた。

 美味しいお菓子を持って、湖の畔にあるファサでお茶をしましょうね、と。

 あれは叶えられなかったけれど、今度は行けるかもしれないの?

 瘤付きだけれど。


 瘤がいてもいいわ、行けるなら。

 ううん、瘤なんかじゃない。

 見張りよ、これは。


 思い当たって、私は気を引き締めた。

 学園の中、授業までもはついてこないだろうから、そこは気を休められそうね。

 悪いことばかりじゃない。

 良い方向に変わっていることもちゃんとある。

「あの、ここはどういう場所なのですか?」

 塔の前には広い庭、というより緑はなく土埃が上がるような広場があり、それを挟んで建物があるけれど窓にちらちら影が動いていて、そこで誰かが作業をしているようだった。


「ここは私たち部隊の練習場と宿舎、そして研究棟です」

 リチャードさんは3つある棟を指して説明してくれた。

 私たちということは、ここにはイリやモアディさまもいるってことよね。

 それなら、少し安心できる。

「ここは軍の領域で、あなたに帯同するのは軍人です。中には、突然の任務に納得いっていない者も担当します。風あたりは多少覚悟していただきたい」

「………はい」


 リチャードさんは、探るような目で私をまっすぐ見ている。

 突然現れた女を警護することになるのは、命令とはいえ理解できないのもわかる。

 リチャードさんはまだいいほうだ。

 納得していないけど、丁重に扱ってくれる。

 マドックさんは………あぁ、護衛が指名制ならいいのに。


「午後からスジェさまとの顔合わせを予定しております。お呼びするまで、充てがわれているあの部屋でだけお休みください」

 リチャードさんの語気には、「部屋から出るなよ」って込められていた。

 わかってます、わかっています。

 私だって、よく知らないところ、それも権力が跋扈しているこの中をひとりで勝手にウロウロする気なんて毛頭ないです。

「わかりました」

 ご安心ください、という気持ちを込めて、にっこり微笑んだ。


「き、厳しい制約はございますが、できる限り協力させていただきますので」

「はい、よろしくお願いしますね」

「ま、まぁ」


 ん?

 リチャードさんらしくない、ちょっと顔を赤らめて私から視線をそらした。

 さっきまで、私がどんな女か観察をするみたいな目をしていたのに。


 そっか、そっか。

 男ばかりの軍で、女の子にきっと慣れていないのね。

 イリみたい。

 私はこのとき、妙に腑に落ちてしまった。

 リチャードさん自身だって気づいていない。

 風当たりが強いのではなく、淑女の扱いがわからないから戸惑ったりするということなのかもと。

 社交界では、あたりまえのことなのだけれど安易に微笑むものではないわね。

 ツンツンしていると思われないように、だけど媚を振りまいているととられないようにも気をつけなきゃ。


「では、私はこれで」

「はい、ありがとうございました」


 くるりと急ぎ気味に踵を返した背中に、一礼する。

 たとえ見られていなくても、深く頭を下げた。

 これはお母さまの教え。

「リーディア、誰かの親切は巡るものなの。あなたが受けた親切にはちゃんと気持ちを込めて礼を言うこと、そしてあなたも誰かに親切にすること。幸せの気持ちを巡らせてね」



 私はこの教えが大好きだ。







1週お休みをいただきました。

いつから週刊連載になったのか、と自分で突っ込みたいですが目標というか締め切りがあったほうが、各リズムに区切りがつきやすいんですよね。

で、ですね。週間は目指したいものの、チャレンジしたい企画がございまして、そちらにも時間を割きたくて目標は週刊!です、気持ちも。だけど、ちとずれることをいまからお知らせしておきます………。

城でのことも、物理的に近くなる距離もいよいよなんだけれど。

どぞどぞ、よろしくお付き合いください。

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