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第80話 登城

 憂鬱な昨日の出来事があったにも関わらず、スッキリ目覚めた朝だった。

 帰ってきてクリアリに報告。

 二度目の呼び出しだったのに、クリアリは嫌な顔一つせず静かに聞いてくれて、そして癒やしをくれた。

 聞いてもらったら少し気持ちが軽くなって、疲れ果てていたのもあって、着替えもせずにベッドに座って、「疲れたわ」と瞬きしたら朝になっていた。


「やだ私ったら、いつの間に」

 いつ横になって、いつ潜り込んだのか、ちゃんと上掛けに包まっていた。

 やっぱり、自分の寝台が一番ね。

 捨てられるかと思ったけれど、いくつかの家具は持ってきてよかったから、部屋を移動しても少しはここが自分の部屋と認識できる。


「いたたた………」

 ずっと同じ姿勢で寝ていたからか、怒涛の緊張からくる疲労か、起き上がろうとしたら身体の筋肉や骨がミシミシ言ってる。


 緊張が続いていたときは、乗馬の疲れはいまほど体に出なかったのに、家に帰ってきたからかしら。



「ひゃっ」

 とりあえず着替えて、顔を洗って、髪を梳いていたときに激しく扉を叩く音が響いて飛び上がってしまった。


 こんな朝からここに誰か来るなんて、なにごと?

 それにあの叩き方、使用人と思えない。


「リーディア! リーディア!! 開けなさいっ」

 ガチャガチャと、鍵を開けたのに、開かない扉にだいぶ苛立っているようだ。

「え? お父さま?」


 予想もしていなかった訪問者に、持っていた櫛を落とした。

「開けなさいっ!」

「い、いま開けますっ」


 家族の急な来訪に備えておいてよかった。

 資材置きにしている扉の鍵を確認し、扉に仕掛けた堅固な閂を外す。

「どうなさったのですか?」

 乱れているかもしれない髪をササッと手ぐしで整えて、出迎える。

 扉の向こうには、怒りを顔に出した父親が立っていた。


 慌てて駆けつけたのか、息は整っていないし着衣も乱れている。


「これはどういうことだっ!」

 怒鳴りに近い大きな声で、私に握りしめた封筒を突き出す。

「文ですか? それになにが…え? 王家の紋章!?」


 開封されて封蝋は崩れてしまっているけれど、国を照らす精悍な王として太陽と鷹の絵の刻印は王家のもの。

 正式な文章に刻まれる紋章は、封筒にもされていた。

 宛名は、お父さまと私の連名できている。

 くしゃっとしてしまった封筒から、中身を出してみて私も驚いた。


「登城」の王命が記されていた。


「え? 今日!?」

 記載されている日時が、私がボケていなければ今日だ。

 そんないきなり!?


 王には、舞踏会で挨拶したことぐらいしか面識がない。

「なぜこんな物が届くのだ」

「さ、さぁ」

 問われても、私は首を傾げるしかできない。

 こんな手紙が届く心当たりがない。


「困りました」

 ぽつりと、本音が漏れた。


 この離れには、隠しているものが大量にある。

 ちょっと家を開けただけで、侵入者が出たのだ。

 ここをいまは離れたくない。


 閂は内側からかかるものだけだから、鍵をお父さまが持っている以上家族の誰かが、ここに侵入もできる。


「お前、なにをしでかした? 俺は関係ない。お前がしでかしたことだからなっ」

 顔を真赤にしてそう怒鳴られても、私はなにもしていない。

 なにかの悪事で捕らえられると、勝手に勘違いしないでほしい。

「落ち着いてください、お父さま」

「落ち着けるか! まさかお前、ダーリアさまと関係していたのか!」

「は?」


 ここでその名前が出てくるとは思わなかった。

 第一王子の失脚は、もう貴族の中では確定のものとして流れているのね。

 知っているより早いのは、幽閉が失敗したから?

 違うわ、私と同じ場所に幽閉されていたはずだから、これは私が知らなかっただけで、あの時にも起きていたことなの?


 時系列の整理が必要ね。


「ダーリアさまとは、挨拶しかしたことがありません」

 悲痛な叫び声は、たくさん聞いたけれどね。


「ならばなぜこんな………」


 背後からした馬の複数の蹄音に、お父さまは言葉を切って後ろを振り返った。

「な、なんだというのだ!」

「お父さま?」


 最初、それが見えなかった。

 蹄音は聞こえていた。

 でもお父さまがはだかっていて、なにごとかは瞬時に把握できなかった。


「リーディア・カイゼンはここにいるか!」


 私の名前を叫んだ声には、聞き覚えがあった。



遅れたというか、お休みを貰ったというか。

いつもの曜日ではない更新です。

とある映画を見てきました。

知っている内容だったのに、映画館は迫力があって面白かった。

ポップコーン欲しかったけど、時間なくて変えなかったのが悔しいな。

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