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第68話 秘策

「はぁ!?」

 変な声を出したのはイリ。

 でも、私は()()()()()()を試したい。

 山の神は信じる人たちなんでしょ?

 だったら、()()()()も可能性がある。



「モアディさま、私が目配せしたらお願いしますね」

「目配せ? なんのことだ?」

 モアディさまに察しを求めるのは、難しいか。

 いまの私は、魔法で見た目だけを変えているだけ。

 だけど、もっと目の前で不思議なことが起きたら騙されてくれるかもしれない。

「キラキラ―ってしてくださいっ。説明してる時間がない。お願い、リチャードさん」

「あなたを浮かすなら、私だってできます」

 モアディさまが、いまにも詠唱を唱えようと手を動あげかけたから慌てて止める。

「結構ですっ」

 私が手で制したら、瞬間ビキッとモアディさまの額に血管が浮く。

 いまモアディさまにお願いしたら、凍りそう。

「もう、言う通りにしてやれよ」

 うんざりとしたイリに言われて、ふんと横を向いてモアディさまが引いてくれた。

 拗ねたの? ちょっと大人げなですよモアディさま!


「……加減してくださいね」

 私の言葉が届いたかどうか不安。

「では私が」

 渋々、嫌そうにリチャードさんは引き受ける。

 あとが怖いんだろうなぁ。

「詠唱は小さな声で。こっそりとお願いします」

 その意図をくみ取ってくれたリチャードさんはこくんとうなずいた。


「…風の精霊に命ず、その力を貸していただきたい―――――」

 私の足元だけに小さな円陣が浮かび上がり、風が巻く。

「浮遊!」

 ふわりと、身体が浮いた。

 髪を乱しながらそのまま浮上して、マザの樹のてっぺんぐらいで停止した。


 できる、私はできる子。


「なぁに、リーディア自信がないの? 大丈夫、リーディアはできる子よ。私がそう生んだの。もっと自分を信じて動きなさい」

 お母さまが私に言い聞かせてくれた言葉を、心の中で繰り返す。



「私の姿が見えるなら、いますぐ家から出てあの山の影に逃げなさい」

 私はいま伝説の少女。

 違うけど、お願い騙されて。


「私の声が聞こえた者よ、いますぐ表に出なさい」

 乱れた髪が邪魔。

 目を開けずらいなぁ。


 そう思っていたら、急に周りの空気が凍り始めた。

 下を見ると、モアディさまがなにかを唱えている。

 キラキラと氷った空気が私の周りを取り囲み、私を光らせる。


 ギィィィ。

 最初に顔を出したのは、老婆だった。

 ギィィィ。

 そして赤子を抱いた母親。

 ふたりとも、とても不安そうな顔をしている。

 そのふたりに、私は微笑んだ。

「あなたたちは私が護ります。さぁ、行きなさい」

「は、はい…」

 老婆は足が不自由そうだったが、さっとマドックさんが動いて介助してくれた。

 意外にいいところあるじゃない。



 ギィィィ。

「わ、わしも」

「お、俺たちも」


 次々と扉が開いて人々が出てくる。

 こういうときって、誰かひとりが出れば私も私もって繋がるものなのよね。

 お茶会のお茶のおかわりと一緒。


「急いで身を隠して」

 たぶん最後の背中に声をかけ、もう降ろしていいとリチャードさんを見る。


「きゃあっ」

 急に術を解くものだから、私は一気に落ちた。


「くっ……っっ」



 モアディさまがの上に。



 咄嗟でも術を使って衝撃を緩めてくれたらしい。

 その腕に抱きとめてくれたのはいいけれど、服の背中が凍って冷たい。

「早くどいてくれ」

「は、はいっ。すみません」

 咄嗟に首にしがみついてしまった手をほどき、私はささっとモアディさまの上から降り立った。

 姿勢が変わったおかげで、パリパリと音を立てて背中の氷が剥がれ落ちる。


「風と氷がここにある……」

 先生がその氷を見て、なにかを考えこんでいる。



「私の氷だけではさすがにあれを防げませんが」

 モアディさまは、あっさりと自分の実力を口にする。

 できる、できないがはっきり自分の中にあるのだろう。

「あぁ、あぁ」

 それを聞いて、先生は再び思案する。

「あの、私たちも逃げたほうがいいのでは?」

 もうあれが崩れて、そしたらすごい熱いものがここに流れ込むのでしょう?

 こんな中央通りにいたら、死んでしまう。

 モアディさまはなんとかするって言ってるけれど、この人数を助けきれるとは限らない。

 

 モアディさまのことだから、優先順位があってきっと私は一番最後。

 嫌だ死にたくない。


 あっさり切り捨てられる自分を想像して、怖くなる。



「単体では無理でも、併せたらなんとかなるかもしれない」

「併せる? 風と氷はそんなに相性よくは…」

「相性はこの際どうでもよい」


 どうでもいいと言われて、モアディさまのまた機嫌を損ねたようだけれど、先生は気づいていないのか気にしていない。

 

「風の魔法陣で上昇気流を作りそこに氷の魔法陣を、その、矢のように打ち込んで別の火口口が作れれば、火砕流をそらせる」

「え? じょうしょう? ん? 矢?」

 先生の口にした言葉が、私にはどんな方法なのかわからなかった。

 そんな私を、先生はすごく冷めた目で見たけれど。

 あぁ、本当に学園に戻れたらもっと科学とか地学にも力を入れないといけないわね。


「なるほど、やってみる価値はあるな。モアディ、いけるか?」

「私は大丈夫です。リチャードはどうだ? まだ魔力は残っているのか?」


 そうだ。

 私たちを運ぶのに、魔力を使わせてしまっている。

 さっきはちゃんと発動させていたけれど、負荷の大きいものは無理かもしれない。


 せっかくの案も、できな……。

「できます!」

 妙にキリリとした目で、リチャードさんは一歩前に出て胸を張った。

「なぜか飛翔にほとんど力を使わなかったようなのです。だからできます」

 力を使わなかった? ふたりも飛ばしたのに? そんなことあるの?

 でも、リチャードさんは無理しているように見えなかった。


「成功させます!」

 やる気をみなぎらせてる。

 あぁ、そうか、私をここに連れてきてしまった判断を、ここで挽回したいのね。

 


「イリ、彼女をみんなと同じところへ避難させてください。もし失敗したら、その時はできるだけ飛ばしますので」

 できるだけ、ね。

 私がその中に入れるのは望み薄だから、お願い成功して!

まだ指が痛いです。

全体重で踏まれたからね。

先生も、「それは不幸ですね」って笑っていた。

笑い事じゃないのにー。

さて、先生、一緒に連れてこられてよかったですね。

役に立ちました。たぶん。

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