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第62話 心外の言葉2

 ジュンリカさまは、側近(ユハスさま)をなんの使いに出したというの!?

「知ってるの? イリッ」

 知りたくてイリに駆け寄ろうとしてしまい、手で制された。


 え? もしかして。

「あの、ひょっとして私と距離をとってる? なんで?」

 まだ手をあげたくなるような話はしていないよね?

 距離が近かったら、思わず手が出ちゃうようなこと。

 

 私は人を怒らせることは、そんなにしてこなかったと思う。

 この先も、そうだと思う。

 だから、そんなに警戒して欲しくないのに。


 そう思われてるのだとしたら、悲しい。



「いや…これはお互いのためだ」

 やっぱり。

「私は信頼しているのに、イリは違うんだ」

「お前なぁ」


 イリが、グシャリと自分の頭を掻きむしった。

「誰であれ男を信用するな」

「は?」

「は? じゃねぇよ。見習の男を部屋に連れ込んだり、今だって単身ここへ来てる。もっと女の自覚を持て」

 女の自覚? なにそれ。

 えっと…いつぞやの夜と同じ理由?

「こんな朝でも? イリに気をつけるの?」

 チッ! と、イリの舌打ちが部屋に響いた。

「朝でも昼でも、だ」


 そんな呆れられても、この会話がしっくりこない。

「私、イリを警戒しなきゃいけないの?」

「当たり前だろう! 俺は男だぞ!」

「知ってるけど、イリはそんなことしないでしょ?」

 カチャリと剣が音をたてたのは、イリがザッと私との間合いを一瞬で詰めたからだった。

「え?」

 グイと腰を抱き、腕を引かれて身体が密着する。

「イリ………?」

 なにが起きようとしているのかわからない私を無視して、顔が近づく。


「男なんだよ、いつでも俺は。こんな風にお前との距離を縮めることは容易い」

 イリの息が、唇に触れる。

 私が身体をよじって動いたら、弾みで触れてしまいそう。

 イリってこんなにまつ毛が長かったのね。

 濃い青の瞳色は、深い湖の底ようで美しいけど怖い印象。

 瞬きも出来ないほど、見つめてしまう。


 どういうつもり? どうすればいいの?



「俺の理性に感謝しろ」

 こんな時どうしたらいいのかしらと、考えようとしたときにぱっと掴まれていた右手を放された。

 腰は支えられたままなので、まだイリは近い。

 そこだけで支えられているから、かえってその腕のたくましさを認識してしまう。

 最近の私は、美味しいものをいっぱい食べているせいでちょっと重たい気がする。

 こんなことになるなら、少し控えればよかった。


 殿方に自分の重みを知られる事態になるとは予想していなかった。

 確かに、イリを信頼しすぎたわね。

 こんな触れられ方をされたら、男だって認識させられる。

 私がわかっていなかった。


 紳士でいてくれたことに、胡坐をかいていた。



「イ、イリはいつも女の人とこういうことしてるの?」

 勝手にイリは女性に慣れていないとか思っていたけれど、私を抱き寄せた素早さは慣れているから?

 そういえば酒場でも、女性の視線を集めていたふたりだった。

 一声かけたら、女は喜んで酒を注ぎそうだもの。

「いつもって…あのなぁ」


 イリは抱いていた腰の腕も、私から離した。

 とたんに自分の体の重みを感じて凹む。

 いつ食べられなくなるかと危機感から食べていたけれど、美味しいものを取ることは、少し控えましょう。


「お前は慣れているのか? 顔色ひとつ変えないな」

「慣れているわけないでしょう、まだ学生の身ですよ。イリこそ、学生に手を出すような男だった?」


 平気な顔を装っているけれど、内心は鼓動が漏れてイリのところまで届いているのではというほど速く打っている。

 ただ動揺というよりは、間近で見たイリが私の知っているイリじゃない気がしたから。

 悔しいけれど、見惚れてしまったのよね。


 悔しいから、顔に出ないように振舞ってるのに「慣れてる」だなんて言われると思わなかった。

 私が最初に言ったから、お返しのつもりでイリは口にしたのかな。


「だから、理性に感謝しろと言っている。だいたい、その気があるならお前と肌を合わせた夜になんかしてる」

 あの凍った夜のことを、イリは口にした。

 だから私は、イリとモアディさまだけはそんなことはしないと、高を括れていたんだ。

 なにはともあれ、私の負け。


「ごめんなさい。気を付ける」

 私がそう口にしたら、イリはにやっと口の端をあげて笑った。

 そう、その顔はいつものイリだ。

 さっきのは私に警告しただけの、偽物のイリ。

「わかればいい。で、なにか心当たりはあるか? 家族の急用以外に」


「ないわ。ユハスさまの仕事のことは、私もよく知らないし」

 まだこの時期は、仕事の話をユハスさまから聞くこともなかった。

 のちのち、ジュンリカさまの側近になっていると知ったけれど、いつからだったのか。

 昨夜のあの感じからすると、()()なんだろうけど。


「俺もさっぱりだ。だが、俺たちにいいことではないだろうな」

「俺たち?」


 イリの言葉がすごく引っかかった。

 イリはジュンリカさま派ではないってことよね?

 でも、ダーリアさま派でもない。

 もしそうだったら、この任務には関われないだろうし。


「いったいどういう意……きゃあっ」

 どんな意味で言ったの? と聞きたかったのに、突然開かれた扉に飛び上がるほどびっくりしてしまった。


「モアディさま!?」

 なんかひと晩会わなかっただけで、やつれたように見えるほどの顔色だった。

 ノックもなしに扉を開けるなんて、モアディさまらしくない行動にも驚く。


「どうした…」

 イリだって、目を丸くしてる。


「ちょうどいい、探す手間が省けた」

 モアディさまは、私を見るとそう言った。

 私に関すること?



「あなたの家の結界に反応がありました。侵入者です」

好きなアーチストのイベントに外れて、しくしく泣いている私です。

テンバイヤーにお金を払いたくないけど、お金ではどうもできない電子チケット。

くじ運がなかったん。

行きたかったよぉ。

萌はお肌の調子を整えてくれるのにね。

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