表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/88

第60話 疲れているのよ

「なにしている?」

「ひっ…」


 低い声に、思わず首がすくんだ。


「イ、イリ?」

 聞き覚えのある声に振り返ると、窓際に腕組みで機嫌の悪そうなイリが立っていた。

 なんでこの男は、明かりもつけずにここにいるのよ! って思ったけど、寝台にイリが持っていた鞄がある。

 ここ、イリの部屋だったのね。


「いい気なもんだな、知り合ったばかりで、もう部屋に連れ込む仲になるのか」

「え? ち、ちがうわよ!」


 とんだ誤解だわ。

「イリの部屋だって知らなかったの、ごめんなさい」


「俺の部屋で悪かったな。空き室を探してるなら手配するか?」

「は?」

 なんでそんな不機嫌な顔で見当違いのことをイリが言うのか、わからないし、リチャードさんは恐怖で縮こまってしまってなにも言い返さないし。

 一緒に否定してほしいのに。


「そんなことより、モアディさまは?」

()()()()()?」


 さっき聞いちゃった会話を本人に伝えたほうがいいと思っているのに、イリは変なところに突っかかってくる。

 ちょっと、あなたもなぜか言ってよとリチャードさんをつついてみたけど、顔を青くしてふるふると首を振るだけ。それも涙目で。

 そんなにイリのことが怖いの?

 たしかに目つき悪いけどっ。


「ユハスさまとジュンリカさまが……」

「ジュンリカ!?」


 私が出した名前に、イリの顔色がまた変わる。

「なんだ? 早く話せっ」

 詰め寄ってきて、私たちとの距離を詰めてきた。

 

「だから言おうとしてるのに、あなたが突っかかるから」

「い、いまはそこよりもっ」


 やっとリチャードさんが口を開いてくれた。顔色は青いままだけど。


「ジュンリカさまは、なにかをモアディさまにするつもりです」

 ことがモアディさま絡みだから、懸命に申し立てたんだろうな。

 その必死さで、さっき否定してほしかった。


「イリ、急いでモアディさまに伝えて、なにか対策を…イリもモアディさまの傍にいてよ」

 緊急性があると判断したのに、イリはなんだと緊張を解いた。

「イリ?」

 詰め寄るぐらいだったのに、なぜ。


「そんなのは、いつも警戒していることだから今更の話だ」

「え?」

 いつも? 今更?

 どういうこと?

 なぜジュンリカさまは、モアディさまを?

 軍には派閥なんてないわよね。

 王の…国の軍なのだから。

 


「いまはまだ言えないが、まぁ、俺もついてるし把握はしてるから」

 なぜそんな、目をふせてそんなことを言うの?

 強気の言葉のようなのに、態度がなにかを残念がってる。


「イリ、大丈夫?」

「なにがだ?」


 自分で気づいていないの?

 ジュンリカさまの名前を聞いてから、なんか感情が上下しているように見えるわ。



「モアディはいま、精神統一に入ってる。誰も近づくな」

「あぁ……」


 リチャードさんは、それでわかったようだ。

「モアディさまは集中力をとりこんでおられるのです。この時に邪魔をしてしまうと、やり直しになってしまう」

「そういうものなの?」

「ええ。今回の結界は、とても強靭なものを幾重にも重ねて張ります。本来なら複数人で行うことを、モアディさまはおひとりで行うのです」


 私に説明をしてくれながら、リチャードさんは胸を張る。

 強い力を持つ師が誇らしいのだろう。

 リチャードさんは、ちゃんとした方向でモアディさまのことを尊敬してるんだわ。


「もし……」

「もし?」

「もし邪魔だと思われたら……」


 誇らしげな顔から一転、暗雲とした顔になったリチャードさんはなにを思い出したのか。


「服が凍る魔法をかけられ、一週間は冷たい瞳を向けられます」



 あぁ……わかります。

 そんな顔になるの。

「で、ではモアディさまへの報告はあとにして、私はとりあえず湯あみをさせていただきますね」

 同情します、あなたには。


「湯あみ? あぁ、この先に湯殿があったか」

「そうですよ、だから誤解だって言ったでしょう? リチャードさんは案内してくれてただけです。お休みのところお邪魔してすみませんでしたねっ」

 謝罪の言葉を並べながら、こちらの話を聞こうとしなかった恨みを込めてしまった。

 なのに、イリは口の端を上げて笑う。


「ふっ…、俺も疲れてるようだ。休息はちゃんととらないとな。湯殿まで送るか?」

「いいわよ」

 イリの申し出を私は断った。

 だって、私でさえ誰かを背負っているように身体が重い。

 イリなんて、もっと疲れているはず。

「人間は休まないと判断は鈍るし、死んでしまうことだってあるんだから。イリもちゃんと休んで」

「ああ、そうするよ」

「そ、そうして……」


 甘やかに微笑むから、声が上ずってしまった。

 イリって、普段険しい顔ばかりしているのに、突然笑ったりするとびっくりするのよ。

 

「おやすみなさい」

「あぁ、おやすみ」



 休むって言ってたけど、主であるモアディさまが働いているのだから、きっとイリは休まないんだろうな。

 どうかこの夜だけでも、静かに流れて身体が休まりますように――――――。

疲れていますか? 疲れています、というか寝不足です。

昨夜近所で火事があって、バタバタしたの。朝の三時にけたたましく鳴り響くサイレンは怖いでしょ!!

というわけで、遅刻ですが何とか水曜に更新しました。

はぁ、暑い。モアディさまに冷気の魔法で部屋を冷やして欲しいわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ