第48話 とある魔法師の独白
「やりすぎだ、モアディ」
夢見の力があるという彼女を、検証のためにスハジャに同行させようとしたけれど、承知してくれないので拘束したら、イリにひどく責められた。
なぜだ?
私たちはスハジャ公国に行かなければならない。
任務はダーリアさまをお連れし、私が結界を張り見張りをつける。
何も難しいことはない任務だが、急に決まったので時間がない。
見張りの人選もしなければいけないのに、イリはそれなら城に呼べばいいと言った。
なぜかユーまで同意のように泣くので、仕方なく通行証を送ったが、いそいそ来るとは。
彼女には何かある。
私がイリに耳打ちしたことから始まったやり取りだが、ここまで深く入り込んでくるとは思わなかった。
ユーが懐いているのも信じがたい。
夜鳴鳥は元来、主人にしか懐かないと言われているのに、だ。
そのことも、私の胸をざわつかせる。
なにかある。
私も知りたいところだが、鳥語は理解できないので向こうでユーが、彼女が、どんな様子なのかも聞くことはできない。
それともう一つ気になるのが、時折結界が震えることだ。
侵入者なら、もっと警戒震波が私に届く。
結界内で、なにかが時折震える。
わずかな空気の変化、なにかが結界に触れる。
初めて彼女を前にしたときに感じた振動。
ピリリと肌がひりついたような感覚。
魔物、天使、悪魔、見た目はまだ女の子の彼女に感じる違和感を、まだ説明できない。
魔法を使えるとは聞いていない。
家系を調べてみても、父親の非道が出て来るばかりだった。
ただ気になるのは、亡くなった母親が一時期城で書庫の整理の手伝いをしたという記録が残っていた。
よくある学園での成績が優秀だったからと言う理由だったらしいから、関係ないとは思うが。
彼女の育ちには同情はするが、イリが深入りするとは思わなかった。
いや、だからか、でしょうか?
この違和感は、能力を授かったものだからか?
本当にその力があるならば、国で保護しなければならないかもしれない。
虚偽だとしたら、捕らえることになるだろう。
懇意にしている人物をスハジャ公国に赴かせないようにするために、虚偽を申しているのならば。
第一王子の失脚は、秘匿だった。
貴族たちの噂を止められないことは想定していたが、まだ公になっていない事実を口にしたのは見過ごせない。
監視を強めたいと思った。
しかし公爵令嬢を確証なく城に幽閉もできない。
ならば、自分のそばに置けばいい。
自分の目で判断できるなら、それがいちばん納得いく。
これは国の未来のためだ。
国の未来を護るのは私の役目でも、イリの役目でもある。
なのに、イリのあの責める口調。
反論したかったが、彼女の体調が急変したので介抱にまわるしかなかった。
凍った彼女の服をはぎ取る時には目をそらしましたし、熱を下げるために体温を低下させての添い寝までしました。
私にできることはしたのに、目を覚ました彼女は信じられないという目で私を見た。
それが胸をざわりとさせた。
軽蔑を孕んでいたからか? 怯えていたからか? 震えていたからか。
理由はわからないが、尽くしたことを感謝されないというのは、あまりないことなのでこちらも戸惑った。
熱にうなされた彼女みずからが、寒くなればイリに、熱くなれば私にすり寄っていたことを言いたかったが、彼女のために飲み込んだというのに。
なぜ少し凍らせただけで私が責められるのか。
まったく腑に落ちなくて、この憤懣はどこに納めればいいというのだ。
週一公開になりそうです……
先に決着付けなきゃいけない話がありまして。
その曜日を、水曜か木曜か金曜か、どれにしようかな。




