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第31話 学園と言う場所は

 ひっ、とその衝撃に息をのんでしまった。

 なぜ? なぜよ!

 私が聞きたい。


「どういうことだ?」


「あの、あの……」


 私の刻戻りは言えない。

 なぜ知っているかの説明?

 これだって勘だ。

 失脚だろうって予測をつけただけで、その時にはもう私は家に引きこもっていたので、正式発表を聞いたわけではない。


 誤魔化せない。

 この二人には、下手な嘘はつけない、つきたくない。

 でも言えない。 



「貴族間の情報網と、学園での騒ぎに予測を立てたまでです」


「あぁ、そうか、あなたは学園にいたのですね」

「なんで学園だと漏れるんだ?」


 ふむと納得したようなモアディさまに対して、わかっていないイリは厳しい顔のままだ。



「学園は主に貴族や商家の子が学ぶ場所です。親から客から、真偽のわからない話が行き交う場所です」

「それがどうした」

「…………」


 モアディさまの視線は冷たく、「馬鹿ですね」と暗に物語る。

 腕を組んで、イライラと指をトントンしている。

 感情のバランスをとっているのかな。



「私たち貴族は噂好きなの。特に女は。親が誰についているかで、自分の人生も決まってしまうものだから、噂には敏感なの」

()、なんだろ」


「学園で、先生たちに緊急招集がかかったわ。そんなこと、めったにないの。国に係ることで()()()あったと推測できてしまう。戦争とか失脚とか、ね」


 イライラしているモアディさまの代わりに、私が説明した。


「噂と言っても、根も葉もないことは少ないの。偽りの流言は罰せられるから、誰かに話すときはある程度の確証があって話す。今回は、第一王子についていた貴族が慌てているから第一王子に何かあったんだと推測されているわけ」



 ひと呼吸おいて尋ねる。


「間違っているかしら」


 イリはちらとモアディさまの方に視線を走らせたけど、すぐ私に向かって手を広げて見せた。

 肯定ということらしい。



「モアディさまが行くということは、モアディさまも第二王子派だったんですね」


「いいえ」


 それは否定された。

 ならなぜ?


「私は軍の人間です。命令が下れば出る。派閥なんて関係ありませんよ」


 それは当たり前か。

 王族ならともかく、魔法師なんて上から命令されたら出るしかないんだ。

 自分の意志ではどうにもできない、嫌な組織だけれど。


 でも、ならなおさら止めたい。

 二人まで巻き込まれてほしくない。




「お願いです。スハジャ公国へは行かないでください」


「もう決まったことを覆せるわけないだろ。カイゼン公爵は第二王子派ではなかったか?」


 イリが何で知っているのか不思議だったけど、いまはそれをあとに回さなきゃいけない。

 説得できなければ、色目を使えとか言われたけど私はイリの好みではないようで。

 だから必死に懇願してみる。


「私の懇意にしているユハスさまも第二王子派です。なので……」

 ここは正直に。

 正式に婚約はしていないけれど、うちとユハスさまが親しいのは周知の事実だから大丈夫よね。



「あのユハスか……」


 なぜだかイリは、面白くない名前が出たというような顔でつぶやいた。

 ユハスさまは優秀で人当たりがいいから、イリのこの表情には納得いかない。


「あのってどういう?」


「いや、知ってる顔ってだけだ。それよりなぜスハジャ行きを阻止する? あの国は我が国とも友好的だし気候もいい。理由は?」


「それは……」


 私はちらっとモアディさまをみた。

 二人がかりを説得できそうにない。


 イリ、モアディさま、どちらにすべきか。

 悩むまでもない。




「二人で話してもいいですか?」




「イリと話したい」


「俺?」


 私の言いだしたことに、二人の眉間のしわが深くなる。

 完全に怪しまれてるわ。


 どうしようかと思ったけど、このタイミングで部屋にノックの音が響いた。


「モアディさま、招集がかかっております」


「いま取り込み中だ」


 せっかくのことなのに、モアディさまは扉の外にそう答えてしまった。


「モアディさまが来ていただかないと、すすめられません」

 扉の向こうも縋る。


 優秀な魔法師ですものね、大事な会議には必要よね。

 たぶん部下なんだろう扉の向こうも、困った声になる。


「あの、行ってください。モアディさまにはまた、ちゃんとお話しします」


「はぁ……私が帰るまで、ここにいるように」 


 ため息をついて、モアディさまはあきらめてくれた。

 ここで私なんかに足止めされたなんてわかったら、モアディさまのお立場だって悪くなりかねない。


「わかりました。ここから動きません」



 ユハスさまを。

 ふたりを―――――――スハジャ公国行きを阻止するまでは。


昨日、8時に更新と書きました。

早速嘘になったわけです。

いやいや。朝ってほら忙しいじゃないですか。

夜のうちに……支度するはずが寝ちゃったんですよ、なぜか。


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