魔界へようこそ
周りは、見えるほどの魔素に包まれているが、人間界と同じような村の風景だった。
「あれ、思っていたのと全然違うな!」
「に~ちゃん、遊んでおくれよ」
「俺は、仕事が忙しいからあっち行ってろよ」
木の影から覗いていると、普通の生活過ぎて笑ってしまうほどだった。
「ハハハ、魔界だから、どんなに恐ろしいとこかと思ったけど、普通だな!」
「本当に魔界なのか?、それより、戻る方法を考えないと···」
「あんた、こんなところで何してるの?」
そこには、小さな女の子が立っていた。
「うわ、びっくりした」
「なんか怪しいわね···私のストーカーかしら···」
「お、俺、この辺り初めてなんだ。よかったら案内してくれよ!」
「まあ、いいわよ···」
よく見ると女の子の耳は尖っていて、しっぽが生えている。
「ヘンゲは、使ったことないが、やってみるか···」
「どうかした?」
「いや、なんでもないよ···」
上手くヘンゲできたようだ。
「私は、ビルマっていうの、あんたは?」
「俺は、ハーベルっていうんだ」
「変な 名前ね···」
「変な名前は失礼だろ···」
「あら、ごめんなさい···」
「あんた、どこから」
「結構、遠くからだよ···」
「やっぱり、怪しい···まあいいわ」
そう言って、俺の手を繋いだ。
「案内って、どこに行きたいの?」
「そう言われると困るけど、何か食べられるところはないかな?」
「じゃあ、私のうちに来るといいわ。うち宿屋なのよ」
「そっか、頼むよ」
楽しそうに手を繋いで歩き始めた。
本当に魔界なのか?
普通すぎて逆に怖いんだが···
「ここよ」
「母さん、お客さん連れてきたよ」
「あら、いらっしゃい。御一人ですか?」
「はい、一泊お願いできますか」
「どうぞどうぞ、お食事の準備ができましたらお呼びしますので、部屋でおくつろぎください」
「ありがとう···」
なんか拍子抜けだ。思っていたのと全く違う。魔素が濃いことを除けば、人間界と何ら変わりないじゃないか?
本当に危険なんだろうか?
ある一部の悪魔が危険なんだろうか?
全くワケが分からない。
「お客さん、食事の準備ができたよ」
「ありがとう」
「ちなみに、何のお料理ですか?」
「ウコ鳥の唐揚げとミルスープだよ」
見た目は旨そうだ。
「最近は、人間があんまり捕れないからね。こんなもんで勘弁しておくれ」
人間?てことは食うのか?
「あ、ありがとう···」
「おかしなお客さんだね···」
「い、いただきます」
ここは、普通に食べておくしかない。
味は悪くない。何の肉か分からないが、人間ではないだろう···。
「おかみさん、おやすみ」
「ゆっくり休みなよ」
部屋に戻ると、ベットに倒れ込んだ。
「くは、やっぱり人間食うのか···悪魔は悪魔か···」
「それ以外は、普通なんだけどな···」
「早くどうにかして逃げ出さないと」
「そういえば、お金ないよな····人間界と同じなわけないだろうし···」
「食い逃げするのか···情けない···」
とりあえず、外へ移動しよう。
「待ちな!食い逃げは許さないよ!」
「あ、違うんです。今手持ちがなくって···」
「なら先にいいな!食ってから逃げたらダメだろうよ」
「全くその通りです。面目ありません」
「でどうするつもりだい!お金代わりになるものでも持ってるのかい?」
「こんなものしか···」
そう言って、いくつかの魔道具を見せた。
「ほほ~何だいこのガラクタは?」
一通り使い方を説明した。
「なるほどね。あんたすごいね。あんたが作ったのかい?」
「はい。今はこんなものしかありませんが、気に入ったものがあったら持っていってください」
「そうかい、じゃあ遠慮なくこれとこれだけ貰っておくよ。あんた、泊まるとこないんだろ?」
「はい」
「じゃあ、このままウチへ泊まっていきな。お代はこれでいいから」
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます」
とは言ったものの人を食う悪魔と一緒に寝るのはなあ···
いっそこのまま皆殺し···いやいや、さすがにそれは酷すぎる。こんないい人···いや悪魔なのに···
そんなことを考えているうちに、結局寝てしまった。
次回 【魔界のお仕事】




