後悔と歓喜
もっと早く師匠のことを探せば良かった。
悔やんでも悔やみきれない。
「ハーベル、何で泣いてるの?」
「いや、目にゴミが入っただけです」
「どんなに遠くても話せるのかな?」
「どうでしょう?測ったことがあるわけではないので」
「では、テルミットには他にも機能があります。なんでしょうか?」
「えーと、えーと、ヒント」
「そうですね。移動に使います」
「分かった、転移できたりして?いくらなんでもそれは無理か?」
「正解です。本当に素晴らしい」
「使い方教えてくれる?」
「では、俺はあの店の二階へ行くので合図したらテルミットを高く掲げてください」
「いいですよ」
「ああ、二階だ。何で?しかも魔力使ってないよね?」
「まったく使ってないわけではありませんが、かなり消費量を押さえています」
「ハーベル、不思議?」
「リーフィア、家に戻りたいですか?」
「何、いきなり」
「リーフィアに会ったとき、とても辛そうに見えました。家にいても楽しそうな顔を見たことがありません。今はこんなに楽しそうなのに···」
「それは、ハーベルといるからだよ」
「よかったら俺と来ませんか?」
「どこへ?」
「どこでも、リーフィアと一緒ならどこでもいいよ」
「私、高い丘の上に立つ大きな木の上に住みたいな」
「いいところを知っています。行きましょう」
「家族には挨拶していきますか?」
「いいえ、私がいなくなっても探すこともしないでしょう。気がかりなのは、末の弟のザックかな。あの子だけは私に優しくしてくれたから···」
「でも、ザックも連れ出したらきっと大事になってしまいますね」
「そうですね。だからこのまま行きます」
「本当にいいのですね?」
「はい、ハーベル」
「では、行きますよ」
そう言って、彼女の手を優しく握った。
「リーフィア、もう目を開けていいですよ」
「ここはどこ?遠くに町が見える。木の匂いがしてすごく懐かしい感じがする」
「リーフィア、お茶でもいかがですか」
そう言って、ティーポットにお湯を注いでカップにお茶を入れた。
「ハーベル、何してるの?お茶?」
「お茶を入れてるのですよ」
「何をしているのか解らないのにとても懐かしい気がするの、お茶もとても美味しい。こんなに幸せに感じたことは今までなかった。ハーベル、ありがとう」
「リーフィア、一緒にここで暮らしませんか?」
「いいの?」
「はい、暮らしに慣れるまでは俺がちゃんと面倒見ます」
「よろしくお願いいたします」
「こちらこそ」
俺は、しばらくここでリーフィアと静かに暮らしていこうと心に誓った。
俺は、ネルと連絡をとりマクリアさんの様子を聞いたが、かなり回復しているようで安心した。
「ハーベル、ちょっといい?」
「リーフィア、今はこちらのリーフィアと静かに暮らしたいんだ。しばらく、ほっといてくれ」
「それは分かるけど、神様の件も忘れないでね···」
「あと、リーフィアが二人だと呼びにくいからお前の方は、リーフと呼ぶがいいか?」
「分かったわ」
俺は、リーフィアを起こしにいくと、ぼーと遠くに見える町を見ていた。
「リーフィア、おはよう」
「おはよう、ハーベル」
「ここから見える景色はきれいだろ?」
「うん、昔から住んでいたような気がするの、不思議な気分」
「そういえば、リーフィアは今いくつなの」
「女性に年を聞くのはマナー違反よ」
「今年19歳になるよ」
「俺も、もうすぐ19歳だよ」
「あら、あら、同い年だったのね」
少し顔を赤らめて言った。
以前の師匠の年齢なら35くらいのはず、記憶と一緒に年齢まで失くしているのか•••
「ハーベルの御両親は?」
「うちの両親は、医術師をしています」
「まあ、すごい。じゃあ、ハーベルも光属性なの?」
「そうですね」
「私は、属性もはっきりしません」
「リーフィアは、無属性なのですよ」
「無属性···役立たずってことですね」
悲しそうにうつむいた。
「いいえ、それは違いますよ。無属性というのは、一つの属性に秀でてないというだけで、逆にいえばすべての属性を使えるということなのです」
「どういうこと?」
「例えば、炎属性の人は、炎魔法については、高位の魔法まで習得できますが、他の属性は生活魔法程度までです」
「でも、リーフィアの場合は、全属性の魔法を上位レベルの魔法まで習得可能なのです。これは、すごいことなのです」
「よく分からないけど、頑張り次第では結構いいところまで行けるってことね?」
「そうですね」
「分かった。ハーベルいろいろ教えてね!」
「任せてください」
「ちなみに、ハーベルはどこまで魔法が使えるの?」
「俺は、全属性の極大魔法まですべてマスターしていますよ」
「へ?すべて?神様なの?」
「まあ、いろいろあってこうなっちゃいました」
「すごいとは思っていたけど、本当に変わった人ね」
嬉しそうに微笑んだ。
「変わった人って···」
「じゃあ、これから師匠と呼ばせていただきます」
「いや、それは勘弁してください」
「じゃあ、魔法を教えてもらうときだけね」
本当に楽しそうだ。
次回 【人間の神様】




