三話
次の駅に着いた頃には太陽が真上にあって、
強い日差しの影響でホームに陽炎が立っていた。
「暑い~」
電車から降りて暑さから逃れるように早足で駅の中へ入る。
「次はこちらですよ」
デコイズCPが駅のベンチで涼んでいる自分を追い越し、
廊下でつながっている建物に歩いて行ったので
ついて行き建物に入る。
そこは外とは違い涼しく少し暗くて静かな所だった、
建物の中央にはゲーミングデスクとゲーミングチェアがあって、
その奥で土台型の機械がSFでよく見る
巨大なホログラフィーを映し出していた。
そして、それらを囲むようにベンチと黒いガンスタンドが置かれていて、
所々中には武器が立てかけられている。
デコイズCPがベンチに座って話し始めた。
「ここは外とは違ってひんやりしていて快適でしょ、
デコイズのお気に入りの場所なんですよ。
ここではダンジョンに使う武器を作って
ショートカットキーに登録しますよ」
デコイズCPがデスクを指さす。
「武器を作る時はあそこのデスクを使って一から作るか、
そのスタンドに立てかけている武器達をそのまま利用したり、
デスクを使いパーツを探して武器を改造したりすることが出来ますよ」
「ここにある武器を使っても良いのですか?」
「良いですよ、武器としても使ってもらった方がうれしいと思いますし、
武器の性能を試したいなら
右奥にそれ用の部屋があるからそこでしてくださいね」
使えるならと、とりあえず近くにある武器を持ってみる。
それは槍の先端にリング状の刃と十字の刃が重なっていて、
かなり独創的だけど
見た目はシンプルで装飾がついていないことから
素材として改造しやすそうだ。
やはりこうゆうのはロマンと言うことで
デスクを使い回転機構を入れてみて、
この位なら部屋使わなくていいなと軽い気持ちで回転させた。
良い具合に回ったがつなぎ目から変な音がすると思った矢先、
スポーーン!
軽快な音とともに刃が回転しながら乱反射して、
ケースの奥へと飛んで行ってしまった。
やってしまったと立ちすくんでいたら
デコイズCPが慌てて走ってきた。
「ちょっ、ちょっとここで試すのは流石に危ないですよ!」
「す‥すみません!」
「危険ですから試すなら向こうの部屋でお願いしますね」
「はい‥わかりました‥」
「あと! 飛んで行ったものは拾ってきてくださいね」
まさかこうなるとは、武器をデスクに置いて
「確かこっち辺りに飛んで行ったよな」
刃を探しに向かう。
どうやら予想よりかなり奥に飛んで行ったらしい、
壁沿いに落ちていたのを見つけた。
「こんな所まで飛んでいたのか、さて‥ん?」
刃を拾おうとした時、ふと近くに置いてある武器が目に入る。
その武器は黒く光沢があり少し汚れていて、
渦潮のような白色の模様が彫られている大剣だった。
刃を拾い剣に近づき見つめる、
シンプルながらに重厚感のあるそれは
私の武器にするにはピッタリだった。
持ち帰るために持とうとしたが、
「ぐぐぐ、思ったよりも重いぞ」
両手で踏ん張って持てる位だったので
引きずって運ぶことにした。
なんとかデスクまで引きずって来たので
さっき使った刃を返却して、大剣を改造することにした。
まずは大剣が重いから一部分を使って、
私に合った武器の重さに加工することにした。
軽量化とデザインを兼ねたのはないかなとデスクを使い探すと、
近未来的な刀の形があったのでその形に加工する。
しかしこの刀は手を守るための引っ掛かりがなくこれでは危ない、
どうしようかなと考えていると
さっき飛び出していったリングの事を思い出しひらめく。
「飛び出す‥そうか! 抜刀した時に展開する感じなら」
さっそくエネルギーを展開できそうな機構をデスクで探してくっつける。
形が選べそうなのでせっかくだから大剣に彫られていた渦の形にして、
ついでに刃にも機構を入れて抜刀時に白く光らせることにした。
抜刀して展開するなら鞘も欲いなと思いついでに作る、
鞘は移動しやすいように背中にかけるタイプにした。
とりあえず完成したのでお試し部屋で練習しに部屋に入ると
鏡があったので、その前で背中に手を回し抜刀する。
黒い刀身に白色に光る刃そして黄緑色の髪をした自分、
「なんか、偶然だけどサイバーパンクに出てきそうな見た目になってしまったな」
と腰に手を当て独り言をつぶやいた。
しばらく振り回した後デスクまで戻り細かい調整をして、
「出来ました!」
椅子から立ち上がりデコイズCPに向かって作った武器を見せた。
「出来ましたね、それでは早速武器をショートカットに登録しましょう。
まずはアプリの中に剣のマークがあると思うのでそれを起動してください」
と言われたので手に画面を出して探すと、
それらしいものがあったのでタップして起動する。
起動すると手のひらからレーザーが出てきて
手の甲の方に武器に手をかざしてくださいと表示されたので、
刀をなでるようにかざすと刀が青く半透明になって消えた。
「‥これで登録できました、登録した武器はダンジョンに挑戦する際に
自動的に出現します」
「ダンジョン以外では出したり出来ないのですか?」
「一応さっきのアプリを使って
ダンジョン以外でも出すことができますが、
安全性のため武器が他の人を
すり抜ける使用になっていますので、ご理解ください。
あとこのデスクはコンパクトシティにもありますので、
細かい調整がしたくなったらデスクをお使いください」
「わかりました」
「さて、ここでするべきことは終わりましたので電車に戻りましょうか」
デコイズCPと一緒に戻り次の駅へと向かった。