↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
友達にゲームを勧められてしまった話  作者: しらすめし(遅筆屋Con-Kon)
56/58

ドッキリなら早く終わって欲しい

 いつもの朝。


 教室はしんと静かで、生徒はまだ誰もいない。


 それもそうだ。


(早く来すぎたか……)


 時刻は7時32分。早すぎだ。


 早朝6時には目が覚めてしまったのだから仕方がない。


 このままただ時間を浪費するのももったいないので、テスト勉強をする事にした。


 教科は数学。


 周りが煩(うるさ)いと集中出来ないので、今のうちに少しでも復習する。


 ………………………。


 ………………。


 ………。


 ―――ざわざわ。


「ん……?」


 ふと顔を上げると、他の生徒が何人か既に来ていた。


(人が来ているのに気づかなかったとか、どんだけマヌケなんだよオレは……)


「やっと集中が切れたな、お前……」

「お? ……おぉう」


 後ろからヒロアキが声をかけてきた。


「集中モードに入ると何も気づかなくなる癖、早く何とかした方が良いぜ。社会人になって、仕事先で上司の声が耳に入らない…なんて、シャレにならねぇぞ」

「そうだな……、だから職場に喩えるのを止めてくれ。お前のそういう話はリアリティがあり過ぎて、何か怖い」


 ヒロアキの父親は玩具メーカーの社長だ。


 その縁で、コイツは時折その会社に顔を出しているらしく、社会人が経験するであろう色々な話を聞いてはオレに話してくる。


 そのせいで、オレはまだ学生でありながら、社会人の世知辛い裏話を色々と知ってしまった。


 おかげで、将来の就職先にあまり希望を見れなくなってしまったのだ。


 現実を教えてくれた感謝はあるが、同時に少しばかりの恨みもある。


 いずれまとめて返してやるとしよう。


「んで、勉強はどうよ。捗ってるか?」

「ん、まぁぼちぼちだな」

「そうかいそうかい」


 ヒロアキは英単語帳を見ながら、つまらなそうに返事を返してきた。


 聞いてきたのはそっちだろうに……。


「……お前、少し変わったな」

「ん? 何だよ、藪から棒に」

「ちょっと前まで、そんな英単語帳を持ち歩くような奴じゃ無かっただろ」

「あ? ケンカ売ってんのか?」


 どうしてそうなる……。


「テストが近いだろうが。これで良い点取れないと、いつゲームが出来るか分かったもんじゃねぇ。ここだけは絶対に落とせねぇんだよ!」

「お、おぅ……」


 目を血走らせながら必死に力説されると、オレとしてはもう何も言えない。


 これ以上は触れない事にした。


「……はぁ。相変わらず元気よね、アンタたち」

「げっ」


 高山さんが話しかけてきた。その後ろには、姫川さんがやや隠れるようにぴったりとくっついていた。


 ……姫川さんの方が背が高いから、あまり隠れられていないのだが。


「何よ、その反応?」

「いや……。……珍しいよな、そっちから話しかけて来るなんて」

「そう? こないだも話しかけてあげたでしょ?」


 こないだとは、バレンタインデーの事だ。


 あれは、今年一番の珍事件だったな。


「えーっと、何用かな?」


 とりあえず、用件を聞いてみる。


 ヒロアキはやや萎縮していて、借りた猫状態になっているので今は無視だ。


「テストっていう単語が聞こえたから、ちょっとね。そこで提案があるんだけど……」

「提案?」

「そ」


 何やら嫌な予感がするのだけど……。


「あたしたちと一緒に勉強しない?」

「えっ」


 まさかの勉強会のお誘いだった。


「な、何故……」

「だって進道君、去年の試験順位高かったじゃない。だから勉強教えて欲しいの。……この子にね」

「ふぇっ?」


 いきなり振られ、前に引きずり出されて慌てる姫川さん。


 可哀想に……。


「な、ななな何で……?!」

「進道君の2学期の期末試験はまさかの5位。あたしは6位でミズキは52位。ほらね、あたしたちが進道君に勉強を教わろうとするのは普通でしょ?」

「そ、それは……」


 まぁ、言いたい事は分かるけども。


「それなら、試験1位の水橋さんと2位の日野君に聞けば良いんじゃないの?」


 学年のツートップが同じクラスにいるんだから、そっちに聞けば良い。


 そう思っての提案だったのだが……。


「……あれを見て」

「?」


 高山さんの指差す方を見てみると。


 窓際の席にいる水橋さんは、既に数人の女子たちに囲まれていた。


 後方の席に座っている日野君も、これまた同様に男女関係なく囲まれていた。


 人気だなー、2人とも……。


「あの中に、後から割り込めると思う? この子が」

「…………無理、かな」


 隣では姫川さんが必死に頭をぶんぶんと振っていた。相当に嫌らしい。


 人見知りみたいだし、あの人混みの中に入ったら、気絶するんじゃなかろうか……。


「という訳で、頼めないかしら?」

「……分かった。けど、条件がある」

「条件?」

「勉強会には、コイツも参加する」

「うぇ?!」


 ずっと蚊帳の外だったところにいきなり指名されたヒロアキが、横ですっとんきょうな声を上げた。


「コイツ、次のテストで良い点を取らないといけないんだ」

「ふーん。別に良いけど」


 良かった……。


「それじゃ、左川君にはあたしが教えてあげるわ。だから進道君は、ミズキをよろしくね」

「?!!?!」

「ああ……。って、え?」

「あたしと進道君は順位そんなに変わんないでしょ? なら、こうして振り分けた方が良いじゃない」

「いや、その……」


 だったら高山さんが姫川さんに教えればいいんじゃ……。


「何考えてるのか丸わかりだけど、今はそういうのは言いっこなし。……いつか教えてあげるわよ」


 と、最後は小声でこっそりと言ってきた。


 どうやら、それなりの事情というものがあるらしい。


 なので。


「分かった」


 オレは深く考えるのを止めた。


「それじゃ、食後の昼休みと放課後にしましょう。じゃ、また後でね」

「了解」


 話がまとまり、二人はそれぞれ自分の席へと向かっていった。


「……という訳だから、よろしくな」

「……あ、あぁ……」


 こうして。


 今日限りの、男女4人での勉強会が決定した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。