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友達にゲームを勧められてしまった話  作者: しらすめし(遅筆屋Con-Kon)
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ドラゴン退治、そして…

 天空竜の塔最上階にて、ボスであるドラゴン・スカイワイヴァーンとの戦いは熾烈を極めた。


「はあっ!」

「グルルロロオオオオッ!」


 オレが囮となってドラゴンを引き付け、ドラゴンの射程外からスミレちゃんが矢で遠距離攻撃を叩き込む。


 物理攻撃は効かないのだが、ドラゴンの火炎攻撃は魔法扱いなので受ける度に体力(HP)をごっそり持っていかれるのだが、サクラちゃんが本領発揮とばかりに回復してくれるので今のところは耐えきれている。


 が、いつまでもこうしている訳にはいかない。


 後方支援の2人のMPには限りがある。このままではジリ貧だ。


 そこで、オレは賭けに出る事にした。


 ドラゴンの周囲を走りながら動きを観察し、左前脚の踏みつけ攻撃をかわしたところで左手の大バサミを構えた。


 狙うは、ドラゴンの頭上の角だ!


「飛べ、バンカー!」


 発射された大バサミは、そのまままっすぐドラゴンの角に飛んでいき、狙い通りに食らいついた。


 最初の物理ダメージこそ通らなかったものの、その後は割合持続ダメージがどんどんと入っていった。


 どうやら、賭けには成功したようだ。


「うおおおおおおおっ!」


 やがて、ドラゴンの角はバキリと折れた。


 同時にドラゴンのHPがごっそりと削れ、"weak point"という表示が視界に現れた。


「まさか……、ウィークポイント(弱点)?!」

「よっしゃあっ! スミレちゃん! あそこを狙って集中攻撃して!」

「わ、分かりましたっ!」


 弱点が現れた事で、こちらの攻撃に勢いがついた。


 このまま削り切りたいところだが、事はそう簡単ではない。


 まだ、ドラゴンのHPは7割ほど残っているのだ。


 という事は、まだ破壊可能な部位が残っている可能性がある。


 ドラゴンで破壊可能って言ったら、背中の羽かしっぽしか思いつかない。


「また、賭けに出るしか無いか……!」

「…えっ?」

「おりゃあっ!」


 ドラゴンの顔を一発殴りつけ、瞬時に背後に移動。


 そして、しっぽの付け根辺りを狙って大バサミを突き付けた。


「うおおおおっ!」

「ギャアアアアッ!」


 角を折られた事で察したのか、ドラゴンはいきなり暴れだした。こいつのAI、学習機能があるんじゃ無いだろうな……?!


 しっぽを何度も大きく振り、地面を叩きつけ、必死にオレを引き剥がそうともがいている。


 が、オレがいるところはしっぽの付け根。つまり、ドラゴンの背中だ。


 こいつがどれだけしっぽを振ろうとも、それはオレは当たらない。


 無駄なあがきというものだ。


「はあっ!」

「ギャオオオオンッ!」


 とうとうしっぽの切断に成功し、ドラゴンのHPがさらに削れ、角同様にウィークポイントの表示が出現した。


 これで弱点部位が2つに増えた。しかもこちらは低い位置にある為、オレ攻撃がやりやすくなった。


「チェェェンジッ! ロックヴェノムアァームズッ!」


 両腕ガントレットを【ロックヴェノムアームズ】変化させ、その右腕をちぎれたしっぽの付け根にぐちゃりとねじ込んだ。


「【ヴェノム・ショット】! ダダダダダァァァァッ!」

「ギャオオオオンッ!」


 毒の弾丸を、ひたすらドラゴンの体内に撃ち込んだ。


「…! ちっ、次ッ!」


 弾切れになったところで左手に替え、そしてまた百発撃ち込む。


「ダダダダダダダダダッ!」

「グロロロッ、グギャオオオオンッ!」


 ドラゴンの口から汚い咆哮が上がる。


 さっと後方に飛び退き、改めてドラゴンのステータスを確認してみた。



【スカイワイヴァーン】

 Lv:52

 HP:42534/242000


 状態:猛毒



「24万?!」


 ようやく表示されたドラゴンの総HPは、圧巻の24万オーバー。


 過去に戦ったボスと比べても雲泥の差、格が違う。


 しかし、その膨大なHPも6分の1、残り5万台にまで減ってきた。


 …いや、それでもそこらのボス並に残ってるんだけど、ここまで来たらもう関係ない。


 ドラゴンは猛毒状態により継続してスリップダメージが入っている。


 後は弱点部位目掛けて畳みかければ倒せるだろう。


「もう少しだ、頑張ろう!」

「「はいっ!」」






 そして。


 ボス戦開始から、実に3時間オーバー。


「ギャアアアアァァァァ……!」


 24万越えの圧倒的HPが底を尽き、スカイワイヴァーンは消滅した。


 そして、撃破した証である恒例の宝箱が目の前に出現した。


「や、やっと倒した……」


 すっかり疲労困憊となったオレは、耐えきれずその場にへたりこんでしまった。


 ボス戦でこんなに長時間戦ったのは、これが初めての経験だった。


 精神的疲労がもの凄いが、反面、達成した事による充足感も半端じゃない。


 まるで、ひとつの名作映画を観終わった時のような、穏やかな気分だ……。


「やりましたねっ、フリントさんっ!」

「うおっ!」


 感慨に耽っているところで、後ろからサクラちゃんが思いっきり抱きついてきた。


「いやぁ、まさかちゃんと回復職(ヒーラー)として活躍出来るなんて思いませんでしたよー! ありがとうございますっ!」

「そ、そう……?」


 ちゃんと、って……。


 まぁ確かに、サクラちゃんの回復魔法は8000以上もHPが回復してたし、普通のアタッカーにはオーバーヒールだよなぁ……。


「わ、わたしも、ありがとうございました……! まさか、わたしの切り札も使わずに倒せたなんて、今でも信じられません……!」

「あのドラゴン、HP24万超えてたしねぇ……」

「「24万?!」」

「? …あぁそっか」


 この2人、確かスミレちゃんの切り札でワンパンしたって言ってたな。


 そのせいで、あのドラゴンのHP総量を知らなかったのだろう。


 そりゃあれだけのドラゴンを一撃で倒しちゃったら、HP確認する暇も無かったよなぁ……。


 …24万オーバーのドラゴンをワンパンするって、スミレちゃんの切り札ってどんだけ……。


 謎だ……。


「さて、と。宝箱でも開けるか……」

「「わくわく……っ!」」


 お待ちかねの、宝箱開封タイムだ。


 ガチャリとフタを開けると、そこには……。


「……ん?」

「え……?」

「ふぇ……?」



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