2月です
『ゲーム内の"メインパート"と現実の"日常パート"を同時に進行させてますけど、大丈夫なのかなコレ・・・?』
と、不安に駆られながら書いてます。
人生初参加のゲーム大会を、上々の結果で無事に終える事が出来た。
オレはその後も相も変わらずユートピアをプレイし続け、とうとう100時間を突破した頃……。
気がつけば、2月になっていた。
今月末には期末試験、来月には終業式と、学校も慌ただしくなってくる時期であり、先生たちも何処と無く余裕が無さそうな雰囲気を醸し出していた。
そんな中。
「あぁ〜、早くバレンタインにならねぇかな〜!」
友人のヒロアキが、屋上で弁当を食べながらそんな気が早過ぎる発言をしていた。
「バレンタインって、まだ2週間近く先だぞ……?」
「甘い、甘いぞ! 2週間なんてあっという間にやって来ちまうぞ! そんなのんびりとしていられるか!」
言っても、今まで1個も貰った事無いだろお前……。
「期待するだけ、受ける傷は深いぞ」
「んなもん知った事か! 俺は信じてる……。何かの手違いでも良い、女子の誰かから貰えるミラクル起きてくれベイベー!」
こいつはもうダメだ。
とうとうイカれちまった。
「ご馳走様」
オレは壊れてしまった友人を放っておいて、完食した弁当箱をいそいそと片付け撤収した。
◆◆◆
「ふぅん……。バレンタイン、か……」
放課後。
飲み物を買う為にふらりとコンビニに立ち寄ると、入口付近にバレンタイン用のチョコレート棚が設置されていた。
クリスマスとか正月もそうだったが、店は季節もののイベントには敏感だよな……。
オレ自身、チョコ自体は貰った事はある。
ただそれは母親からのものだったり、妹のカガリからだったり、要は家族チョコというやつだけだ。
時たまクラスメイトの男子全員に手作りチョコを配っている女子を見かける事もあったが、それは決まって先生に没収されてしまっていた。
それもそのはず、小・中学校ではお菓子の持ち込みは禁止されているのだ。没収されるのは当然と言えた。
高校に入ってからは初めて迎える事もあり、オレ自身全く期待してない訳じゃない。
だが、これまでの経験上からオレは、ある種の確信めいた何かを感じ取っている。
バレンタインでは、オレは勝者にはなれない、と……。
クラスメイトで接点があるのは、姫川さんと高山さんの2人のみ。しかも片方からは睨まれてすらいる。
あの2人から貰えるような未来は、とてもじゃないが想像出来ない。
『想像力が、足りないよ?』
(うるさいな!)
何処かで聞いた事があるようなセリフが脳内に響き、オレは思わず心の中でツッコミを入れてしまった。
ダメだ、こんな状態じゃあ非常に不味い気がする。
「さっさと帰って宿題しよ……」
オレはドリンクコーナーから〈いちご100パーセントミルク〉のボトルを取り、会計を済ませて店を出た。
◇◇◇
「あれ?」
店を出ていくアカリの姿を、姫川瑞騎と高山柚梨の2人が捉えた。
「あれって、進道君じゃない?」
「本当だ……」
「でも、なんか落ち込んでたわね……。ねえ、ちょっと話しかけてきなさいよ」
「え、えぇっ……!」
「これもコミュニケーションの練習だと思って、ね?」
「い、いや……。遠慮しとく……」
「はぁ……。ま、仕方ないか……」
「ごめん……」
しゅんと落ち込み、謝るミズキ。
ユズリはそれを見て、ため息ひとつこぼしてからミズキの背中をパシンと叩いた。
「痛っ……!」
「アンタの性格は理解してるつもりだし、これくらいじゃ怒らないわよ。友達でしょ?」
「…あ、ありがと……」
「さ、早く買い物済ませましょ。今日もミズキの家でゲームするんだから、糖分は多めに用意しとかないとね!」
「そ、そうだね……」
2人は仲良く入店し、目当てのお菓子類をカゴに詰め込んでいった。
そうして会計に向かう途中、ユズリはバレンタインイベントのチョコレート棚に目をやった。
「そういや、バレンタインがあったわね……」
「うん。2週間後だね……。早いなぁ……」
「そう、ね……」
ユズリはバレンタインイベントのチョコを眺め、ニヤリと悪い笑みを浮かべたが、ミズキはその事に全く気が付かなかった。




